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~序~
天邪鬼の少女は新しく出来た人間の家を偵察していた。今の所危険性はないがいつ鬼の領地を侵略するかわからない。このため隠れ蓑を着て、姿を隠して偵察していた。この地域はコメが取れるものの冬は豪雪地帯の為生きるのは厳しい。
家から声が聞こえる。娘はせき込んでいるようだ。
「せっかく拾ってやったのに病人になるなんてな」
「お前の織物が売れなくなったらもう一回捨てるよ?薬代も掛かるし」
(ひどい!)
織り機の音が聞こえる。そっと戸をあけて覗いてみた。
(なんて可憐な少女なんだ)
自分も同じ女の子なのに思わず魅入ってしまった。
だが、次の言葉で天邪鬼は怒りを覚える。
「悪い鬼が来るから戸は開けるなよ。戸が開いているぞ」
あわてて逃げる天邪鬼。隠れ蓑を着てなければ今ごろどうなっていたことか。
これは越後の国に伝わる悲しい物語。




