第178話 マブダチのご褒美
お待たせ致しましたー
ようやっと食える!!
ケントのポーションパンが!!
「あんがとよ! 爺!!」
「いえいえ、私めも選ぶのが楽しゅうございました」
俺自身……国王として身動きがあまり出来ない今。
リオーネにいるケントのパン屋になかなか行けないんで……爺として長年親父や俺に仕えてくれていた、ギルハーツが提案してくれたお陰で、今俺の目の前には……ケントのパンが山ほどあるんだ!!
また少し会っていないだけで、新作がどんどんあるのもびっくりしたが……俺が気に入っている『カレーパン』もあったぜ!!
ただ、一個しかねぇんで爺と半分に分けることにしたが。
「爺もこれ食ってみな? めちゃくちゃ美味いぜ?」
「私めも……よろしいのでしょうか?」
「爺はいなきゃ、これなかったんだしよ」
ケントだったら、きっとこう言うだろうな?
『一緒に食べるとすっごく美味しいんだよ!』とか。
酒場に行った時も……似たようなこと言っていたしな?
変装してる俺には全然気付かないのに……人一倍気遣える人間だ。貴族でも平民でも関係ない……ああ言う人間は貴重だ。
処罰した阿呆の貴族連中にも、垢を煎じて飲ませてやりたいぜ?
「……では」
切り分けたところから、爺が口をつけると……すぐに口髭に中身がついたが、爺は気にせずに目を丸くしていた。んで、ポーション効果が出たのか体が光ったぜ。
「どーだ?」
俺が声をかけてやれば……爺は次にめちゃくちゃ笑顔になりやがった!
「素晴らしいですな! この表面のサクサクした食感……中身の色合いは驚きましたが、香辛料をふんだんに使い……ふんわりしている内側のパンとの相性は最高です!! 陛下がお望みなのもよくわかりましたぞ!!」
「だろ? だろ!!」
ポーションとしての効能もだが……ケントのパンは味が良過ぎる。
下手すると……宮廷の調理人達の腕前も霞むくらいに。
ケントがマブダチじゃなきゃ……すぐにでも迎え入れたいところだが……あそこで、ケントがいなければ、回復薬の事情が変わらなかった。
ディルックが見い出し……俺にまで案件を寄越さなかった。
俺自身が、ケントの人となりを知った上で……改革をしようと思わなかった。
年も明け、まだまだ油断は出来ないが……少しずつ、俺のしがらみも改善されつつある。
爺がリオーネに行って帰ってくるまで……まあ、色々と付け狙う連中の差し金をとっ捕まえてやったぜ!!
このポーションパンは、その褒美とも言っていいくらいだ!!
「あちらのケント様も……実に素晴らしい人格者ですな。陛下がご友人になされるのも、私めは納得致しました」
「最高のマブダチだかんな?」
年末の宴会に行けなかったのは、マジで悔しいが……仕方がなかったもんはしょうがねぇし、もう過ぎたことを悔やんでも意味がない。
魔法蝶とのやり取りも……俺のせいで頻度が減ってるし、近いうちに送らねぇとな?
改革はすぐに出来るもんじゃねぇから……まあ、爺の判断で諾と出るまで、リオーネに行くのもお預け。
代わりに、様子見でディルックを行かせるか?
表向きは、あそこの支援者をあいつにしてるからなあ?
「そうでした、陛下。ひとつ、ケント様より言伝が」
「あ?」
これからの事を考えていたら、爺が俺の前に一通の便箋を差し出してきた。
「最初は魔法蝶でお送りする予定でしたが……長くなるので、お手紙をお預かりしてきました」
「ケントが?」
なんだ? と封を開けて内容を見てみると。
すぐに飛び出そうとした俺を、爺に首根っこ掴まれるくらいの出来事となった!!
次回はまた明日〜