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Cafe Shelly

Cafe Shelly 辞めてやる!

作者: 日向ひなた

 理想と現実、これは大きく違うものだ。

 僕の理想、これは一流企業に入り、安定した給料をもらい、そのうち素敵な彼女ができて、結婚をして家庭を築く。こんなことをずっと思い描いていた。

 だからこそ、高校の時に勉強を必死にしてそこそこの国立大学に入り、ここでも勉強を必死に行って、結果的に一流企業と言われる商事会社、四星商事に入社することができた。これから僕の思い描いていた、理想の社会人生活が始まる。僕はそう思い込んでいた。

 が、現実は大きく違った。

「バカヤロウ!きさま、いつまで新人気取りでいやがるんだ!半年も経てば立派な社会人だろうがっ!」

 主任の罵声が僕に飛んでくる。僕が配属されたのは総務部の教育係という部署。ここでは社員教育に対しての手続きや計画作成などを行う。今回怒られたのは、外部の研修講師の方との連絡が遅れてしまい、希望していた日程を確保できなかったこと。

「あれほどさっさと連絡を入れろって言っただろうがっ!ったく、どうしてくれるんだよ」

 確かにこの件については、僕が講師の先生に連絡を入れるのが遅かったのが悪い。けれど「あれほど」なんて言うほど、主任は僕にこのことを言わなかったと思うんだけど。

「でも、結果的にいい講師が見つかったじゃないですか」

 これは僕の言い分。急いで代わりの講師を見つけなければいけなくて、急いでインターネットで情報を集めた。その結果、地元でいい講師が見つかった。最初にアポイントを取ろうとした講師は東京から呼ばなければいけないため、交通費や宿泊費が別途かかるから、結果的に経費も節約できたじゃない。でも、主任はまだカリカリしている。

「結果を言ってんじゃねぇんだよ。お前の仕事のやり方、仕事に対する姿勢、それを俺は怒っているんだよっ!」

 結果を出しているのに怒られる。こんな理不尽なことがあるか。まったく、一流企業である四星商事がこの程度なんだから。かなり幻滅だな。

「ついでに言わせてもらえば、お前は付き合いが悪いんだよ。夏にやった新人の歓迎会。せっかく歓迎してやろうってのに、なんで一次会だけで帰っちまうんだよ。それに酒も飲めねえなんて」

 お酒はそもそも好きじゃない。学生時代に初めて飲んだ時、思いっきり吐いてしまい、それ以降お酒の匂いがするだけで吐き気をもよおすようになった。今は匂いで吐き気はしなくなったけれど、口にすると吐きそうになる。だからお酒は飲んでいない。

「主任、それってアルハラですよ」

 ボソッと、この言葉が口から出てしまった。いや、いつか言おうと思っていた言葉だから、つい口から出たというのは間違い。言いたくて仕方がなかったけれど、いうタイミングがなかっただけだ。今がそのタイミングなのは間違いない。

「アルハラってなんだよ?」

「アルコールハラスメントですよ。僕はお酒が飲めない体質なんです。そんな僕に対してお酒を強要するのは、僕に対してのハラスメント行為です」

 僕がキッパリと言ったからなのか、主任はそれ以上言葉を発さなかった。僕は知っている。この四星商事では、パワハラやセクハラに対してはきちんと対処をしていることを。隣の総務部人事課人事係では、そういったハラスメントに対しての申し立てを受け付けている。まさか隣のデスクでハラスメントが行われている、なんてことになると人事課挙げての問題となる。

 だから「ハラスメントですよ」と僕が訴えれば、立場が危うくなるのは主任の方だ。なので主任はそれ以上言葉を発さなかったのだろう。

 だが、そんな主任を擁護しようとしたのが係長だった。

「梶くん、ちょっといいかな」

「はい、なんでしょうか?」

 係長、僕を別の会議室へと誘導。

「梶くん、前から気になっていたんだけどね。君は何かあるとすぐに『ハラスメントだ』という言葉を使っているよね」

「だって、事実そうじゃないですか。大声で怒鳴られるのってパワハラだと思いませんか?」

「確かに主任はすぐに大声で怒鳴る癖がある。というか、彼は地声が大きいからね。そのことはみんなわかっている。それ以前に、梶くん、君は今回自分がやってしまったことをどう思っているのかな?」

「僕がやってしまったこと?」

「そう。言われた業務なのに、すぐに行動を起こさなかった。これについてはどう考えているんだい?」

「確かにすぐに講師の方に確認の電話を入れなかったことは悪いと思います。けれど、そのおかげで別のいい講師が見つかったじゃないですか。結果オーライだと思いますけど」

「結果のことを言っているんじゃない。君自身の仕事に対しての取り組み姿勢、これを言っているんだ。それに、新しい別の講師が見つかったと言っても、これは君の手柄ではない。最後との砦としていたあの人を使わせてもらった。それだけのことだ」

