鳥かご男と孤独の子供
新シリーズです。短い分「トウキョウ・カクリ」よりは早くアップされるかもです。トウキョウ・カクリが失踪したわけではありません。
富と権力を手に入れた男は死んだ。
そしてここは天国と地獄に分けるための選別所だ。
そこにはここ数日の間に亡くなった人たちが大蛇の列を作っている。
「ねえ」
うしろにいた8歳ぐらいの女の子に声を掛けられた。
(こんな歳の子も、か)
「ねえ。おじさんなんで死んだの? 前は何をやってたの」
男は煩わしいと思いつつも答えた。
「私は不治の病で死んだのだよ。そしてここに来る前はそれなりに有名な会社の社長をしていたのだよ」
「ふぅん。じゃあ社長ならすきなものとか買い放題だったの」
男は哀しそうに答えた。
「それなりにほしいものは買えたが、一番欲しいものは買えなかったよ。それは大体の人が持っているものなのに。実に皮肉じみたことだよ。金がいくらあってもそれは手に入れられないものだからね。ソレを手に入れるためにここまで来たのにこれじゃあ意味がない。ソレが欲しくて必死にもがいていたのに気づいたらこのありさまだよ。会社を辞めようとしたが、私の変えはあいにく効かなくてね。そして無理やりやめたら従業員達を路頭に迷わせることになるから」
(ああ。私はこんな小さな子になんてことを言っているのだろう)
「それじゃあそのほしかったものって」
「自由だ。うちは昔から貧乏でね」
「おじさんばっかに喋らせちゃってフコーヘイだよね。あたしはね、いじめられてたの。そしてそのあたしをいじめてた子に道路に付き押されてこうなっちゃの。あとね…」
そうして女の子は彼女自身のことについて語りだした。それは小さな女の子には耐えられないような話だった。
男は何を話していいのかわからなくなった。
するとその時、男が選別所の職員に呼ばれた。
「ねぇおじさん。最後に名前だけ教えて。」
「普通の名前さーーーーーだ」
女の子は驚いたような顔をしていたが。彼にはどうしてかわからなかった。