第二話
セトは村の者である乳母に瓜姫を任せて瓜姫のために牛乳を買いに里へ行く。セトは乳母のアバに「悪い鬼がいるかもしれないから戸は開けるな」と言った。アバは「考えすぎですよ」と笑って見送った。とはいえ山賊なども居ることは事実。用心することにした。
しばらくして「戸をあけておくれ」という声がした。アバは「どなたですか」と言っても「戸をあけておくれ」としか言わない。アバは黙っているとやがて声の主は「アバ戸を開けろ」と言って戸を叩く。
(何で私の名前を知ってるの!?)
アバは家の中でじっと身を引く。
「あくまで抵抗するのだな?」
そう言うと戸を叩き割り中へ入った。
アバは悲鳴を上げた。鬼だった。まさか人間ではなく本当に鬼が来るなんて!
「この子が王子の子だな? 連れて行け! アバお前もだ!」
魔法の縄が赤子とアバを縛る。鬼たちは赤子とアバを背負い、さらに置き紙を置いた。
セトが家に戻った時、愕然とした。家の中はめちゃくちゃだった。それだけではない。置き紙を見てさらに愕然とした。
『お前の子と妻を取り戻したければ我らの鬼が島に戻って来い。戻って来ないのなら、こいつらを始末する』
瓜姫も乳母のアバも直接の血のつながりはない。しかし、セトは決断した。鬼が島に行ってかつての仲間らや肉親である親と戦う決断を。セトは納屋にしまってあった刀を差す。この刀を見るのも5年ぶりだ。
血は繋がっていなくとも瓜姫はわが子なのだ。取り戻せねば。