「でも、あの人を見つけたのは僕ですよ」

「それをさりげなく促したのは誰だったかな?」

 そう言われると黙るしかなかった。

 僕が見つけた講師。それは唐沢さんという人で、実は以前この四星商事でトップセールスをやっていた人だ。今は営業系のコンサルタントとして主に中小企業の指導や研修の講師をやっている。

 この人を見つけたきっかけは、隣の人事係の係長がこんなことを言ってくれたからだ。

「そういえば、前に凄腕の営業マンが独立をして、今は地元でコンサルタントをやっているというのを聞いたことがあるぞ」

 この言葉を聞いて、インターネットで検索をしたら見事にヒットした。早速メールで問い合わせたところ、快く引き受けてくれたのだ。このことを課長に報告したら、こんなことを言われた。

「唐沢さんかぁ。そうか、あの人を使うのか。まぁ仕方ないかな」

 この時はどういう意味かわからなかった。しかし、係長曰く、こんな事情があるらしい。

「唐沢さん、以前はこの会社の営業でトップセールスをやっていた人なんだよ。でも、あることがきっかけで辞めてしまったらしい。だからウチの会社としても、イマイチ使いづらい存在なんだよ」

「あることとは?」

「私も人づてに聞いた話だから詳しくは知らないけれど。どうやら上の方と揉めたらしい。でも、腕はピカイチだということなんだよなぁ」

 上の方と揉めた。なんだ、今の僕と同じような立場で会社を辞めて独立したんだ。ちょっと面白そうな人だな。

 この会社に入ってまだ一年も経っていないけれど、主任や係長からは散々嫌な思いをさせられてきた。理想的な職場を求めて転職、いや独立なんていうのもいいかもしれない。一度、この唐沢さんの話を聞いてみたいものだ。きっと参考になるだろう。

「ともかく、言われた仕事はきちんとやり遂げてくれよ。わかったな」

「はぁ、わかりましたよ」

「はぁ、じゃなくて『はい、わかりました』だろう。返事もきちんとしてくれよ。じゃないと自分の信頼を失うぞ」

 返事一つで何がわかるというんだ。信頼は仕事の結果で得られるものだろう。今度からきちんとやればいいんだ。まったく、先輩社員面して人を指導した気になっているんだから。もっと自由に仕事をやらせろっていうんだよ。

 ともあれ、今進めている研修については主任の指示のもとに仕事を進めるということになった。そして主任からさっそく言われたのが、唐沢さんと会って打ち合わせを進めること。といっても僕が一人でやるわけではない。主任に同行して唐沢さんに会いにいくことになった。僕一人でもできるのになぁ。

「こんにちは、初めまして。四星商事総務部教育係の篠原と申します。そしてこちらが新人の梶です」

 唐沢さんの事務所へ訪問。そして名刺交換の時に僕はそうやって主任から紹介された。僕も名刺交換をする。

「梶ですよろしくお願いします」

「新人くんかぁ、よろしく頼むね。それにしても、四星商事がオレに研修を頼むとはねぇ。よほどのことが起きねぇと、そんなことはないと思ってたけど」

 唐沢さん、すごく気さくな人だな。言葉遣いは荒いところがあるけれど、アウトロー的な感じがして不快どころか好感が持てる。こんなのに憧れるなぁ。

 それから研修内容についての打ち合わせに入った。といっても、話を進めるのは主任であって僕は横でそれを見ているだけ。口を挟む機会がない。

「わかった、それで内容を考えてみるよ。で、オレから一つ提案があるんだけどいいかな?」

「はい、なんでしょうか?」

「この件に対して、今後のやりとりはこっちの新人の梶くんとやってみたいんだけど」

 唐沢さん、突然僕を指名してきた。どういうつもりなんだろう?

「えっ、梶と、ですか?」

「そう。なぁに、四星商事の内部のことはあらかた把握しているから、任せといてよ。ね、いいだろう?」

「まぁ、そこまで言われるのなら梶に任せてみますけど。一応、課長の許可をとりますので」

「人事課長の岩崎だろう。大丈夫、あいつには貸しがあるから。ということで梶くん、よろしく頼むよ」

「はい、わかりました!」

 ワクワクしてきた。この唐沢さんからいろんなことを学べるチャンスだ。僕もいつか、唐沢さんみたいに独立をして一旗あげてやるんだ、という気持ちがふつふつと湧いてきた。

「早速だけどよ、明日打ち合わせやりたいんだわ。今日はこの後用事があるから時間取れないんでね。梶くん、待ち合わせの時間と場所は直接メールで知らせるから。大丈夫だよね?」

「はい、特に予定は入っていませんので。よろしくお願いします!」

 主任の顔はちょっと渋っていた。どうやら僕に任せて大丈夫か、という表情のようだ。けれど、僕は担当講師から直々に指名をされたんだから。自信を持ってこの仕事をやり抜いてやる。そして唐沢さんからノウハウを学んで、さっさとこの会社を辞めてやる!

