第6話 ―神崎 空人 part2―
今回は少し長いです!最後まで飽きずに読んでくださったら嬉しいです。
1
「み…美鈴ちゃん!」
俺が恥ずかしさを消し、やっとの思いで美鈴ちゃんに向かって叫ぶと、さっきまで俺に顔をうずくませていた美鈴ちゃんが顔を上げた。
「えーと…何があったか教えてくれない?」
本当は「離れてくれない?」と言いたかったけれど、弱っている美鈴ちゃんの目を見てしまうとそんなキツイ言葉を言う気も失せてしまった。
「…いいけど…このままでいてくれるなら。」
美鈴ちゃんの声が、すごく震えている。何があったか話してくれるのは嬉しいけれど、ずっとこのままでいるのも…。今せりなとかが来たらどうするんだよ…。
美鈴ちゃんは一回深呼吸をしてから話してくれた。
「…今日も、おとなしく家にいたの…。でも、外から女の子二人の声が聞こえてきて…。楽しそうな二人を見て、つい会話を聞きたくなって、こっそり窓側にいたの。『サッちゃん』『かりん』と呼び合う二人の会話は…せりなさんの悪口だったの。その時の二人の会話によると、せりなさんはどっかに行っちゃってたみたいで。私、思わず外に出たの。そしたら、『ピピピピピピ』ってブザーが鳴って、怖くなったけど中に入ろうとはしなかった。せりなさんを悪く言う人は、許さないから。それで、私…思わず言ったの。」
「…何て?」
そういえば美鈴ちゃんは、美鈴ちゃんにとって大切な人を悪く言う人とは、いつも戦ってたな…。
俺と美夢を悪く言うやつがいたんだけど、いつも美鈴ちゃんが守ってくれてたな…。
「『…せりなさんのいい所、何にも知らないくせに!』って。でも、言い返されて…いじめの事を思い出して怖くなっちゃって…。」
「それでも、せりなを守った美鈴ちゃんはすごいよ…。せりなは、誰よりもいいやつだって、俺もわかってる…。」
俺の言葉に、美鈴ちゃんが大きくうなづいた。―と。
「私がなんだって?」
「…ヒェ!」
なんと、せりなが俺たちの前に現れた。
2
「『もうここに来れない』とか言って、美鈴ちゃんを泣かせたやつは誰だよ?何でここにいるんだぁ~!」
俺の絶叫が、森にこだました。
「それより、二人って…そういう関係!?」
「?…あ!」
ほら…だから言っただろ…美鈴ちゃん。あ、でも、言ってはないか。
「違うって!誤解だ~!」
「そうなのぉ?ま、今日はそういう事にしとこ。」
せりなはこういう爽やかな性格だから、楽だよな。
美鈴ちゃんは、やっと俺から離れてくれた。
「で?何でお前がここにいるんだぁ~!?」
「話せば長いけど。話して欲しい?」
「そうに決まってんだろ?」
美鈴ちゃんは、無言でうなずいている。
「じゃ、話すね。私、二人の友達…サッちゃんとかりんと、秘密基地を作っている合間にちょっと家に忘れ物を取りに行ってたの。戻って来たら、二人がポカンとした顔でボーッと立っていて。『何かあったの!?』って言ったら『私立西園寺学園の制服を着た女の子が、せりなの事助けてくれた』って言われて…何があったかは教えてくれなかったかったけど。その女の子って、絶対、美鈴さんの事だ!って思って。でも、あれ?いつも制服じゃなかったよね。今も。」
「あ、外に出る時は、いつも着替えてるの。でも、その時は着替えることより、せりなさんを助けたくて、着替えるとか、頭に無かった。」
そういえば、美鈴ちゃんの制服姿、見たこと無かったな…。
「そうなんだ…。やっぱり、美鈴さんが助けてくれたんだよね?」
「うん、そうだよ!私って、気付いてくれて、ありがとう。」
「ありがとうって、言うのはこっちだよ。」
「美鈴ちゃんは、せりなみたいにここに来れなくなっていたのに、俺にヘルプを求めてここにきたんだぜ。二人が会えたの、すげーことだと思う。」
「えっそうなんだ?私、何も知らなくて…。」
「俺だって知らなかったよ。でも、美鈴ちゃんのお母さんは、厳しい人だし。きっと、何かあったんだって、俺は薄々気づいてたよ。さっきの、『外出たらブザー鳴った』っていうのも、そういうことだろ?」
「うん!そらくん、当たり!」
美鈴ちゃんが、はにかむような笑顔になった。
「二人に、伝えたい事があるの。」
せりなが言った。
な、何だ?また、美鈴ちゃんを泣かせるようなこと言うんじゃないか?
でも、口を開こうとするせりなの顔は、笑顔だ。―という事は。
「二人とも、かりんとサッちゃんの出るバレエの発表会に来ない?」
「え!?」 ―つづく―
第7話の主人公を、また悩んでいます。二人や三人のリレーにも挑戦してみたいです!リクエストがありましたら、送ってください~。