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キミと同じ空を見ている  作者: 林 琴美
第1章 ―3人+1人―
2/20

第2話 ―松井 せりな part2―

 今回はせりなちゃんが頑張って、あの2人の秘密、今回は特に女の子の秘密がわかってきますよ!

 せりなちゃんのセリフに、自分で書いていてグッときました。

「せりな、毎日つくろうよ!ね?」

「うん。」


  1


「はぁ…。」

 ホント、どうしよう?あれから、放課になって、なんかなりゆきまかせで「うん。」って言っちゃって、毎日やることになっちゃったんだっけ?ホント、困るよ~。とりあえず、今日『空の秘密基地』に行ったら、あの2人に話しかけてみよう!なんて、心の中で、誓ったつもり、なんだけどね…。



  2


「あっ、こ…こんにちは。」

 『空の秘密基地』に着いて、男の子に挨拶してみた…つもり。

「…。」

 一瞬、男の子が、こっちを見た気がしたんだけど、気のせい、だよね…。

 少し気まずい沈黙が続く。早く女の子来て~!なんて心の中で叫んでいたら、やっと女の子が来た。

「あっ…こんにちは!」

 私はとっさに、女の子に向けて、そう言っていた。

「…え?」

 やっぱり、シャイな子だ~。失敗、した?

「あっ。こんにちは。」

 なんと、私に挨拶を返してくれた!やだ、嬉しい…。

 ヤバい。涙出そう。だって、この1年間、毎日隣にいたけれど、話せなかった子と今日、やっと話せたんだもの。

 私は泣きそうになった時、いつも空を見る。その涙が今のように、嬉し涙であっても、悔し涙であっても、悲しい涙であっても。

 ほら、空って、いつも一期一会でしょ?雲の形、量、空の色。丸い、ボールみたいに見える空。いつも、その瞬間によって違う空。まるで、私の心のように。果てがなく、どこまでも広がり、何よりも大きく強く、優しい空が、私は大好き。

 二人も、そう思いながら、空を見ているのかな?

と、そんな私の心が通じたのか、

「あの、空って、いいですよね。」

女の子が声をあげた。

「そうだよね?えーと…。あ、私は松の木小学校の五年生、松井せりなです。よろしくね。」

「みれいです。水野美鈴みずのみれい私立西園寺学園しりつせいおんじがくえんの、五年生です。」

「わっ!あそこって、超有名な、お嬢様学校じゃないですか!それにイニシャルもモテてモテて困っちゃうのm.mじゃないですか!なんでそんなお嬢様が、ここに?」

「…。」

 美鈴さんが、何を話していいかと悩んでいるかのように、苦笑いしていた。

「あっ、ごっごめんなさい!私、お嬢様とは話した事なくて。えーと、私の家は至って平凡で…。」

「私も。でも…。」

「…でも?」

 美鈴さんの顔が、いつも空を見ている時の悲しい顔に変わった。

「…ほとんど、お母さんのせいなの。本当は、幼稚園の時友達だった子と同じ、公立の小学校に行く予定だったの。でも、公立になんか行かせられない、私立に入れるって…。お母さんが。」

「そうなんだ…。」

 私、勝手に私立に憧れていた。でも、美鈴さんのように、『私立』で苦しんでいる子もいたんだ…。

「実は、お母さんは公立の小学校で昔、いじめに遭っていたらしいの。だから娘に同じ思いをさせたくないって…。私立に。」

 いじめ…。

「でも、私の学校は公立だけど、いじめなんて1つもないよ?」

 私の口から、とっさにこの言葉が出ていた。

「そうなの。私、実は…。私立の学校で、いじめに遭っているの。だから、公立の子に、憧れてた…。中学は、エスカレーターでそのまま行くんじゃなくて、公立の中学に行こうと思ってる。だから、今は、必死に空を見て、気持ちを紛らわせようとしてるの。ごめんね、こんな話して…。」

「いいよ!」

 私は必死に、美鈴さんに向けてそう叫んでいた。

「私、毎日ここに来る理由はね、美鈴さんと話したかったっていうのもあるけど、一番は、何よりも空が好きだからなの。空を見ると、気持ちが穏やかになるの。だから、ここに来れば気持ちがリセット出来る。明るくなれる。でも、空だけじゃ、足りない時もあるんだよ。」

「え?」

 美鈴さんが、目を潤ませながら顔を上げた。

「誰かに頼っていいんだよ。気持ちを爆発させて、いいんだよ。ほら、今みたいに、泣いていいんだよ。辛い時に、人に遠慮する必要は無い。」

「うん…。うん!」

 美鈴さんが、泣きながら、言ってくれた。

「美鈴さん、これだけは覚えておいて。『辛い時は、空と松井せりなが応援してる。』はい、どうぞ!」

「…『辛い時は、空と松井せりな…さんが応援してる。』」

「そうそう。辛い時の一番の薬は、笑顔なんだよ。ほら、この呪文を唱えたら、笑顔になれたでしょ?」

「…うん。ありがとう。うち、1人っ子なんだけど、私が私立行ってるから、両親が共働きで、…今も家に居なくて。だから、私がここに居るってことは、内緒にしておいてくれる?」

「もちろんだよ!」

 美鈴さんと、出会えて良かった。2人でその後も話していたら。

「おい、何かさっき、『そらと』って聞こえたけど?」

 なんと、あの男の子が、話しかけてきた。

「え…。あ、この美鈴さんのおまじないだよ!」

「えーと…。『辛い時は空と松井せりなさんが、応援してる。』でしたよね?」

 男の子は、『空と』と言った時だけピクッと反応して、そして、言った。

「俺の名前、『空人そらと』なんだけど。」

「えーっ!」  ―つづく―

 次回は、水曜日~になると思います。

 空人!?くんの秘密がわかりますよ!

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