 こんなパワハラを当たり前のように容認しているところ、大企業だからといって許されるわけがない。せっかくだから、このことを唐沢さんにも報告して、上の方に伝えてもらうことにしよう。

 そして翌日の朝、唐沢さんからメールが届いていた。今日の午後1時に指定された喫茶店へ来てくれ、とのこと。よし、わかった。この件は僕に任されたのだから、昼休み中にこの喫茶店へ行くことにしよう。

 午前中、他の仕事に取り掛かっていると主任から唐沢さんとのことでどうなったのかを聞かれた。

「あ、今日の午後1時に指定された喫茶店で会うことになってます」

「おいおい、なんでそのことを報告しないんだよ。お前、黙って行こうとしていたのか?」

「えっ、いけないんですか?だって、この件は僕に任されたんでしょ?」

「いけないも何も、そういうことは逐一報告するのが当たり前だろう?なに勝手に行動しようとしているんだよ。ったく、常識がねぇなぁ」

 逐一報告って、僕は子供じゃないんだから。仕事は結果で示すものだろう。きちんと打ち合わせをしてから、その結果を報告しようと思っていたのに。主任、仕事のやり方まで押し付けるのかよ。

 よし、このことも唐沢さんにぶちまけてやる。見てろよ、あとで吠え面かくのはそっちだからな。

 お昼休みになり、僕は食事もとらずに喫茶店へと足を運んだ。喫茶店だから食べるものくらいあるだろう、そこで食べればいいかな。

「えっと、ここだな。カフェ・シェリーっと。へぇ、こんなところに喫茶店なんてあったんだ」

 唐沢さんが指示したお店。街中にある路地の中程にある。この路地は時々通るけれど、こんなところに喫茶店があるだなんて今まで気づかなかった。喫茶店なのに、ビルの二階にあるからだな。

 階段を上がり、扉を開く。

カラン・コロン・カラン

 心地よいカウベルの音。同時に漂ってくるコーヒーの香り。へぇ、なかなか雰囲気のいいお店じゃない。

「いらっしゃいませ」

 聞こえてくるのは若い女性の声。髪が長い、綺麗な女性だ。僕のタイプだな。

「いらっしゃいませ」

 少し遅れて、カウンターから渋い男性の声が聞こえる。おそらくこのお店のマスターだな。お店の中をぐるりと見回す。唐沢さんの姿はまだない。約束が午後1時で、今はまだ12時半前だからな。

「お一人ですか?」

「いえ、待ち合わせをしているんですけど。あとでもう一人来ます」

「それならこちらのお席にどうぞ」

 座らされたのは真ん中の三人がけの丸テーブル席。程なくして女性店員がメニューを持ってくる。そこにはずらりとコーヒーの名前が並んでいた。逆に食べ物はサンドウィッチ程度で、ほんのわずか載っていない。

「あの、食べ物ってこれだけしかないんですか?」

「はい、申し訳ありません。ここは純喫茶なもので、あまり手の込んだものは置いてなくて」

 しまったなぁ。カレーとかナポリタンとか、もっとガッツリしたものを食べたかったんだけど。仕方ない、ここはホットサンドでも頼むとするか。

「じゃぁ、このホットサンドと、そうですね、キリマンジャロでお願いします」

 せっかくだからいいコーヒーでも飲むとするか。

「かしこまりました。ホットサンドとキリマンジャロですね。マスター、ホットサンドワン、キリマンジャロワン」

「はい、ホットサンドとキリマンジャロ」

 ここで改めてメニューを見直す。結構たくさんの種類のコーヒーを扱っているんだな。でも、一番のおすすめはこのお店のオリジナルブレンドか。そういうのに限って、大したことないんだよな。やっぱりメジャーなコーヒーの方が安心できるな。

 そもそも、四星商事に入ったのも、メジャーな会社だから安心して働けると思ったからこそなんだけど。まさか、あんなパワハラ上司がいるなんて思わなかった。さらに、会社がそれを擁護する態度を取るだなんて。総務部なんだから、ハラスメントを真っ先に排除するべきだろう。

