第2話 ―松井 せりな part2―
今回はせりなちゃんが頑張って、あの2人の秘密、今回は特に女の子の秘密がわかってきますよ!
せりなちゃんのセリフに、自分で書いていてグッときました。
「せりな、毎日つくろうよ!ね?」
「うん。」
1
「はぁ…。」
ホント、どうしよう?あれから、放課になって、なんかなりゆきまかせで「うん。」って言っちゃって、毎日やることになっちゃったんだっけ?ホント、困るよ~。とりあえず、今日『空の秘密基地』に行ったら、あの2人に話しかけてみよう!なんて、心の中で、誓ったつもり、なんだけどね…。
2
「あっ、こ…こんにちは。」
『空の秘密基地』に着いて、男の子に挨拶してみた…つもり。
「…。」
一瞬、男の子が、こっちを見た気がしたんだけど、気のせい、だよね…。
少し気まずい沈黙が続く。早く女の子来て~!なんて心の中で叫んでいたら、やっと女の子が来た。
「あっ…こんにちは!」
私はとっさに、女の子に向けて、そう言っていた。
「…え?」
やっぱり、シャイな子だ~。失敗、した?
「あっ。こんにちは。」
なんと、私に挨拶を返してくれた!やだ、嬉しい…。
ヤバい。涙出そう。だって、この1年間、毎日隣にいたけれど、話せなかった子と今日、やっと話せたんだもの。
私は泣きそうになった時、いつも空を見る。その涙が今のように、嬉し涙であっても、悔し涙であっても、悲しい涙であっても。
ほら、空って、いつも一期一会でしょ?雲の形、量、空の色。丸い、ボールみたいに見える空。いつも、その瞬間によって違う空。まるで、私の心のように。果てがなく、どこまでも広がり、何よりも大きく強く、優しい空が、私は大好き。
二人も、そう思いながら、空を見ているのかな?
と、そんな私の心が通じたのか、
「あの、空って、いいですよね。」
女の子が声をあげた。
「そうだよね?えーと…。あ、私は松の木小学校の五年生、松井せりなです。よろしくね。」
「みれいです。水野美鈴。私立西園寺学園の、五年生です。」
「わっ!あそこって、超有名な、お嬢様学校じゃないですか!それにイニシャルもモテてモテて困っちゃうのm.mじゃないですか!なんでそんなお嬢様が、ここに?」
「…。」
美鈴さんが、何を話していいかと悩んでいるかのように、苦笑いしていた。
「あっ、ごっごめんなさい!私、お嬢様とは話した事なくて。えーと、私の家は至って平凡で…。」
「私も。でも…。」
「…でも?」
美鈴さんの顔が、いつも空を見ている時の悲しい顔に変わった。
「…ほとんど、お母さんのせいなの。本当は、幼稚園の時友達だった子と同じ、公立の小学校に行く予定だったの。でも、公立になんか行かせられない、私立に入れるって…。お母さんが。」
「そうなんだ…。」
私、勝手に私立に憧れていた。でも、美鈴さんのように、『私立』で苦しんでいる子もいたんだ…。
「実は、お母さんは公立の小学校で昔、いじめに遭っていたらしいの。だから娘に同じ思いをさせたくないって…。私立に。」
いじめ…。
「でも、私の学校は公立だけど、いじめなんて1つもないよ?」
私の口から、とっさにこの言葉が出ていた。
「そうなの。私、実は…。私立の学校で、いじめに遭っているの。だから、公立の子に、憧れてた…。中学は、エスカレーターでそのまま行くんじゃなくて、公立の中学に行こうと思ってる。だから、今は、必死に空を見て、気持ちを紛らわせようとしてるの。ごめんね、こんな話して…。」
「いいよ!」
私は必死に、美鈴さんに向けてそう叫んでいた。
「私、毎日ここに来る理由はね、美鈴さんと話したかったっていうのもあるけど、一番は、何よりも空が好きだからなの。空を見ると、気持ちが穏やかになるの。だから、ここに来れば気持ちがリセット出来る。明るくなれる。でも、空だけじゃ、足りない時もあるんだよ。」
「え?」
美鈴さんが、目を潤ませながら顔を上げた。
「誰かに頼っていいんだよ。気持ちを爆発させて、いいんだよ。ほら、今みたいに、泣いていいんだよ。辛い時に、人に遠慮する必要は無い。」
「うん…。うん!」
美鈴さんが、泣きながら、言ってくれた。
「美鈴さん、これだけは覚えておいて。『辛い時は、空と松井せりなが応援してる。』はい、どうぞ!」
「…『辛い時は、空と松井せりな…さんが応援してる。』」
「そうそう。辛い時の一番の薬は、笑顔なんだよ。ほら、この呪文を唱えたら、笑顔になれたでしょ?」
「…うん。ありがとう。うち、1人っ子なんだけど、私が私立行ってるから、両親が共働きで、…今も家に居なくて。だから、私がここに居るってことは、内緒にしておいてくれる?」
「もちろんだよ!」
美鈴さんと、出会えて良かった。2人でその後も話していたら。
「おい、何かさっき、『そらと』って聞こえたけど?」
なんと、あの男の子が、話しかけてきた。
「え…。あ、この美鈴さんのおまじないだよ!」
「えーと…。『辛い時は空と松井せりなさんが、応援してる。』でしたよね?」
男の子は、『空と』と言った時だけピクッと反応して、そして、言った。
「俺の名前、『空人』なんだけど。」
「えーっ!」 ―つづく―
次回は、水曜日~になると思います。
空人!?くんの秘密がわかりますよ!