第二話
入間や狭山で取れるお茶は入間川を経由して運ばれるのではない。それじゃ遠回りになるので陸路で仙波河岸や新河岸に行き、そこから新河岸川で江戸を目指すのだ。しかしこれから行くルートは大宮。となると入間から指扇まで入間川の船に乗り指扇から陸路で大宮を目指す。
まず金子から入間まで目指す。そこにはもう入間川がある。瓜子姫はもうへとへとだ。
「ごめんね、旅なんてしたことないし」
「いんだよ。少し休んでから船に乗ろうか」
ソルは頭巾で角を隠している。ちょっと皮膚の色が赤がかっている部分を見逃せば人間そのものだ。入間の茶屋はさすが茶処の本場だけあっておいしい。
茶屋で時間を取った分一日で大宮に行けるとことを一旦川越側に止め次の朝に出る船を待つことにした。ここに鬼たちの隠れ宿がある。一見民家に見える宿屋の主の正体は山姥である。あまりにやさしい山姥に瓜子姫は言われるまで気が付かなかった。
「そうよ」
そういうと額から角が徐々に伸びていく!
「私を……食わないよね」
「まあ食うのは悪い人間さね」
「おひちは普段ここで農作業してる。でも正体は御覧の通りだ」
「宿賃な」
「まいど」
「俺も角隠しながら旅するのは疲れるしな」
「でも大宮に行くのにここに寄るとは思わなかったけどな」
「ごめん……わたしのせい」
「いいんだよ。こうして鬼が伸び伸びできる場所でくつろげるんだし」
こうして二人は山姥の家に止まった。おひちは明日の準備のために包丁を研いだ。瓜子姫はその音を聞くたびに恐ろしくて音が止まるまで眠れなかった。




