英雄になれなかった君に捧ぐ
――君は太陽だった。
常に僕の前を歩き、進むべき道を照らしだす標だった。
英雄になる〝運命〟をその身に宿し、誰もが待ち望んだ明るい未来を切り開く希望の存在。
幼い頃から君は才覚に溢れ、誰からも好かれ、将来は光り輝く未来が待ち受けるはずだった。
……でも、そんな未来は君には訪れない。明るく希望に満ちた君の未来を僕が奪ってしまったから。
人類の希望である英雄。誰もが待ち望んだ君の未来を平凡な存在に過ぎなかった僕が掻き消してしまった。
後悔はいつまでも止まず、いつだって悪夢が僕を苛む。
あの時、あの場所で、僕が別の選択をしたのならば……。
歴史にその名を刻むはずだった君の未来を奪うことなく、ただの孤児の一人として幼い生涯に幕を閉じることができたのならばと。
――アレン。
孤児であった僕に何一つ態度を変えることなく初めて出会ったその時から友達として接し続けてくれた君と過ごしたあの日々は、今も色褪せることなく僕の胸の内にまるで宝石のように光り輝き続けている。
未来はわからないと言う人もいるだろう。だが、僕にはわかる。君ほどこの世界に必要とされていた人はきっといなかった。
〝早世の英雄〟
もしも君が成長して、成し遂げるはずだった偉業は僕になど到底できやしないだろう。
けれど、そんな言い訳を口にして、人々が、世界が得るはずだった希望を奪った僕はその生涯を賭けて善行を成しても償いきれないほどの罪がある。
だから、誓おう。他でもない君に。僕にとって唯一人の英雄である君に。
「英雄になれなかった君に捧ぐ」
この世界に平穏を。君の命を奪った魔族に――復讐を。