表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/16

2話 悪夢

2話 悪夢

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お父様、助けてください! カローイ様が……」


「マルシア貴様!」


 え?


「王子の不興を買い、ましてや婚約を破棄されるとはなんたる様か」


 何を、言っているの?


「貴様など我が娘でもなんでもない、このグベッリーニ家の恥晒しめ」

「グベッリーニ公爵家から勘当する!!」


 ……おとう、さま?


「聞こえなかったのか?」

「直ちにこの家から出ていけ!!」


 なんで?

 ねぇ、ナンデ!?

 何でそんな事、

 嫌、そんなこと言わないで!

 聞きたくない!

 そんな目で見ないでよ。


 お父様、私を捨てないで……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はぁ、はぁ、はぁ、……夢、ですか」


 酷い夢を見ました。

 身体中が痛いし、頭がガンガンします。


 このベットのせいでしょうか?

 硬くてまともに寝られませんでした。

 疲れも全く取れた気がいたしません。

 部屋も汚いし、最悪の宿です。


 あれ?

 何で私こんなところに……

 もしかして、夢じゃない?


 確か……カローイ様の成人のパーティーで婚約を破棄されて、王子の不興を買ったとお父様に家を勘当されて、行く当てもなくお金もなくボロ宿に泊まる、そんな酷い悪夢を見ました。

 そのボロ宿で私が泊まった部屋がまさにこの部屋、悪夢で見たまんまです。

 悪夢であってほしい、私の記憶の中の宿の部屋と


 そっか、夢じゃ無かったんですね。


 ただの夢だったら、どれだけ幸せだったか。

 朝起きたらサクラに遅いとか寝癖がとか小言を言われて、お父様と食事をしながら学園のことなんかをお話して、学園ではカローイ様とフローラと一緒に授業を受けたりくだらないことを話して笑い合ったり……

 私の当たり前で幸せだった日々が、全部なくなってしまったのね。


 どうして?


 お父様も、カローイ様もおかしくなってしまいました。

 同じような濁った目を、この世に絶望し切ったかのような瞳をしていたのです。

 カローイ様ほどではないにしてもお父様の瞳だってとっても綺麗だったのに、私に勘当を告げた昨日の夜は見る影もありませんでした。


 そうだわ!

 きっと、自分の意に反することをするように魔法で操られてしまっているの。

 だからあんな濁った目になってしまっているのよ。

 そうに違いない。

 だって、私がカローイ様にお父様に捨てられるなんて、そんなことあり得るはずがないのですから。


 そうでないと、私は……


 いえ、これは私だけの問題ではないのです。

 落ち込んでばかりはいられません。

 そんな場合では無いのです。


 だって、そうでしょ?

 この国の王子と公爵が操られるなんて、国の一大事に違いないわ。

 私はまだ成人こそしていないけど、立派な貴族なのですから。

 国を守ることこそが、私たち貴族の使命です。


 絶対に許されることでは無いのです。

 私に対しても、私の国に対しても。

 必ず見つけ出して、制裁を与えなければなりません。

 そして、その人物の首を手土産に私は公爵家に復帰するのです。

 洗脳が解ければお父様はすぐにでも勘当を撤回してくれるでしょうし、ましてや私がこの国を救ったとなればカローイ様との婚約だってすぐに元通りです。


 思い出さないと。

 もう忘れてしまいたい、あのパーティーの記憶。

 何か、手がかりがないでしょうか?

 そして、必ず助け出します!


 フローラも……

 いえ、フローラのことは信じると決めたのです。

 魔女から助けて、

 そして一瞬でも疑ってしまったことを謝って、

 そしたらまた今まで通りに、

 きっと、大丈夫です。


 でも、彼女はあの時隣にいたカローイ様とは様子が違いました。

 顔には笑みが浮かんでいましたし、瞳も濁ってはいなかったように思います。

 でも……信じたい。

 だって、彼女は私の唯一のお友達なのです。

 家の関係とか、下心とか、そう言ったのを抜きに初めてできた友達で、


 ……


 いや、私は初めにそう直感したはずです。

 その後理由をつけて否定しただけ、信じたくないから咄嗟に否定しただけです。

 私は考えるより前に、彼女が犯人だと咄嗟に思ってしまいました。

 そして、その瞬間は許せないって気持ちで溢れて、憎しみすら抱いたはずなのです。

 なのに、そんな気持ちはすぐに霧散しました。

 彼女は魔女ではないと信じたくなりました。


 人を操る、カローイ様やお父様が掛けられているであろう魔法とは違います。

 悪感情を弱める魔法なんて、結構簡単に使えます。

 私も、奴隷や平民相手にならば簡単に使えます。

 流石に貴族のような大きな魔力を有するものは別ですが。

 でも、フローラの魔法の腕なら私に気づかれないようにそんな魔法を掛けるなんてことも出来るのかもしれません。


 やっぱり、彼女が?


 でも……

 魔法学園という庶民には右も左も分からないとこにきて、私を頼って打ち解けて一緒に笑い合いました。

 そんな彼女が魔女だなんて、信じられません。


 でも、そんなフローラだからこそ彼女が魔女に遅れをとるとも思えないのです。

 一瞬の勝負なら不意をつけば殺すことは出来るのかもしれません。

 しかし、彼女のような強力な魔力を有する者を操るような魔法なんて、それこそどれだけの強大な魔力と時間がかかるか想像もつきません。

 彼女は庶民でありながら魔法学園に入学するという例外中の例外の天才で、しかも血に裏打ちされない貴族でもないのにあれほどの……


 え?


 そもそも、なぜ貴族でもないのにあれほどまでに強力な魔力を有してるのでしょうか?

 仮に優秀だからと言って、庶民が魔法学園に入学なんて出来るものなのでしょうか?

 確かに、彼女の魔法の腕を見たらその例外措置にも素直に納得は出来ました。

 しかし、その例外措置に納得できるほどの実力を持ってることがそもそもおかしかったのでは?


 フローラ、貴女は一体……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 こんこん


「……はい」


「お嬢様、ご無事ですか!?」


 え?

感想、評価、なんでもいいので反応もらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