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瓜子姫と天邪鬼の冒険譚  作者: らんた
十字と瓜子姫と天邪鬼
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第八話

 「気が付きましたか?」


 「もう三日三晩眠っていたんですよ」


 ランが目にしたのは天邪鬼の子だった。


 「ここは……」


 ここは信濃の国の天邪鬼の王宮です。


 (信濃……。遠くまで飛ばされたな)


 そして気が付いた。天使の翼がいつのまにか消えている。力を使い果たして己の体内に格納してしまったのだろう。だが鎧はあの時のままだ。真紅の鎧にはあちこちヒビが入っていた。


 「ちょっと上の人呼んでいきます」


 やがて副将軍らしき人物が現れた。


 「反逆者ラン、王がお呼びだ」


 連れてこられたのは応接の間であった。


 「我は中立を守って正解だったよ」


 「我の名は信濃の国の天邪鬼の王、カラムだ」


 「私たちに阿弥陀様がお前を特別に守るようにと夢の中で仰せられた」


 「阿弥陀様の慈悲が無かったら、お前は高天原まで送り届けるところだった。我らまで勝てぬ戦に巻き込まれるのは御免だからな」


 「クラム副将軍もうその辺でいいだろ」


 「本当なら我らはタケミナカタ様の雪辱を晴らしたい。だから本当はお前の軍勢に加わりたかったのだ。だが勝てる見込みのない戦に乗り出すほど我々は酔狂じゃない」


 「それと阿弥陀様はこうもおっしゃった。後世にキリシタンらがこの土地を訪れる。お前はそのキリシタンの為に荒れ地を整備せよと。その言葉を言ったとたん阿弥陀様は天使のお姿となった」


 「お前はもう高天原に狙われている。せめて刺客に殺されない様洞窟にひっそりと暮らし洞窟と荒れ地を行き来する生活をして来い。それと、ここの天邪鬼を含め、一切の他国との天邪鬼との交流を禁止する。監視の者も付ける」


 こうしてランは信濃の天邪鬼が住む地下都市を離れた。そこは諏訪湖を一望できる山だった。ランは呪を唱えると己の躰の周り渦を巻き、己が纏っていた鎧や兜が消えた。いつもの服装に戻った。監視兵はナラム、ホロムの二人だった。三人は隠れ蓑を纏って空へ飛び立った。


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