第三話
邪宗門狩りは瓜子姫の家を襲った。瓜子姫は瓜畑で拾った子なので祖父母は「どうぞどうぞご勝手に」だった。翌日柿の木に吊るされて落とさたあと切り殺されるという。祖父母が農作業で居ない午後にランはやって来た。ランは隠れ蓑を着たままこっそり家の中に入る。瓜子姫の部屋に入ると隠れ蓑を脱いだ。
「いよいよだね。予想通りの展開だね」
「君の着物貸して。それと化粧」
「本当にいいのね?」
「君はここの軒下に隠れて。僕が明日ここに来るまで絶対物音立てないで」
こうして天邪鬼のランは瓜子姫に成り済ました。翌日邪宗門狩りの連中がランをひったてる。大きな柿の木に紐でくくりつけられて着物は剥ぎとられる。
「終わりだな」
紐を切り落とそうとしている。そして切った瞬間―!
ランはくるっと宙返りして着地した。そして頭巾を剥ぎとり角を顕わにし次に懐から短刀を取り出し邪宗門狩りの連中を次々突き刺す。
敵は全員動かぬものとなった。そしてランは急いで瓜子姫の家に戻る。祖父母が驚く。鎌を取り出して攻撃する。
「仕方がない」
まるで背負い投げをするかのように彦助を投げ倒した。家の中に入り、床の一部を開ける。
「逃げるよ!」
「逃げるってどこに!?」
「とっておきの場所があるんだ」
またしてもランは意地悪そうな笑みを浮かべた。
「待て!!この鬼!」
富が悲鳴のような声を出す。
「瓜子姫! 行かないでおくれ! わしらが悪かったんじゃ!」
だがそんな声に耳を傾けず、挨拶もしないまま瓜子姫は家を後にする。慟哭する彦助と富の声が響き渡る。二人がたどり着いたのは奥出雲の廃寺だった。
「ここで暮らすの?」
「いいや、ただ暮らすんじゃない。ここを君の信仰の拠り所にする。出来れば仲間も連れて来るといいよ」
「え?でもここは仏教寺院でしょ?」
ランは今度はゆっくりと意味深な笑いを浮かべた。
「ここの本尊、阿弥陀如来なんだ」
「だから何!? 結局あなたも邪宗門狩りと同じ?」
「仏教ってキリスト教の天使にもたくさん取り込まれている。この阿弥陀はインドではアミタユース、ペルシャではメタ、英語ではメートルで長さの単位だ」
「ああ!」
「そう、これは君たちの宗教で言う天使だよ。メタトロンという」
「ああ……」
「ここは仏教寺院じゃない。教会さ」




