第一話
瓜姫の家にやってきた。家には誰もいない。ほそぼそとした畑、それに織り機があった。家の中をまざまざと見つめる鬼。
「私ね、織物でご飯食べてるんだ」
「そうなんだ。お父さんとお母さんは?」
「死んじゃった。病で」
そういうと位牌を指差した。
「お父さんのための織物もお母さんのための織物も作っているんだよ」
「つらくない?」
「つらいし、さびしいし、友達もいない」
「何で?」
「私、瓜から生まれたらしいの」
「えっ?」
「本当かどうかわからないわ。でも子供と両親が全員死んだんで、おじいちゃんとおばあちゃんが近所の第六天神社に祭られている第六天魔王に祈ったら畑から突然現れた瓜から生まれたって言われたわ。ゆえに、私は魔の子として忌み嫌われてるわ」
(それは蘇生の術を使ったのでは……だとすると、この子は……)
「よくそれで織物売れるね」
「うん、この織物魔力があるからね。私瓜から生まれた時から織物に魔力を込められるらしいの」
「ほら、だんだん傷が癒えて来るでしょ?」
「あっ、本当だ……」
傷がどんどんふさがっていく。
「すごい、ありがと」
「いいえ、どうもいたしまして」
「ねえ、君、おじいちゃんとおばあちゃんに会いたい?」
「えっ?」
「僕の鬼の主に頼めば、もしかしたら……できるかも」
「ええっ」
「君のおじいちゃんとおばあちゃんが使ってた草履とかあるかな?」
「あるわ」
「それ使って草履に宿ってる念を引き出して、瓜に命を宿して復活させる」
「ええっ!」
「しかも生き返ったとしてもおじいちゃん、おばあちゃんとして生き返るから寿命はそんなに長くないよ」
「さらに鬼が島に行くんだよ? 人間じゃ怖いんじゃない?」
瓜姫は黙った。
「でも私も、魔物みたいなものだしいいわ。連れてって鬼が島」
「本当にいいの?」
「かまわない」
「僕が回復したら君をおぶって空飛んで行くけど大丈夫?」
瓜姫はさらに黙った。
ようやく口開いた。
「私、おじいちゃんとおばあちゃんと暮らした日々、本当に幸せだった。あのころに戻りたい。行くわ、鬼が島に」
「分かった」
「僕の怪我が治ったら隠れ蓑着て行くね」




