第五話
「もはやこれ使うしかないね」
そういうと瓜姫は鬼面を被った。すると声が全く変わった。それだけではなかった。素早く暗殺者に拳を入れ、蹴りを入れ、さらに暗殺者の腕を折り、剣を奪う。その剣で次々暗殺者を切り殺す。まるで舞いのごとき太刀筋で切り殺していく。目の前の敵は全て大地に倒れた。それだけではなく死体を細切れにする瓜姫。嬉しそうに切り刻む黒鬼が喉をならす。ふと黒鬼が顔を上げた。角から敵を感じ取った。
「まだ敵は居る」
うれしそうに言いながら山を駆け上がる瓜姫。
一方の狐鬼。己の呪文が跳ね返されるどころか電撃を食らう。
「終わりだ」
「死んでもらう」
白装束の二人が嬉しそうに言いながら掌から電撃を走らせる。だが突然白装束の2人の腕や手足が飛ぶ。後ろに鬼面の女と天邪鬼の姿。
エトはびっくりした。あの背丈。もしかしたら……。
(いや、オルは僕と同じ天邪鬼だ。角が無い。よかった。オルじゃない)
「お前が狐鬼だな?」
「そうだ。おれを助けてくれてありがとう」
「いいや、借りを返しただけだ。監視者よ」
どす黒い声で瓜姫が言う。そして瓜姫が鬼面をゆっくりと外す。
「ごめんなさいね。この鬼面を被ると性格まで変わってしまうらしいの」
「あ、ありがとう」
「あ、あの、一緒に旅しませんか?」
「それは出来ない」
「どうして!?」
「万が一君たちが生贄の旅を放棄する事があったら俺が君たちを殺す。俺はそういう役目なんだ。一緒に旅したら情をかけるかもしれない。だから一緒には冒険できない。これは掟なんだ」
そういうと、狐鬼は去っていく
「どうして……」
狐鬼は二人のいないところで面を外し、泣いた。面を外したことで角も生じる。
「くそっ!こんな掟!!」
地面を何度も叩きつける。オルは、狐鬼は慟哭した。だが立ち上がり再び面を付けた。そして小さな祠を見つけるとそこで夜を過ごした。
◇◆◇◆
瓜姫と天邪鬼は宿に入った。明日にはもう和賀に着く。それは瓜姫にとって終わりを意味していた。
「怖くないの?」
「そんなの……怖いに決まっているじゃない」
「私をちゃんと殺さなかったら狐鬼にも迷惑掛かるんだからね」
「わかってるよ」
「今日が私の最後の夜なんだね……」
二人は無言のままやがて別室で寝た。
エトは被りの術の呪文の文句を最終確認してから寝た。




