第一話
天邪鬼の少女ソラは以来、ここの家に来るようになった。
「戸を開けておくれ」と言っても「あなたは悪い鬼でしょ。だめ」と言う声しか帰ってこない。そのたびにソラは「少しだけでいいから」と言ってそっと戸をあけてもらうと柿の実や花をそっと置いて去っていく。思いが通じたのかある日突然戸が開いた。
「あなたがいつも物を置いていく鬼なのね……」
その姿は赤鬼の可憐な少女だった。
「私の名前は瓜子姫」
「私の名前はソラよ」
以来近所の柿木で会話する事が多くなった。瓜畑に捨てられていたから「瓜子姫」と名付けられたこと、拾ったのは老夫婦だということ、流行病で次々この地域の人が死んでいることであった。でもあれと思った。鬼族には病気にかかった者など居なかったからだ。
「えっ! 鬼さんたちは病気にならないの?」
「ならないよ。なにが原因なんだろうね」
「おっと偵察から帰らないと。じゃあな。」
ソラが帰ると仲間の偵察部隊が次々と同じことを言う。
「俺たちにも感染しないのだろうか?」
「不気味だ。人間だけに感染して鬼には感染しない」
「特徴は『咳が出る』か……」
ソラは思わず提案する。
「あの……人間連れてきて診察ってやっぱダメっすよね……?」
この提案に対してリスクが多すぎるという提案もあったが最終的に診ない事にはわからないとなり連れていくことにした。




