第745話 思った以上に予報が早かった
慰安旅行から戻って、わずか数日のことだった。
エディの言っていた積雪の予報が思っていた以上にはやくやってきたため、『スバル』にも炊き出し要請が生産ギルドから正式に依頼をされたのだ。
「陛下から聞いてはいる。ほかにも炊き出し要請は出しているが、ケントんとこが一番人気なのは予想がつく。……美味いもんは嬉しいが、やり過ぎはよしてくれ」
「どっちを頑張ればいいんですか?」
「……作る方を」
「わかりました」
ロイズさんとしては、ギルマスとして色々複雑な思いでいっぱいだろうけど……僕の料理スキルはパンの製造以外割と普通なんだけどな? その普通が、お師匠さんから見ても普通じゃないのは炊き出しの一覧を見て言われてしまった。
「クラムチャウダーに、クリームシチュー。けんちん汁ぽいスープにカレースープ……私の空腹メーターを壊す気か!?」
「お師匠さん。……まずどれを食べたいんですか?」
「カレースープだ!!」
事前準備はしていたにしても、追加で融雪剤のポーションを大量注文されたらしく。お師匠さんの語彙力がめちゃめちゃになっている。仕方ないので、味見も兼ねて渡してあげれば……ふにゃんと、体が蕩けそうだったのでラティストが慌てて支えてあげてくれた。ジェイドは影に居たから間に合わなかったみたい。
「あ~あ。ときどき、ケントのポーションパン食べさせていたけど。こういうスープは僕作れないからね? レイアのご飯も美味しいけど」
「僕とレイアさんのご飯比較しちゃダメ。けど、カレー粉のブレンドはお師匠さんでも出来るはずなのに?」
「鑑定スキルあるしね? けど、臭いで調合率が狂うから、カレーライスは作りにくいみたい」
「あ、なるほど」
僕とは違う、本物の錬金術師さんだし。薬品の香りには充分注意しなきゃだからね? とりあえず、椅子に座らせてからゆっくりと食べてもらいました。なんか、もちもちキャラのマスコット風に見えて可愛い……。
「店長。炊き出し会場の準備が出来たのだが」
「わかったよ。鍋は順番に持って行って構わないから」
「僕も手伝おうか?」
「いいの?」
「ヴィンクスの保護はこの店に居れば問題ないし」
キリアさんがひとつ鍋を持つのに対して、ジェイドは魔法を使って残り全部を浮遊させながら運んでいく。ラティストがジェイドの兄であることをキリアさんは知らないので、彼はジェイドしか大精霊であることを知らない。
(と思っているけど、ただ単に内緒にしてくれているかもしれない)
サーラさんはぽやっとしてるとこもあるけど、キリアさんは用心深いところがあるからね? 特に聞かれないから答えてないし、その時が来たら守秘義務も兼ねて伝えようとは思っている。僕とかお師匠さんが異世界転生者だというのはトップシークレットだからだめだけど。
「ケント! 今日は頼んだぜ!!」
少しぶりに合う冒険者のギルアさんだったが、ここ一年でゆっくりポーションパンで治療したお陰もあるんだけど。身嗜みを気を付けてきたお陰か、顔の傷が減って、少し欠損箇所もあったのが治ったら……まあ、レイザーさんほどじゃないがなかなかの強面渋イケメンに仕上がってしまった。
そのイケメン度……ちょっとでも分けて欲しいよ!! 僕だって、エリーに必要以上にかっこいいって思われたいもん!! この顔、童顔だから!!
次回は月曜日〜




