侵入
ここからちょっと楓君がダークになっていきます。
グロ表現は抑えていますが、体勢が無い方はあまりおすすめしないです。
細い道を俺は走り抜ける。
肉切包丁をどういう意図で持ち出したかはただの脅しではない。
俺はこの世界に来て前の世界では感じなかった怒りが今、溢れている。
レディアは痛みつけられ、俺の事を話していなかった。
話していたら今頃時計塔にやつらの仲間が俺を殺しに来るだろう。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す
頭の中は殺すという言葉でいっぱいだった。
もちろん人を殺した事の無い俺だ。
普通の時なら殺したら俺は震えて動けないだろう。
だが、俺は。
恐怖より、怒りの方が胸の中では大きかった。
許さない。痛みから解放した彼女をまた痛い目に合わせるなんて。
絶対に殺す。全員。
今までで感じた事の無い感情。
それは俺を強く動かした。
「ここか」
そこには石レンガで作られた大きな家が建っていた。
高さからして2階立てだろう、地下には監獄がある。
レディアがいるとしたら監獄だ。
家は木の柵で囲われており、鉄線は無かったので難なく進入できた。
玄関には糞野郎が2人
腰にムチと短刀がぶら下がっている。
今にでも殺したいが、流石に返り討ちにあうので気持ちを落ち着かせる。
なんだこの感情は、殺人鬼じゃないのか?俺。
家の後ろまで来ると、木のハシゴが倉庫の下で横たわっている。
このハシゴで二階に侵入するか。
「お、おも…」
2階まで到達するほど大きいハシゴで、かなり重量があった。
だがそんな事は気にしていられない。
ハシゴを2階の窓に設置し、ハシゴを上る。
どうやら鍵が無く、簡単に開けることに成功した。
二階の廊下を壁から覗くとどうやら中の警戒は薄いらしく、誰かがいる気配がなかった。
3つ部屋が並んでいる。
誰一人としてここから生きて返さない。
ここでばれてしまったら俺は死ぬ。
大人に勝てるわけが無い。
背後からだ。
ゆっくり静かに殺す。
そういえば昔ステルスゲームやってたなあ。
あの主人公がかっこよくってたまらなかったっけ。
一つ目の部屋を空けると壁についている火が小さく燃えていた。
糞野郎共が3人ベッドで寝ていた。
正直少し震えていたが、俺は包丁を持ち、一人ずつ包丁で刺していく。
俺の手と包丁が血で染まっていく。
俺は初めて、人を殺してしまった。
どうやら兵士共は寝ていて、家の警戒はかなり薄かった。
あれから俺は2階の掃除と1階の掃除をしていった。
人を殺すのに抵抗は無くなっていた。
一番最悪な感情だった。
人を殺すのに抵抗を感じない。
1人の少女を救う為に、16歳で俺は殺人鬼と化していた。
2階、1階を見て回ったが、どこにもレディアはいなかった。
しまった、拷問をする為に残しておくべきだった。
でもまあ、残す所は地下だ。
ゴスペル、絶対にお前は殺す。
地下の階段を下ろうとすると、外から声が聞こえた。
「そろそろ交代だな、しっかしゴスペルの野郎、アラガス様が出かけている時にあの生き残りの奴隷を見つけるとは、運がわりぃなあ」
やはりゴスペルはあの商人の仲間だった。
玄関前の2人の兵士をすっかり忘れていた俺は慌てて壁に隠れ、出てくるのを待つ。するとすぐに兵士達が家に入り、俺のいる反対側の廊下の部屋の前に行く。
「おーい!交代だぞー?まったく、熟睡してんのか。」
2人が部屋の中に入ると俺は行動を開始した。
「おーい、起きろー?」
「まったく、おきねえ奴らだな」
2人の兵士が兵士を起こそうとしているが、その男はもう死んでいる。
「早く起こしてくれよー?俺はゴスペルの様子を見てくるー」
「りょーかい」
ちなみに部屋のたいまつは消している為、俺は部屋の中が分からない。
すると1人の男が部屋を出てくる。
俺は男の背後を取ると静かに包丁で刺し殺した。
「まったく、部屋の明かりはつけとけよな」
中にいる男は自分のポケットの中にあるマッチを取り、ろうそくに火を灯す。
ろうそくに火がついた瞬間俺は包丁を立てて男に向かって走る。
「!なんだおまぇ」
これで残るはゴスペルだけ。
この屋敷の連中が寝ていて本当に助かった。
もし起きていたら俺は殺されていただろう。
「ありがとう神様」
こんな殺人鬼を導く神様はいないと思うが。
気づけば俺の手、パーカーは真っ赤に染まっていた。
もう後戻りは出来ない。
頼むレディア、生きていてくれ。
そして俺は包丁を構えながら階段を下り、決着をつけに行った。
ブックマーク5件ありがとうございます。
これからも頑張ります。




