~序~
偵察中の里の家で天邪鬼の女の子が信じられない光景を目撃する。隠れ蓑を着ているので姿は見えない。こっそり戸を開ける。
「せっかく拾ってやったくせに邪教なんかにかぶれやがって!」
娘の悲鳴と怒号が聞こえる。
(邪教――!)
「お前なんか織物売れなかったら即もう一回瓜畑に捨てるぞ」
「彦助父さま、お願いです。それだけは」
「それとこの辺最近邪教徒だけでなく鬼もいるから気を付けろ。不用心な娘だね」
「はい、富おばさま」
戸が閉まる音がする。翌日天邪鬼の女の子は「戸をあけておくれと」言った。
「ダメです。悪い鬼がいるかもしれないから戸を開けるなと言われています」
「せっかく『邪教』の集会に君を連れて行こうと思ったんだけどな」
それを聞くと「本当?」と聞いてしまった。
「行きたいでしょ?」
戸をそっと開ける鬼。指の色から赤鬼だと分かる。そして誘惑に負けてしまった。瓜子姫は戸を開ける。
「私の名前は瓜子姫よ」
「こんにちは、僕は天邪鬼のラン」
「君をこの隠れ蓑を着せてこっそり邪教徒とやらの集会まで行かせてあげる」
そういうと鬼は持っていた隠れ蓑を着こむ。すると本当に姿が消えたではないか。
「びっくりした?」
もう一回隠れ蓑を脱ぐと姿を現した。
「すごい!」
これは出雲の国に伝わる悲しい物語。時は桃山時代であった。




