認識 6
子供達は、黒竜の尻尾をぺしぺし叩く。
「……もぉーいい?」
ゆらゆらと尻尾を動かしながら、黒竜は疲れた様な口調でそう言うと、サッと尻尾を引っ込めた。
「ああっ!」
「引っ込んじゃった」
「はい、終わり終わり」
黒竜は立ち上がると、
「――さてと。俺様はそろそろ失礼するとするかな」
「えーっ!? 兄ちゃん、もう行っちゃうの?」
「もっと遊んでよ!」
子供達は黒竜にしがみつく。
黒竜は、ぽんぽんと子供達の頭を叩き、
「また今度な」
「うー……今度っていつ?」
「今度は今度だ」
黒竜は虚空を見詰め、
「そだな……お前らが生きてたら遊んでやるよ」
「何ソレ」
黒竜は笑顔で告げる。
「長生きしなきゃダメだぞ♪」
そう言うと、黒竜は子供達に軽く手を振ってから歩き出した。
◆◇◆◇◆
「待って下さい!」
「ん?」
村の出口に来て、引き止める声があり、黒竜は振り返る。
黒竜を呼び止めたのは、グレイグの妻――メアリだった。
「おや。奥さん」
「あの……これ」
と、メアリが手渡したのは弁当。
「良かったら食べて下さい。こんな事しか出来ないんですけど……」
弁当を受け取って、黒竜は笑った。
「これは有り難い♪ 遠慮なく頂きます♪」
「助けてくれてありがとう」
「いや、何。当然の事をしたまで♪」
「道中気を付けて。また村に寄る事があったら、是非家に寄って下さい」
「あんがと♪」
黒竜は大きく手を振って村を後にした。
「……行ったか」
「ええ……」
木の影から、グレイグが姿を見せた。
メアリは頷き、
「なんだか不思議な人だったわね……いえ。人じゃないけど」
「そうだな」
ただ恐怖の対象でしかなかった魔物。
竜族は、その最たるモノだった。
強大な魔力と知力。
彼らからすれば、人間など塵にも等しい。
だが少なくとも、あの黒い竜は他の魔物とは違うように思えた。
単なる気まぐれだったのかもしれないが。
「また来るかしら?」
「さぁなぁ……」
メアリの肩を抱き、グレイグは黒竜の去って行った方を見詰めた。
「気が向けば来るかもな。また腹空かせてさ」




