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黒い竜の物語  作者: 緋翠
15/63

追憶

 

(……黒竜……)


 聞き慣れた声――いや。かつては聞き慣れた声が、彼を呼ぶ。


(今日からそれがお前の名だ。黒竜……我ら一族の長として誇り高く生きてくれ)


 もう昔の話だ。

 彼は、それが夢である事を知っていた。

 声の主が自分を呼ぶ事は、もう――ない。


(……じぃちゃん……)


 目映い光が視界を閉ざす。

 それだけですべての記憶を奪うような光――

 その先に何があるのか、彼は知っていた。

 何度も夢に見た、最後の日の記憶。


     ◆◇◆◇◆


「…………」


 黒竜は目を開いた。

 その目に青空が映る。

 空はどこまでも高く、澄んでいた。


「……な~んで、今更こんな夢見てんだろ」


 気の向くまま散歩をしていたら、見晴らしの良い場所に出たので、弁当を食べた黒竜は、そこにころりと寝転んだ。

 どうやらいつの間にか眠っていたらしい。

 黒竜はゆっくり立ち上がる。

 忘れていた訳ではない。ただ、夢に見る事は無くなっていた。


「……ったく。あいつらがいつまでもくだらん理由で喧嘩ふっ掛けてくるからだ」


 黒竜は嘆息混じりに毒づいた。

 こんな夢を見た原因は十中八九、あのホワイトドラゴンのせいだ。

 ――とはいえ。今更、あの程度の事で揺らぐというのもおかしな話ではある。

 愉快な出来事でないのは間違いないが。

 黒竜は、やや激しくかぶりを振り、


「あ~あ! こんな時は美味いモンたらふく食べるに限るっ!」


 そう言って、近場の街へ足を向けた。



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