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黒い竜の物語  作者: 緋翠
13/63

認識 6

 

 子供達は、黒竜の尻尾をぺしぺし叩く。


「……もぉーいい?」


 ゆらゆらと尻尾を動かしながら、黒竜は疲れた様な口調でそう言うと、サッと尻尾を引っ込めた。


「ああっ!」


「引っ込んじゃった」


「はい、終わり終わり」


 黒竜は立ち上がると、


「――さてと。俺様はそろそろ失礼するとするかな」


「えーっ!? 兄ちゃん、もう行っちゃうの?」


「もっと遊んでよ!」


 子供達は黒竜にしがみつく。

 黒竜は、ぽんぽんと子供達の頭を叩き、


「また今度な」


「うー……今度っていつ?」


「今度は今度だ」


 黒竜は虚空を見詰め、


「そだな……お前らが生きてたら遊んでやるよ」


「何ソレ」


 黒竜は笑顔で告げる。


「長生きしなきゃダメだぞ♪」


 そう言うと、黒竜は子供達に軽く手を振ってから歩き出した。


     ◆◇◆◇◆


「待って下さい!」


「ん?」


 村の出口に来て、引き止める声があり、黒竜は振り返る。

 黒竜を呼び止めたのは、グレイグの妻――メアリだった。


「おや。奥さん」


「あの……これ」


 と、メアリが手渡したのは弁当。


「良かったら食べて下さい。こんな事しか出来ないんですけど……」


 弁当を受け取って、黒竜は笑った。


「これは有り難い♪ 遠慮なく頂きます♪」


「助けてくれてありがとう」


「いや、何。当然の事をしたまで♪」


「道中気を付けて。また村に寄る事があったら、是非家に寄って下さい」


「あんがと♪」


 黒竜は大きく手を振って村を後にした。


「……行ったか」


「ええ……」


 木の影から、グレイグが姿を見せた。

 メアリは頷き、


「なんだか不思議な人だったわね……いえ。人じゃないけど」


「そうだな」


 ただ恐怖の対象でしかなかった魔物。

 竜族は、その最たるモノだった。

 強大な魔力と知力。

 彼らからすれば、人間など塵にも等しい。

 だが少なくとも、あの黒い竜は他の魔物とは違うように思えた。

 単なる気まぐれだったのかもしれないが。


「また来るかしら?」


「さぁなぁ……」


 メアリの肩を抱き、グレイグは黒竜の去って行った方を見詰めた。


「気が向けば来るかもな。また腹空かせてさ」



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