第3話 ―水野 美鈴 part1―
ついに美鈴さんが主人公に!
空人!?くんの秘密も明らかに!
最初から、予感はあった。あの男の子が、空人くんじゃないかって。でも、ずっと言えなかった。そらくんが、私の事忘れてるんじゃないかって、怖かったから。
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「…俺の名前、『空人』なんだけど。」
「えーっ!?」
やっぱり、そらくんだった。私の、知っている男の子だ。
「俺は神崎空人。花里小の五年。父親と二人暮らし。以上。」
そらくんは早口で、私達に自己紹介した。私の事を、思い出してもらいたい。
と、私が自己紹介をする前に。
「ちょっと待て。さっき、お前、みれい…って言ったよな。もしかして、…水野美鈴!?」
そらくんが、私に気付いてくれた。せりなさんは、その様子をポカンと見ている。
「そらくん…。そうだよ!私、水野美鈴。…やっと会えた!」
私は、一気に泣き出してしまった。
「わー。ちょっと言いにくいんだけど、私は松の木小学校の五年、松井せりな…。二人って、知り合いだったの!?」
せりなさんが、ためらいがちに言った。
泣き止んだ私を見て、そらくんが私に目配せしてきた。きっと、「説明しろ」って意味なんだろうなぁ。
「さっき、『幼稚園の時の友達と公立行く予定だった』…って言ったよね。その幼稚園の時の友達が、そらくんと、…美夢ちゃんで。でも、あれ?『父親と二人暮らし』って…。お母さんは!?美夢ちゃんは!?」
「ちょっと待って。…み…ゆめちゃんって?」
せりなさんが、またためらいがちに言った。
「そらくんの、双子のお姉さんだよ。」
「おい、美鈴…ちゃ。やべぇ、癖が残ってる。今、『そらくん、って呼ぶのやめろ』って言おうとしたけど、…やっぱ許す。」
「それより、みゆちゃんは?って、癖出ちゃったけどいい?」
そらくんに会えたなら、みゆちゃんにも会いたい…。
「もう、美夢は家に居ない。…両親が、離婚したんだ。美夢は、…母さんについて行った。俺は…父親に。去年の事だ。でも、美夢は、…美鈴ちゃんに会いたいって、母さんについて行ったんだった。もったいねえな。ここに残って、俺と一緒にここに来てたら、美鈴ちゃんと会えたのに…。」
そんな。そんな事って!私も、ずっと、みゆちゃんと、そらくんを、探していたんだよ…。さっき泣いたばっかりなのに、嗚咽が止まらない。
と、黙っていたせりなさんが、口を開いた。
「会えなくても、同じ空を見ているよ。」
「え?」
そらくんと私は、同時に顔を上げ、せりなさんを見た。
「この空は、どこまでも、果てしなくつながっている。だから、その、みゆめ?ちゃんも、今この空を見ていたら、隣で一緒に道端に咲いているお花を見るのと、同じだと思う。」
…やっぱり、せりなさんはすごい。
「そうですね、せりなさん。私、せりなさんの言葉を聞くと、笑顔になれる…。」
そう言いながらも、涙が止まらない。
「もう、敬語はやめよう。そらと?くんも、私の事、『せりな』って呼んでいいから。あと、さっき教えた呪文。」
せりなさんに続いて、私は叫んでいた。
「そうだ!『辛い時は、空と!松井せりなさんが応援してる』。…そらくんも、私の事、応援してくれてる?」
「…まあな。」
そらくんはきっと、さっきの話も聞いていただろう。
「ありがとう。やっぱり、せりなさんは、本当にすごい!」
「いえいえ。これは偶然だから。…あと。」
だんだん日が暮れて来た。
せりなさんは、おちゃらけて、そして、言った。
「私、もうここに来れない!」
「…え?」 ―つづく―
次回の話は、お楽しみです!楽しみにしていてください。