 そんなことを考えていたら、だんだんと今の会社のやり方の腹が立ってきた。これは是が非でも唐沢さんに訴えなければ。

「こんちはー、マイちゃん、マスター、お久しぶり」

 扉が開くなり、そう言って突然唐沢さんが入ってきた。

「あ、唐沢さん、ご無沙汰しています。羽賀さんはよくいらっしゃるんですけどね」

「マイちゃん、それって皮肉かっ!?」

 唐沢さん、軽く店員さんにツッコミをいれる。どうやらこのお店では唐沢さんは常連客のようだ。

「あ、梶くん、もう来てたんだ。早かったね」

「はい、ここでお昼を食べようかと思って。さっき注文したところだったんです」

「そうか、それならしばらく待った方がいいかい?」

「いえ、唐沢さんにいろいろとお話ししたいこともありますので」

 僕は座ったまま、立っている唐沢さんとそんな会話を交わす。すると唐沢さん、僕の横に座るなりこんなことを話し始めた。

「梶くん、君って常識がないとか、今時の若者なんて言われたりしない?」

「えっ、ど、どうしてですか?まぁ、そういった類の言葉はうちの主任からよく言われたりしますけど」

「だろうなぁ。だから梶くんを指名したってのもあるんだけどね」

「それってどういう意味ですか?」

「まず、確認をしておこう。今回梶くんとオレ、どっちがお客様になるのかな?」

「お客様って言われると、ウチの会社が唐沢さんにお金を払う立場なんですから。だからウチの方がお客さんってことじゃないんですか?」

「なるほど、そういうふうに見たか。じゃぁ、オレがこのお店に入ってきて梶くんに話しかけた時、君はどんな姿勢で待っていたかな?」

「どんなって、今と同じですけど」

「ということは、お客さんってのは相手に対して横柄な態度をとっていいってことかな?」

「横柄な態度だなんてとってませんよ」

「じゃぁ、どうして梶くんは座ったままオレを出迎えたのかな?」

「どうしてって、別にこれがおかしいことだとは思っていませんけど」

「そうか。じゃぁ、オレがお店に入ってきた時、オレの姿はすぐに確認できたろう?」

「はい、唐沢さんが来たなって、そう思いました」

「その時に、梶くんから挨拶をしなかったのはどうしてかな?」

「どうしてって、僕の方から挨拶をしなきゃいけないものなんですか?」

「うぅん、なるほどなぁ。やっぱこういったところから鍛え直さないといけないのか」

 僕には唐沢さんの言いたいことがさっぱりわからない。僕の何が悪いんだろう?

「それよりも聞いてください。この前一緒にいた主任のことなんですけど。僕にパワハラをしてくるんですよ」

「へぇ、パワハラねぇ。どんなことをしてくるんだい?」

 ここで今まで主任が僕にしてきたことを唐沢さんに話した。

「なるほどね、そういうことか。なんとなく読めてきたな。で、梶くんはそれを主任のパワハラだ、と言いたいわけなんだね」

「そうなんですよ。しかも上司はそのことを知っていながら、なんの対策もしようとしないんです。総務部なのに、ですよ。これっておかしいと思いませんか?」

「そうだね、おかしいね」

 唐沢さん、僕の言うことを理解してくれたようだ。ちょうどその時、店員さんが僕が注文したコーヒーとホットサンドを持ってきてくれた。

「お待たせしました。ホットサンドとキリマンジャロです」

「へぇ、キリマンジャロを注文したんだ。あ、マイちゃん、オレはシェリー・ブレンドで」

「はい、かしこまりました。シェリー・ブレンドですね。今日はどんな味になるか、楽しみですね」

「おうっ、今日はちょっと難解な味になりそうな気がするな。ハハハ」

 難解な味って、どういう意味だ?わけがわからないまま、僕はホットサンドをパクッと口に入れる。

「あ、もう食べてるんだ」

「えっ、食べちゃいけないんですか?」

「うぅん、このあたりのことをどう説明すりゃいいんだろうなぁ…」

 僕のやっていることのどこが悪いんだろう。僕はただ、運ばれてきた自分のものを食べているだけなのに。

「梶くんって、食事する前に『いただきます』って言わない方?」

「それそれ、前から思っていたんです。どうしてわざわざそんなこと言わなきゃいけないんですか?海外では『いただきます』に当たる言葉ってないんでしょ。こんな無駄な日本の習慣、やめてしまえばいいと思ってますよ」

