第二話
数日後怪我が治った。さっそく壁にかけてある隠れ蓑を着るトト。隠れ蓑も数日のうちに修復した。
「隠れ蓑を着ると、僕の姿は人間には見えない。だからこうやって草履を持つと」
「君のおじいちゃんの草履がまるで浮かぶように見えるかい?」
「み、見えるわ!! すごい!」
トトが隠れ蓑を外す。再びトトが見えるようになった。
「天邪鬼って全員じゃないけどけっこうこうやって姿隠して行動するんだよ」
「帰りは君にも隠れ蓑貸すね。実はこれ空を飛ぶこともできる道具なんだ」
「ありがと」
「じゃあ君のおじいちゃんとおばあちゃんの草履持って」
そういうと草履を懐にしまってもう一回隠れ蓑を着て姿を隠した。
「行くぞ!」
「はい!」
そういうと瓜姫をおぶった。傍目から見るとまるで瓜姫が浮かんでいるかのようだ。
空を飛ぶトトと瓜姫。
「すごい! すごい!」
はしゃぐ瓜姫。
トトと瓜姫は羽後(※1)の山々を通り越し反対側の海辺の島に着いた。一見、何の変哲もない島だ。トトが持っている魔法の石が光ると透明な壁に穴が開いた。トトは透明な穴を潜り抜ける。そして島に降り立った。
「ここは陸中(※2)の鬼が島だ」
さっそく隠れ蓑を外し巨大な岩に向かう。そこは鬼たちが住んでいた。
「トト、大丈夫か? 連絡が付かなくて心配だったんだぞ。その人間は?」
「この瓜姫に助けられた」
「そうか、人間。俺たちを助けてくれたのか」
「この瓜姫に恩を返したくて」
「そうか。俺の名はキト。同じ天邪鬼だ」
「さっそく、転移場所に案内しよう。転移石を彼女に持たせて」
そういうと転移石を瓜姫に持たせた。
「それとキト、実はな……」
「分かった。伝えておくよ」
「瓜姫、この鬼が島はかりそめの姿。天邪鬼の大部分は地下世界に住んでいる」
「ええっ!」
「大丈夫だ。地獄に行くんじゃない。それどころか人間が住む町よりもきらびやかだぞ」
そういうと城に案内され、転移場所に着く。
呪文を唱えると、やがて空間がゆがんで見えるようになった。
「怖ったら目をつぶっていいんだよ。すぐに終わる」
転移した場所には門番がいた。
「トトお疲れ。その人間の子は?」
「もちろん、長に見せるよ」
そう言って門を出た。
そこは本当にきらびやかな地底都市だった。
「どう? 驚いた?」
「鬼楽城にようこそ!」
※1:現在の秋田県の事
※2:現在の岩手県の事




