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瓜子姫と天邪鬼の冒険譚  作者: らんた
双六で遊んだ天邪鬼
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双六で遊んだ天邪鬼

 飛騨国の天邪鬼のトレ王がいつもの席に座る。椅子も石で出来たものだ。目の前には平らな石が置かれている。と、その時月光が刺した。やがて人影が降りてくる。


 「やれやれ、お前も飽きないな」


 「すまんな、天界は窮屈なもんでな」


 「ちゃんと遊戯のお代はいただくぞ」


 「トレよ分かってる、雷の魔石二つだ」


 そう言うとトレは雷の魔石一つを平らな石の横の差込口に入れる。するとぱっと光ったかと思うとマス目が出現した。


 「ソーマよ、今日は何を賭ける?」


 「私が負けたら月の魔石をそなたに」


 「お前は月の神だからな……。いくらでも月の魔石が手に入るからな」


 「そういうな。呪を唱える時に力が上がるぜ、トレ」


 「俺は民が地底世界から採掘させた夜の石だな」


 「それそれ、いつもの」


 「遊戯は何をする。模擬戦か? それとも碁か?それとも人生模擬遊戯かな?」


 「天界で戦は無いからな。模擬戦で勝負だ」


 「やれやれ、これが月の神だとというのだからな」


 「そう言うなよ。飛騨の天邪鬼国を月光でもっと豊かにしてやるぜ」


 「さあ、戦闘開始だ」


 トレが言うとまるで幻のような透明な武者たちが次々現れ、城に川、柵に呪術隊まで現れる。


 「今度は負けんぞ」


 そう言うとソーマはサイコロを振る。五が出た。すると『+五』の表示が出る。


 「私も振るとするか」


 トレが出した数字は三。幻の兵士たちから『+三』の数字が出る。


 「もっともこの遊戯は己の呪力次第だがな。サイコロなんて誤差にすぎぬ」


 「ふふふ、その誤差を甘く見るなよ」


 これは岐阜県高山市双六という地名の由来にもなった不思議なお話。


◆◇◆◇


 「しっかしさあ、敵の王と将棋指す神様って珍しいよな」


 「それは褒め言葉として受け止めておくよ」


 駒を刺す音が木霊した。


 「俺たちは天界から追放された鬼、天邪鬼なんだぜ?」


 「分かってるよ。でもちゃっかり毘沙門天様に仕える天の使いでもあるだろ」


 「まあな」


 「なにげに俺はおまえらと敵対している天照とは対立してるんだぜ」


 「知ってるよ。だからこうして付き合ってるんだろ、ソーマ。いや……別名ツクヨミ」


 駒を刺す音が木霊した。


 「もし、これらのゲームを天照の支配地域に普及させたらすげえおもしれえことになりそうだな」


 「ああ、鬼を迫害するといったバカな行為が減って遊戯に興じるだろうな」


 「だが、雷の魔石は貴重品だ」


 「分かってる。だから月の魔石をこちらも用意しよう」


 「それで天界の勢力の力をそぐことが出来るってもんだ」


 「お主も悪よの」


 駒を刺す音が木霊した。


 「それとおまえさんの力を高めるために月読神社を飛騨国に作らせるとするよ」


 「ありがたい。芦原瑞穂の国に俺を祭る神社は少ないからな」


 「いいってことよ」


 「王手」


 「ソーマ、これは厳しいなあ」


 「雷の魔石は頂くとするか」


 「お互い、うまくやれよ」


 「ああ、親友よ」


 そういうとソーマは天空に上って行った。


◆◇◆◇


 こうしてひそかにトレ王の手で遊戯板が作られて行った。遊戯板と言っても石で出来たものである。それを一つづつソーマが運び出す。天界は一大遊戯ブームとなった。果ては賭け事まで行われるようになった。


(しめしめ)


 こうして天界の力を、厳密に言えば太陽神天照に着く側の力をそぐことに成功した。


 しかしさすがそこは天照。すぐに遊戯板の回収を行い、特に中毒に陥った者を下界に転生させることにしたのだ。下界に転生した者は瓜から赤子が次々と生まれたと言う。ゆえに飛騨には「瓜子姫と天邪鬼」伝承が多く発生した。瓜子姫を殺すことに成功した天邪鬼も居れば人間に逆襲され殺された天邪鬼も居る。


 トレ王はいつもの場所でソーマを待っていた。やがて下界から影が降りてきた。


 「お前が元凶の天邪鬼の王か」


 刃物のような声で言い放ったのは天界の兵士!


 「とりゃーっ!」


 言うないなや遊戯版となっている巨大な石を吹き飛ばした。


 「ちっ!ばれたか」


 トレ王は隠れ蓑を着こみすぐに飛び去った。


 こうして飛ばした石が落ちた場所を双六石と呼ばれ、この辺一帯は「双六」という地名になった。


 天界の勢力によって事実を書き換えられ双六で不正をした天邪鬼に怒って相手が石を蹴ったという話に切り替えられた。


 最も月神ソーマは月の神という重責に着く神だけあって御咎めは無く、またトレ王にもこれ以上天界から迫害が来ることは無かったと言う。



元伝承


『双六の岩波橋の傍らに盤の石がある。この石の西にある山で昔天の邪気あまのじゃきが小葉石を双六の盤としていたが、負けたほうが怒って盤を投げ、山麓に落ちた盤が盤の石となり、川に落ちたのが賽の淵となった。双六の名称の起源であろう。 』林 魁一「民族学研究」『日本民族学会』8(3)1943.より。


しかし、双六岳の伝承は違います。神代に中秋の名月の晩に限って月神様が月神の家族とともに里へ降りて、碁を打ったり双六をして遊んだが、これを天邪鬼がいまいましく思い、鳥の鳴き声で朝と思わせて月の神を誤魔化して天界に差って、さて自分たちが遊ぼうとしたが板が動かせず、サイコロを振ったらサイコロは落ちたというのです。それが賽ヶ淵と言います。


今回この二つの伝承を足して2で割り、さらに瓜子姫伝承をさりげなく混ぜることにしました。


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