「そうか、いただきますは無駄な習慣か…じゃぁ、今食べているホットサンドの中身って何?」

「中身、ですか?えっと、玉子にツナ、それにキャベツを刻んだもの。あとはトマトも入ってますね」

「ということは、梶くんは本来生まれるはずだったひよこの命、海で泳いでいるマグロの命、さらにはキャベツやトマトなど野菜たちの命を口にしているってことだよね」

「ま、まぁそうなりますかね。でも命だなんて大袈裟な。食べられるために生まれてきたんでしょ?」

「それでも命はあるよね。その命をいただくってことには感謝の気持ちは持っていないのかな?」

「感謝の気持ち、ですか。どうしてそんなものを持たないといけないんですか?」

 唐沢さんの言いたいことが今ひとつわからない。食べられるために生まれてきたものに、感謝の気持ちを持てなんて言われても。

「なるほど、わかった。ところで梶くんは四星商事に入って、どんな仕事をしたいと思っているんだい?」

「どんな仕事って、仕事は言われたことをこなしているだけです。それよりも、僕は一流企業に入って安定した給料をもらい、そのうち彼女ができて結婚し、家庭を築く。そのために高校の時から必死になって勉強し、大学もまぁそこそこのところに入ることができて、この四星商事に入社することができたんです。でもガッカリです。さっきも言いましたけど、四星商事がパワハラを許容する会社だったとは。だからこれを世間に訴えて、問題にしてもらって会社を辞めようかと思っています」

「パワハラねぇ…」

 唐沢さん、腕組みをして考え込んでいる。そこに唐沢さんが注文したコーヒーが運ばれてきた。

「お、きたきた。シェリー・ブレンドに答えを出してもらうとするか」

 そう言って唐沢さんはコーヒーを飲んで目をつぶる。そして数秒後、目をパッと見開いてニヤリと笑った。

「梶くん、悪いけどこの仕事降ろさせてもらうわ」

「はぁ?唐沢さん、どういうことですか?」

「どういうことも何も、そういうことだよ。俺は梶くん、君にハラスメントを受けたからね」

「ちょ、ちょっと、僕のどこがハラスメントなんですか?僕は何もしていませんよ」

「そう、何もしていない。それがハラスメントなんだよ」

「どういう意味か、よくわからないんですけど。ちゃんと説明してください」

「だってそうだろう。オレがここにやってきても挨拶もない。打ち合わせの相手を目の前にしても、断りもなしに勝手にメシを食う。オレのことをお客さんだと思ってくれていない。それどころか、仕事の話をする前に自分のことばかり話を始めてしまう。これ、オレに対する完全無視だよね。こういうのは四星商事という企業の名前で、零細企業であるオレに対するパワハラだと思うんだがね」

「そ、そんなつもりはありませんよ。僕はただ自分の話を聞いてもらいたかっただけで。それに唐沢さんのことを無視したつもりもないし」

「でも、オレはそう受け止めたんだよ。だからこのことを梶くんの上司に訴えて、この仕事を降ろさせてもらうことにするよ」

「それは困ります。勘弁してください」

 ここで唐沢さんに仕事を降りられたら、僕のミスになってしまう。これはさすがにまずい。それに、代わりの講師を見つけることなんか今更できない。研修が潰れてしまうじゃないか。

「唐沢さん、僕のどこがハラスメントなんですか?それを教えてくださいよ」

「ということを、梶くんの上司も思っていたんじゃないかな?」

「えっ、ど、どういうことですか?」

「梶くんにパワハラをしたという上司も、今梶くんが感じた思いをしていたってことだよ。自分のどこがハラスメントなのか、それがわからないままいきなり梶くんからパワハラだと言われた。そうじゃないかな?」

「いや、だって明らかにあれはパワハラですよ。大きな声で叱られて…」

「じゃぁ、梶くんは叱られるに値する行為はしていない、というのかな?」

「ま、まぁ、予定していた講師に電話をするのを忘れていたのは事実ですけど…」

「そこを注意された。これに対して何か反論できるかな?」

「いえ、それはありません。僕の不注意ですから。でも、それを大声で怒鳴ることはないでしょう」

「その人、普段から大声で喋る人じゃないのかな?この前一緒にいた人だろう?」

「まぁ、確かに普段から声が大きな人ではありますけど」

「確かに大声で怒鳴られるのは気持ちのよくないことかもしれねぇけどよ。でも、それを突然パワハラだとか言われたら、さすがに困っちまうだろう。梶くん、君がやっている事も同じだぞ。いただきますを言わない、自分から挨拶をしない、自分の非を認めない。なのに自分の正当性をハラスメントという言葉を使って主張する。これはオレから言わせれば、ハラスメント・ハラスメントだな」

「ハラスメント・ハラスメント?」

「そう、何かあるとパワハラだ、アルハラだ、なんて言葉で自分の非を棚に上げて周りの態度を非難する。最近、ハラスメントという言葉に世間が敏感なのに便乗しているだけのように見えるんだけどなぁ」

