俺、ご主人様始めました。
「た、たすけて…ください」
目の前には奴隷の少女がいた。
全身あざだらけの黒髪の少女だった。
「立てるか?立てれなかったらおんぶはするが」
「おねがいします…」
奴隷少女は軽く、栄養のある食事はさせられていないのだろう。
しかし、困ったことに俺には泊まる場所がない。
困ったな…
「すーすー」
俺の背中で少女は寝ていた
「くそっこうなりゃ意地でも探してやる!」
俺は少女をおぶって闇の中を走っていった。
街の奥の方に古い時計塔があったので今日はそこで寝ることにした。
残念ながらご飯は無い。最悪の状況だ。
この時計塔、中に小さな部屋があり、工具箱の中になぜかランタンとマッチと油があった。明かりがあるのが唯一の救いだった。
「すーすー」
少女の寝顔を見ていた俺は見とれていた。
「くそっかわいいじゃねえか…」
あのムチで叩かれていた時のあの表情の無い、悲しげな顔を思い出すたびにそう思えてくる。多分俺とはそんなに歳離れてないだろうな。
ためしにほっぺたを指でつついてみる
「んーんー」
あかん、萌え死ぬ。
生まれて16年恋愛経験の無い俺にこの反応は流石に殺しにきている。
薄着一枚の彼女がとても寒そうなので俺のパーカーをそっとかけてあげた。
「俺も寝るかぁ…」
そして俺は眠りについた。
翌朝、彼女はまだ寝ていた。
「まだ寝てるのか、よほど疲れたんだな。」
とりあえず朝飯の確保をするために俺は街に出た。
料理丁、かなりの人で賑わっていて、道の両端がすべて料理屋だった。
のぞいてみるとみたことのない料理がずらっと並んでいる。
道を歩くたびにおなかがすいてくる。
でもいまの俺には金が無いのでとりあえず仕事を探す。
「あのーすいません」
「いらっしゃい!何名様で?」
「いえ、違うんです実は仕事を探してまして…」
仕事を探していることを伝えると店主は皿洗いをやってくれと俺に言い、皿をおしつけてきた。
まあ、日本にいた時に俺はずっと皿洗いのバイトをしてたからな、こんなもんお安い御用だ。
2時間後、店主が俺のところにきた。
「もう降りてもいいぞあんちゃん、良い皿洗いっぷりだなあ!ほら金だ」
「ありがとうございます」
良い皿洗いっぷりとは…
しかし2時間だけの仕事か?速すぎるんじゃないのか。
まあいい、とりあえず給料を見るか。
中には金貨一枚が入っていた。
この世界の通貨がどんな価値を持っているか知らないのでとりあえず貰っておくことにする。
「あんちゃん明日もくんのか?」
「店長さんが良いなら…行きます」
「じゃあまた明日な!」
そう言われ、俺は店を出た。
もうお昼だろうか。
二人分の食事を買おうと思い、肉を焼いている店の前に立つと遠くあの金髪の男が兵士をつれて人々に何か言っている。どうせあの少女のことだろう。
「すいません、このお肉2つください。」
「あいよ、3銀貨ね」
「どうぞ、」
俺は金貨を差し出す。
「じゃあ7銀貨のおつりね、どうもありがとう。」
なるほど金貨一枚=銀貨10枚って訳か。
俺は肉を二つ受け取ると少女が寝ている時計塔に向かった。
「おはよう」
「お、おはようございます」
少女は起きていて、なにやら俺に言いたげな表情だ。
「これ、お昼ご飯」
俺はそういって肉を差し出すを彼女は受け取り、一生懸命食べている。
全部食べ終わった彼女は泣いていた。
「わたしっ…こんなおいしい食事は7年ぶりでっ…ありがとうございます…」
「喜んでくれてうれしいよ。」
「はいっ」
彼女は満面の笑みで答えてくれた。
俺が食べ終わった時、彼女は俺の目をみて話しかけてきた
「あの…お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「カエデって名前だよ、君は?」
「私はレディアと申します…」
「あのっ!」
レディアは自分の名を言ったとたん俺に聞いてくる
「私…これ以上ご主人様にご迷惑をおかけしないように出て行きます、失礼かもしれませんが私は追われている身なので」
彼女は震えていた、きっと意を決して言ったのだろう
その前にいまレディアは俺のことご主人様って言ってなかったか?
「だめだレディアここから離れたらまたあの金髪野郎に捕まってしまう。だから行かないでくれ」
「でも…」
「行かないでくれ」
「はい…」
彼女が出て行ったらまた彼女がひどい目に遭うだろう。
それだけはなんとしても避けなければ。
レディアは頬を赤く染めながら
「ありがとうございます…ご主人様…」
と言ってきた お、おうふ…かわいすぎる
上目遣いが俺を刺激してくる。
「とっ!とりあえず服買おう!服!な!男物の服着てもあれだから買おう!」
とりあえず目標をまとめておく。
1、レディアの服を買う
2、食料の確保
3、街を出ること。