最終話
カカトに人間の肉を食わせる。するとカカトはみるみる元気になり、皮膚の色は元の赤に戻り、角も元通りとなった。
「にいちゃん!」
「カカト!」
二人は涙を流しながら抱き合った。
その後新たな力を得た鬼たちは僧侶に次々技を教える。
全ては元の暮らしに戻った。はずだった。
一年後。結界を破り鬼と人間の僧が住む鬼守の村を襲って来た人間が現れた。
瞬時に鬼を切りなんと石の力でもって鬼を消し去る。
「スキトを出せ」
「敵討ちに来た」
その声に鬼たちは慌てふためいた。
スキトは慌てて僧とのけいこを辞めて人間の前に来た。
「お前はあの時の」
「そうだ」
「名は何と言う」
「赤村。赤村啓介!」
「勝負だ!!」
だが勝負にならなかった。まるで見えぬ速度の剣戟から守るのが精いっぱい。
そしてそのまま一回転してスキトを切りつけた。後ろにあった石まで切りつけて割れた。
断末魔が響く。さらに赤村が持っている石から放たれる閃光でスキトを浄化するではないか。
「にいいいいちゃああああん!」
カカトがスキトの亡骸に身を寄せた。が、もう亡骸は無かった。
「俺か! 俺のせいで復讐したんだな!」
「どういうことだ」
「僕が病に侵されたときに禁忌とされた人の肉を食うことで病を撃退した」
「その時の復讐」
「そうだ」
「お願いだ。やめてくれ。この村の者もここに来ている人間の僧もだ」
「俺の命を奪っていい」
「だから、この人たちだけは!!」
「わかった」
「え?」
「だが次に人間に手を出してみろ、この村を殲滅する」
「あ……ああ……ありがとうございます」
こうして今でも国見半島には鬼たちが暮らす場として残っている。先祖は鬼として天から降りてくるので鬼に扮したお面をかぶった村人が大みそかにもてなす。そして僧の修業の場としても健在である。
かつて魔界とされた国見半島は大分空港も整備され鬼の面をかぶった現地の人が観光客を今日も出迎える。
=終=