「いや、そんなつもりは…」

「そんなつもりはない。それもハラスメントをやっている人の決まり文句だよ」

 そう言われると、それ以上反論できなくなった。

「じゃぁ、僕はこれからどうすればいいんですか?」

「どうすればいいと思う?」

「それがわからないから質問しているんです。教えてください」

「だったらその答えをシェリー・ブレンドに聞いてみるといいよ」

「シェリー・ブレンドに聞く?どういう意味なんですか?」

「まぁ、こいつを飲めばわかるよ」

 唐沢さん、そう言って飲みかけのコーヒーを僕に差し出してきた。人の飲みかけのコーヒーを飲め、なんてまさにパワハラ的行為だと思うんだけど。けれど、今の雰囲気では飲まざるを得ない。意を決してそのカップに口をつけた。

 ん、なに、このコーヒー。さっきまで飲んでいたキリマンジャロとは全く違う味がする。これ、本当にコーヒーなのか?

 いや、確かにコーヒーの味。なんだけど、心の奥に素直にスーッと味が入っていく。うん、素直に味を受け止められるっていう感じ。なんの抵抗感もない、この素直さ。

 素直、か。そういえば僕は何に抵抗していたんだろう。自分の意に反することに対しては、とことん反抗を繰り返してきた気がする。親の言うこと、先生の言うこと、友達の言うこと。確かにそれも正論なんだろうけれど、自分はそうは思わない。そういったことに対しての周りの助言に対しては、今までとことん反抗してきた。あたかも自分の言うことが正論であるかのように。

 でも、心の奥ではわかっていたんだ。僕が考えていたことが間違いだってことは。素直になれなくて、つい反抗的な態度をとってしまう。いつしかそうすることが、僕の人生では当たり前になっていた。

「どうだい、どんな味がしたかな?」

 唐沢さんの言葉で、ハッと我に返った。そうだった、今は喫茶店にいるんだった。

「これを飲んだら、自分の素直じゃないってところが頭に浮かんできました。あれ、なんでだろう。このコーヒーを飲むと、妙な感覚になります」

「だろう、これがこのお店のコーヒー、シェリー・ブレンドの魔法なんだよ」

「魔法?」

「そう、こいつは飲んだ人が今欲しいと思っているものの味がするんだ。人によってはその光景を頭の中に思い浮かべる人もいるんだぜ。オレもさっき、梶くんに対してどう対処するかを考えたときに、こいつに答えを教えてもらったんだ」

「あ、それであんな感じになったんですか」

 シェリー・ブレンドの魔法か。にわかには信じられなかったが、今僕が体験した通りだ。これは確かに魔法のコーヒーだな。

「で、梶くんは最初にどんな味を感じたんだい?」

「えっと、このコーヒーの味が心の奥に素直にスーッと入ってきたんです。そこから抵抗感がないってことが頭に浮かんで。そうしたら、今まで僕がいつも何かに対して抵抗していた姿を思い浮かべました。自分の考えが間違っているとわかっていても、相手と考え方が違うと抵抗してしまう」

「間違っているって、自分でわかっているんだ」

「あ、でも…」

 唐沢さんからそう言われると、つい反論したくなる自分がいる事に気付いた。けれど、今回はその反論をあえて抑えてみた。

「どうしてそんなふうになってしまったのか、何か思い当たることってあるかな?」

「どうしてって、子供の頃からこんな感じでしたから。親からも、お前は口ばっかりだって言われていました。でも、そうしないと自分が責められるようで怖いんです。僕は何も悪くないのに、周りが僕を責めてくる。周りが僕を…」

 このとき、閉ざされていた蓋がポンっと開くように、小学生の頃の僕が思い浮かんできた。

「あれは小学二年生の時だったかな。先生が僕に言ったんです。花瓶を割ったのは君だろうって。確かに花瓶が割れたときに僕はそばにいた。花瓶に触ったのは僕だ。けれど、僕は悪くない。だって、僕を突き飛ばしたのは友達なんだから。けれど、周りは僕が花瓶を割ったんだって言って、先生は僕が突き飛ばされたことを信じてくれなかった。だから、僕は反論した。僕は悪くない、僕は…」

 思い出したことが独り言のように口から飛び出してくる。あの時の光景が、話せば話すほど鮮明に思い出されてくる。

「そうか、梶くんもそんな辛い時があったんだな。だからつい、今は自分を守るために自分の意見を押し通そうとしてしまうんだな」

「そうかもしれません。でも、僕は悪くなかったんです。だから、だから…」

「うん、子供の頃の梶くんは悪くない。じゃぁ、今もそうなのかな?」

「いえ、今は違います。僕が悪いところもあるんです。研修を依頼した講師に電話をするのを忘れていたのは僕です。でも、そのことをそんなに責めなくてもいいじゃないですか。結果的に唐沢さんという人を見つけられたんですから」

