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剣と魔法が飛び交う異世界
この世界には人間、エルフ、獣人、ドワーフそして魔族が住む
そして人間が呼び出した勇者と魔族の長である魔王が最後の戦い
そこは魔の森、スライムからドラゴンまでさまざまな魔物が住む森。そこは人間はもちろん魔力を多く持つ魔族でさえ立ち入らない場所
そんな場所で彼らは戦う
「はぁ、はぁ、はぁ次で決めてやる」
「ほざけ、ならば返り討ちにしてやる」
両者同時に魔法の詠唱を唱える
【我は望む、闇を照らす焔、混沌を打ち消す炎よ、我が元に来れ!】
【闇よ、光さえ呑み込む闇よ、敵は我が前にいる、全てを喰らい、全てを破壊せよ!」
詠唱が終わり同時に展開する
【 聖なる炎のや(ホーリーフレイムジャベ) … 】
【 全てを呑み込む(ブラッホー) … 】
そこに
「グルルルルッ!」
「「!」」
狼の魔獣が現れたしかも1匹ではない、群れで
それを見た2人は互いに向けあっていた魔法の方向をかえ
【リン!】 【ル!】
狼の魔獣の群れに向かい放った、それは相手を倒すため限りなく魔力を込めた魔法、普通の魔獣ならばここで倒されていたであろう。しかし、ここは『魔の森』普通の魔獣であるはずがない
その魔獣たちは「「「アウォーーーーーーン」」」と同時に遠吠えのように鳴き始め魔法陣を生成する
「な!」 「なんだと!」
勇者と魔王の魔法を打ち消し、さらに追加の魔法を向けてくる
「こんな魔獣までいるのか……」
目の前の事態に諦めたのか勇者はぼやく、それを聞いた魔王も
「はは、さすがは『魔の森』魔族の長である我でさえあれは防げん…」
持っている武器を外しうなだれる、そうしている間にも魔法陣は形成され発動する
発動までの間、2人は最後の会話をする
「なぁ、魔王」
「なんだ、勇者」
「もし、争いがなかったら友好でいられたかな」
「無理だな、世界は争いで満ちている。そんな浅はかな考えなどとうの昔に捨てた」
「は、ははそうか。なら最後に1つだけいいか?」
「なんだ」
「もし、俺が勇者でなくただの人間で魔王がただの魔族だったなら……友達になっていたかな?」
「……ッ」
魔王は『そんなこと有り得ないだろう!』と反射的に言いかけたが堪える。それは魔族の長としての意見、魔王自身の意見ではない。そして魔王は
「……なっていただろうな」
それを聞いた勇者は驚いたような顔になった
「そっか…」
それが最後の言葉、2人の目の前で魔法陣は完成した。リーダー格である白銀の狼の魔獣が「ウォーーーーン」と鳴き魔法が放たれる
「こらーーー!お前ら何してる!」
「「「「キャインッ!」」」」
ことはなく突如聞こえた人間の声に驚いた狼たち
草むらから20歳ぐらいの成年が現れ狼たちに怒鳴る
「こんなところで遊んでるんじゃなねー!」
「クゥーーーン」
そこに白銀の狼が申し訳なさそうに成年に近づく
「なになに……」
狼に耳を傾ける仕草をしながら現状を把握出来ていない勇者と魔王を見る
「なるほど、あいつらがここを争うとしたから排除しようとしただけか」
「ウォン!」
と頷く狼。そんな狼に成年は頭を撫で始める
「それはよくやったぞ。えらいえらい」
「クゥーーーン♩」
尻尾をこれでもか言えるほど振り回す
周りにもいた狼たちも撫でて欲し欲しそうに成年に近づく
成年は狼たちを撫で始めるが
「だがな、魔法はダメだぞ。あんな魔法を打ったらこの場所がダメになっちまうからな」
そう軽く注意すると再び撫で始める
「よーし、よし」
「「………」」
10分後
「よしよし、ワプッ」
顔を軽く舐められる成年
「「……」」
30分後
「よしよし、っとこれくらいでいいか」
ようやく撫で終わり
「よし、帰るぞ!」
「「「ウォン!」」」
成年たちは帰り始める
「「ちょっと待てい!」」
そこで傍観していた勇者と魔王はツッコムのであった