第三話
この顛末を鬼たちは見ていた。悔しがるもの、熊野権現に憎悪を燃やす者。様々であった。
数日後瓜が巨大化しやがて避けた音が木霊しなんとそこから命が生まれ落ちた。鬼であった。スキトは生きていた。
スキトは呪を唱え葉をかき集めて自分の恥部を隠すと鬼守の剣を拾い、鬼守の村に帰る。
「スキト!!」
「生きてたのか!!」
村は総出で大喜びした。
まずスキトは衣服を着て、風呂を浴び、食事をして気持ちを落ち着かせてから寝て、翌日改めて長のところに伺った。
「このたび、瓜移しの術にて自分が命を落とすことは回避できました」
長のワクトは唸った。
「たいしたものよ……」
「権現の裏切りにより契約は破棄。この件でもって我々は権現を祭る村を進撃し、人間を思う存分喰いましょうぞ」
「カカトを、救う。もう時間が無い」
「ふむ……我々が人間を喰えば力も増す。人間の僧に教える呪文も多様になろう」
「決めた。勇士を募り総出で人間の村を襲う!」
翌日鬼たちは隠れ蓑を着込み、人間には見えないようにしてから空を飛び、疾風の速さで国見山を越えた。
そして結界を張り、逃げられないようにしてから人間を襲った。
悲鳴も吸血の音もスキトたちにとってすべてが好物。
家に入りスキトは人間の両親を鬼守の剣で切り殺した。そして臓物を麻袋に入れる。
「やめて……」
「やめてくれ……」
泣き崩れる子がいた。
そばには弟も居た。瀕死だ。助からない。
「村の人間を全て殺したか?」
「ああ、赤子まですべてな」
「山菜を取りに行ってたこいつらが最後の生き残りだ」
「風魔の刃が当たって弟の方は瀕死だな」
「そうか」
「せめて、弟だけは」
この言葉にスキトはびくっとした。
(俺は弟を救うためにこの村を襲ったのでは)
(なぜ、涙が流れるんだ)
(ふっ、俺も甘いな)
「人間、弟を救いたいか?」
「何でもする、何でもするから!!」
「その言葉に、嘘はないな?」
「このとうりですから」
「そうか」
スキトは人間の弟の首筋に牙を立てた。悲鳴が響き渡る。弟はやがて眼が朱色に染まり骨音を立てながら角を生やした。傷は癒えていた。
「人間、その子はもう人間として救うことはできない」
「だから鬼にしてやった」
そう、天邪鬼の牙は鬼にすることができる毒を持ってた。
「せいぜい、鬼と生きるんだな」
「お前を喰っちまうかもしれんがな」
勇士たちが、鬼が一斉に笑った。
「皆の者よ、麻袋に贓物を入れたか」
「「おお~!」」
「スキト様、すべての者が用意出来ました」
「引き上げるぞ!」
スキトの声を聴くと勇士たちは隠れ蓑を着込み一斉に飛び立った。
「じゃあな、少年」