「結果が良ければ、全てよし、ということかな?」

「そうじゃないんですか?」

「じゃぁ、頑張っても結果が出ていない人は、世の中から認められないということになるのかな?」

「そりゃ、結果が出なければ認められないですよね」

「では梶くんは、入社してから今までどんな結果を出してきたんだい?」

「えっ、そ、それは…」

 そう言われて、僕が今までやってきた仕事の結果を考えてみた。確かに言われた仕事はそれなりにこなしてきた。けれど、そんなのは誰がやってもできるようなことばかり。今回、やっと初めて担当として任されたというくらいだから。

 僕は結果を出していない。

「確かに結果は出していません。けれど、自分の思いや考えを主張する権利はあるんじゃないですか?」

 苦し紛れの言葉だ。と同時に、この言葉を口にしたときに少し希望が見えてきた。そうだよ、自分の思いや考えを主張する権利は誰にだってあるはずだ。だから僕がやってきたことは間違いではないはず。

「そうか、権利か。その前に梶くん、君は自分がやるべきことをやらなければいけないという義務は果たしたかな?」

「義務、ですか?」

「そう。よく自分の権利を主張する人はいるけれど、それはやるべきことをやるという義務を果たした人だけが手に入れることができるものだ。日本国民には三つの義務があるの、知っているかな?」

「三つの義務、ですか?えっと…」

 聞いたことはある。けれど、それが何なのはさっぱり頭に浮かばない。

「教育の義務、納税の義務、そして労働の義務だ。オレはこう思うんだよね。国のやり方に批判をするのは構わない。けれど、この三つをきちんとやっていないのに国のやり方に批判をするのは言語道断。まずはやるべきことをやってからにしろ、ってね。で、梶くんは会社できちんと労働の義務を果たしていると言えるのかな?」

 何も言い返せない。

「会社に不満がある。これはどこに行っても同じだよ。オレもたくさんの企業をコンサルしてきたけど、どんなに優良企業と言われているところでも、必ず問題点はあるからね。まぁオレがいろんな企業を見てきた中でも、四星商事は良い方だと思うよ。確かに、つい感情的になって怒鳴っちまうヤツはいろんなところにいるよ。梶くんがそれを『パワハラだ!』と騒ぐのも、そいつらと対して変わらない行為だということも認識しておいた方がいいかな」

 僕がパワハラだと言い出すこと、これは感情的になって怒鳴ってしまうことと同じ。そう言われたのはショックだった。けれど、それも事実なのは確かだ。僕がそうやって言い出すときは、怒りの感情が高まっているときだから。

「じゃあ、僕はこれからどうすればいいんですか?」

「その答えはさっきもう見つけたんじゃないかな?」

「さっきって、このコーヒーを飲んだ時のあれですか?」

「そう、あれ」

 あれ、とは素直になること。相手の言葉を素直に受け止めること。これが今の僕がやるべきことなのか。

「でも、つい反論してしまう自分が抑えられないんです。これはどうすればいいんですか?」

「相手の意見に反論はしてもいいんだよ」

「えっ、反論してもいい?」

「そう、ただしやり方がある。まず相手の言葉をしっかりと最後まで、否定せずに聴くこと。その上で『なるほど、そうなんですね。それについて自分はこう思っています』というようにこちらの意見を伝える。この言い方をすれば、お互いに冷静になって意見を伝え合うことができるんだ」

「最後まで否定せずに聴く。その上でこちらの意見を伝える。なるほど、そうすればいいのか」

 このやり方を聞いて、なんだか安堵感を感じた。これなら僕にもできそうだ。

「それともう一つ、いやもう二つほど梶くんには意識をしてもらいたいことがある」

「なんでしょうか?」

「まず『でも』という言葉を使わないこと。おそらく大声の主任さんは癖で梶くんに怒鳴るような口調で指導をすると思う。この時に言い訳として、つい『でも』を使ってしまうんじゃないかな」

「あ、確かにそれはあります。でも…」

「ほら、今出た。この『でも』というのは自分を守ろうとする時に、つい出てしまう言葉なんだよ。これは相手を拒否する言い方になってしまう。この言葉をぐっとこらえて、相手にの言葉を飲み込んでごらん。そして『でも』を使わずに自分の思いを伝えるんだ」

