5話 メーンベルト
5話 メーンベルト
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さて、どうしましょう。
私たちを囲む人の輪、中心には握手するサクラと私……
とっても気まずいです。
「サクラ、その子が話していたマルシアさんでいいのかしら?」
「エフェリーネ様! はい、無事保護出来ました」
「それはよかったです」
人の輪が割れ、1人の女性が話しかけて来ました。
エフェリーネ、周りの様子を見るにこの拠点の中でもそこそこのお偉いさんといった様子でしょうか?
どうやらサクラは私のことを事前に話していた様です。
まぁ、サクラの話から察するに今の私はかなり狙われている状況らしいので、事前説明なしに連れてきたらえらい迷惑がかかってしまいますしね。
そもそも、国に追われている組織の拠点に部外者を連れてくるのだから私がかりに狙われたりしていなくても当然といえば当然ですね。
「マルシアさん、あなたはメーンベルトに所属するということでよろしいですね?」
女性は膝をつき、私の目を真っ直ぐ見てそう問うて来ました。
「はい」
この後に及んでいいえなどと言えるはずがありません。
私はここの場所を知ってしまっていますし、ぐるりともメーンベルトのメンバーに囲まれたこの場で断ってどうなるか想像できないほど愚かではありません。
それに、私だけならともかく私を連れてきたサクラもきっと……
選択肢なんて初めから存在しないのです。
「ではこちらの所属願いの記入をお願いします」
何か儀式でもあるのかとも思っていましたが、随分と事務的なものですね。
書類一枚書けば終わりですか。
冒険者組合並みの緩さではないでしょうか?
まぁ、後で身元の調査なんかはするのでしょうけど。
もしくはここに連れてくることを許された時点で事前の調査は終わっていて、あとは本人の意思次第で受け入れるか消すかってところでしょうか。
そもそも、儀式なんてものがあると思っていた私がおかしいのかもしれません。
メーンベルトは反王政団体、つまりはちょっと過激な政治団体です。
別に宗教組織じゃないのだから、いくら危険視されてるとはいえ邪教のような信者になるための儀式などはないのでしょう。
とはいえ、犯罪組織であることは変わりありません。
これで私は犯罪組織の一員ですね。
私に王政への反発思想などないのですが、むしろ昨日まで王子の婚約者で公爵家の長女という国の中枢の人間だったと言うのに……
でも、問題はありません。
全ては魔女を倒すまでの辛抱です。
大義を果たせばそれ以外は全て瑣末ごと、より大きな善のために多少の罪は見逃されて然るべきでしょう。
「……グリッベーニ?」
え?
何故そこで疑問に思うのですか?
……
もしかして、サクラ説明してなかったの?
と言うか、メーンベルトは事前の調査もなしに私をこの拠点内に入れることを許したの?
そもそも、話していたってだけでもしかして正式なものは何もなかった?
よく考えれば、私が勘当されてまだ一日です。
正式な調査も審査もできるはずありません。
どうやらサクラは私が想像していたよりもずっと考えなしに動いたようですね。
それに、メーンベルトも結構ザルい組織のようです。
よくこんなんで今まで摘発されずに活動し続けられましたね。
いえ、こんなのを摘発できない軍と警備に大きな問題があると言うべきでしょうか。
皮肉なことに、メーンベルトが指摘し否定する王国の腐敗のおかげで当のメーンベルトが生き残り勢力を拡大しているという……
あれ? ちょっと待ってください。
話が通っていないってことは、そもそも私はメーンベルトに所属できるのでしょうか?
反王政組織に貴族の私は受け入れられるのでしょうか?
私は貴族です。
それも王族に次ぐ権力を持つ公爵家の娘で王子の婚約者……
こんなのメーンベルトにとって敵そのものなのでは?
一応元で婚約は解消し公爵家は勘当済みなのですが、それでもつい昨日まではそうだったのは事実なわけですし。
え、どうしましょう。
いえ、さっき思いっきり婚約破棄と勘当の話してましたし、拍手起きて受け入れられてる雰囲気でしたので多分大丈夫です。
そう信じるしかありません。
「お嬢様は……」
サクラが話し出したのを手を制して止めます。
何焦ってるんですか?
やっぱり、貴族がここにいるのはまずいんですか?
だとしたら、なんで貴女は私をここに連れて来たんですか!
まぁ、いいです。
とりあえず貴女は黙っててください。
こういうのは自分から話したほうがいいと思います。
誠意を見せると言うやつです。
貴族ならそう言うのは役職の上無視してもいいのでしょうが、ここはそう言う世界ではありませんしね。
それに、サクラに話させると偏見が入る気がします。
主に私を美化する方向に。
疑いを晴らそうって時に、思いはどうあれ嘘が混じるのは相当よろしくない気がします。
「私がグリッベーニ公爵家の生まれであることは残念ながら事実です。しかし、既に勘当された身です。私は公爵家の娘のマルシア・グリッベーニではなく、ただのマルシア・グリッベーニです」
なるべく簡潔に。
私は今は貴族ではない、貴族にいい思いはない、それが伝わればいいのです。
ここはそう言う場所ですから。
まったく、これからはむやみに姓は名乗らないほうがいいですね。
人攫いに狙われていると言う話もありますし、私が少し不用心が過ぎたのかもしれません。
まぁ、今回の場合は姓を名乗らずに所属して後でバレたほうがより厄介な事になりそうだったので不幸中の幸いということで納得しておきましょう。
事前に話を通す、これ大事ですよ。
いきなり婚約破棄とか、勘当とか、犯罪組織にご招待とか……
私の周りの人はどうなっているのでしょう。
「それは、可哀想に。何があったのですか」
「実は……」
全くサクラは何てとこに連れて来てくれたのでしょう。
まぁ横で俯いてモジモジしてるのを見るに悪気はなかったのでしょう。
それでも連れて来たと言うことは、私は思ったよりもまずい状況だったということです。
これでは先が思いやられますね。
私には魔女を殺すという、果たさなければならない使命がありますのに……
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