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~序~
ここは武蔵の国 金子。ここに河から流れてきた子を拾った老夫婦が居た。その子は近くに瓜と一緒に流れていたので瓜子姫と名を付けられた。瓜子姫の織物は評判がよかった。しかしそれだけではなかった。
瓜子姫は余った織物で脚絆を作ったのだ。これがまた出来がよく評判がさらに上がった。そんな時近所の氷川神社の主である門客神がこの脚絆を手に入れた。
「なんとすらばしい出来だ!」
「でしょう?」
部下の天邪鬼ソルが答えた。門客神は脚の神にして旅人の神。そして鬼の守護神であった。氷川神社には脚絆で縛った草履が多数掲げられている。瓜子姫が折った脚絆も多数あった。門客神はあまりの出来にどんな人物が折っているのか調べたくなった。そして瓜子姫に祝福を授けたくなった。
「ソルよ、この織物を織った瓜子姫とやらを大宮に連れてきなさい」
「承知」
これは武蔵の国後に入間市金子と呼ばれる地に伝わる不思議なお話。