「でも」という言葉を使わない。これは意外に難しそうだ。けれど、ここを我慢すれば自分の意見を言える。なんだか勇気が湧いてきた。

「それともう一つ、安易にパワハラという言葉は使わないように。さっきも言ったけど、これは上司を責め立てるハラスメントになってしまうからな」

 でも、とつい言いそうになった。ここはその言葉をグッと我慢して、一呼吸置いてから自分の意見を言う。

「わかりました。もし本当にパワハラを受けた場合はどうすればいいんですか?」

「そうだな、それが本当にパワハラに当たるかどうかを第三者に判断してもらうことも必要だ。四星商事には、ハラスメントを受け付ける専門の部署があるはずだろう?」

「はい、隣の人事係でそれをやっています」

「そこに相談するんだ。しかもこっそりとね。あまりにも大きく騒ぎ立てると、逆に梶くん、君が不利になることもあるからね」

「どうしてですか?」

「もしそれがパワハラでなく、単に梶くんのワガママだと思われてしまうという事もある。例えば…」

 そう言って唐沢さんはタブレットを操作し、とあるネットの記事を見せてきた。それを読むと、これは確かにひどいというケース。ワガママにしか見えない。

「こうやってパワハラだと騒ぎ立てると、自分が不利になると思わないか?」

「…確かにその通りだと思います。何でもかんでも、騒ぎ立てればいいというものじゃないんですね」

「梶くん、まずは周りの言葉に素直になってみよう。それでもおかしいと思ったらオレに話してくれ。その上でどう人事係に言えばいいのかをアドバイスしてあげるよ」

「ありがとうございます」

 なんだか僕の中の憑き物が落ちた感じがした。僕は今まで何をやっていたんだろう。もっと自分がやるべきことをやる。その上で理不尽だと思ったことを訴えるようにしないと。

 その後、きちんと唐沢さんの研修の話を終えて会社に戻った。

「おう、唐沢さんとの打ち合わせ、どうだった?」

 僕の姿を見て、主任がニコニコしながらそう言う。

「とてもいい打ち合わせができました。おかげでなんだかスッキリしました」

「おいおい、スッキリしたって、何を打ち合わせてきたんだよっ。まぁいいや。で、どんな感じだ?」

 僕は本題の打ち合わせについての報告を主任にした。すると主任、さらにニコニコしながら僕にこう言ってくれた。

「いいじゃない。よし、これでいこう。今回はお前に任せてよかったよ。ご苦労さん」

 主任って、こんなに人をほめてくれる人だったっけ?いや、違う。今まで自分がほめられるに値する行動を行っていなかっただけだ。ちゃんと仕事をすれば、きちんとほめてくれる人だったんだ。

 なんだか気分がいい。あれだけこの会社を辞めようと思っていたのが、ウソのような感じがする。

「あ、梶くん。ついでにこの資料を明日までにまとめておいてくれないか」

 この時、一瞬「明日までかよっ!」と思ったが、ここは素直に受け止めなければと思い直し

「はい、わかりました」

と口にしてみた。昨日までの僕だったら、間違いなく「えぇっ、明日までですかぁ?」と口にしていただろう。けれど、素直に「はい」と言ってみて、案外気持ちの良いものだってことに気づいた。早速言われた資料のまとめに入った。

 すると面白いもので、案外スムーズに仕事が運ぶ。おかげで明日までと言われていたものが、夕方には仕上がった。

「主任、これ頼まれていた資料です」

「えぇっ、もうできたの?梶くん、仕事早いじゃない。すごいね」

 主任、フロアの人みんなに伝わるくらい大きな声で僕をほめてくれた。とても気持ちがいい。この人やっぱり元々声が大きな人だったんだ。改めてそれがわかった。

 僕がパワハラだと叫んでいたこと。これを今更ながら恥ずかしく思う。主任は僕のことをきちんとほめてくれる。僕が勝手に思い込んでいただけのこと。

 これからは心を入れ替えて、まずは自分のやるべきことをやらないといけない。その上で、本当にパワハラだと感じたら、それはきちんと訴えるべきところに訴えてみよう

「梶くん、なんか最近変わったよね。すごくたくましくなったって気がする」

 しばらくして、同期入社の連中と食事をする機会があった。これは会社がそのような計らいをしてくれている。その時に同じ総務部に配属された女性から言われた言葉だ。

「えっ、僕何か変わった?」

「うん、前は自分の気に入らないことがあったら、すぐに反抗的な目をしていたって感じがするの。でも今はすぐに『はい』って返事をして仕事に取り掛かるでしょ。なんかそれを見てカッコよくなったなぁって思うよ」

 そう言われるとまんざらでもない。辞めてやるって言っていた自分が恥ずかしくなってきた。これも唐沢さんのおかげだ。

 ちなみにあの喫茶店、カフェ・シェリーにも時々足を運ぶようになった。悩んだ時には、魔法のコーヒーにお世話になる。僕の人生、これから楽しくなりそうだ。


<辞めてやる! 完>

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