第四話
やがて四か月経った。ソラは呪文を唱え瓜子姫の体から離れた。ソラは透明な姿となって瓜子姫から分離してやがて実体を現した。
しかし、翌日に瓜子姫は再び咳が出るようになった。瓜子姫は結局鬼のキラに診てもらうことにした。
「これはきゅうり病という珍しい病気だよ」
「え?なにそれ!?」
「小さい傷口からきゅうり菌というものが入って最後は人間がきゅうりになる」
瓜子姫はおかしくて笑った。そんなことがありえるものか。
「瓜畑に捨てられたと言ったよね。きっとその時きゅうりの特殊な菌が君に入ってしまったに違いない。そしてゆっくりと増殖した」
「信じてくれないかもしれないが、ほかの人間はいわゆる普通の流行病だった。でも君だけ菌が違ったんだよ」
「そんな」
「この病はたとえ鬼が乗り移っても進行を食い止める事しかできない。それは人間の死を意味する」
「ソラは瓜子姫の最後を見てやってくれ」
瓜子姫は泣いた。ソラは一緒に瓜子姫の家まで送った。
「瓜子姫、僕らは一生友達だよ。一生ね」
「うん……」
だが瓜子姫はソラが離れた後信じられない声を聴いた。
「長岡藩の殿様の使いの者が来て瓜子姫を嫁がせてほしいと言ってきた」
「これで持参金もらえて一生楽に暮らせるぞ!」
(そんな!!)
織機や織物を見て来るお客は絶えなかった。だが、こんなことになろうとは。
翌日、瓜子姫は正式に祖父母から殿様への婚姻の件を伝えた。病気の事を伝えても殿様に信じてもらえないだろう。どうすれば……。
午後、ソラは瓜子姫のところに見舞いにやってきた。そして瓜子姫から話を聞くと絶句した。
そして瓜子姫の背中を見せてもらった。ほんのわずかだがすでにきゅうりのような皮が広がっている。
「瓜子姫、僕はもう見てられない。ぼくはこの件について鬼の長と相談してくる」
ソラは鬼の村に戻った。長老のカラは事の顛末を聞いた。横には医師のキラも居る。
「よいチャンスだ。瓜子姫の体を奪って人間の殿と結ばれればよい」
――え?
「その子は鬼の血を半分は引く子となる。その子が生まれた時にわが天邪鬼軍が全力でもって長岡城を急襲する。そうすればいずれ越後国全土は鬼のものよ……これで迫害されている天邪鬼は山でなく堂々と街に住める」
――それは悲願
九頭竜権現の子……越後の誇り外道丸様……つまり酒呑童子様以来の悲願!! 大江山の屈辱を晴らす時が来たのだ! 酒呑童子様に「鬼に横道無し」と言わしめたあの頼光四天王と安倍晴明どもに!! そうだ。酒呑童子に仕えた金童子様は天邪鬼族にして大江山四天王の一角だったのだ。
やがてソラの悲嘆の顔は覚悟の顔に変わり更に強欲の顔に変わった。
「ソラよ、わかるな。日々の偵察の成果が実ったのだぞ。人間と鬼が共存できる国の建国がいよいよ実現する時が来た」
「はい、長老。必ずや成功してみせます」
ソラは牙を見せてにやりと笑った。




