6話 敗北イベント1
「ここか」
「わたしあの時はこの中に入ってしまって魔物に追いかけられたんです」
村娘が言った。
結局村での情報も得られず、何も思いつかずのまま洞窟の前までたどり着いてしまった。
「でででですから私は帰りたいんですけどぉお」
まあそりゃ魔物に襲われ命の危機にあったのだから当然の反応だ。
「帰らせてもらってもいいですかねえぇ…」
震え声で村娘が言った。
『この子泣きそうだよあいっちぃ』
「俺もかわいそうだと思う」
よし
「置いてくか」
勇者はむちゃくちゃ強いし大丈夫だろう。
そう思って能力を使い、勇者に一人で突入するよう指示を送った。
「…」
「あえ!?」
黙ったままの勇者は再び村娘の腕をガシッとつかんだ。
「あ、あの…私もついていく感じですか…?」
「いくぞ」
「うぇ…うぇえええええええええん!!」
勇者はそう言って泣いた村娘を連れたまま洞窟に入っていった。
「いやいやいやどうしてこうなった!?」
『あのーね、あれなんですわあいっち。たぶん村娘連れてくるのに能力使ったっしょ』
ティーナが腕を組んでそう言った。
「うん」
『能力は〈先に指示されたことを優先する〉特性がありまして…』
「…つまり〈勇者、そこの娘を連れていくと何かあるぞ〉と能力を使ってしまった場合は?」
『何かあるまで勇者は止まらないすね』
「…」
もしかして俺、やっちまった?
『あいっち、やっちまったな』
トゥーナが俺の肩をポンとたたいた。
「ええいとにかく勇者を追うぞ!トゥーナ!」
と言って俺は洞窟の中に入っていった勇者たちを追いかけて走った。
『ごまかしMAXねあいっち、ウケるわ』
こうして俺たちは洞窟の中に入っていった。