第一話 リドル
リドルはとても元気な子だった。しかし,内面はいつも人を下から見下し
ている男の子であった。リドルは毎日の生活がただ,ただ同じような事の
繰り返しのように思えてきた。リドルは中学二年生だった。
彼に話しかけてくる友達もいた。 彼は周囲から一目置かれる存在にいた。
彼自身も,「自分は勉強は並の上だし,運動神経だってすぐれている。
スタイルだっていいし,おかしな顔だってしていない。性格だって猫かぶってりゃ
わかりゃしない。」と、そんなふうに自分はすぐれた人間なんだ と思っていたの
であった。 それと同時に彼は自分以外の者は,下らぬ「物」としかみていなかった。
とくに彼は大人が嫌いだった。 自分自身,「大人になんかなりたくない。」って思った。
おとなは矛盾している,おとなは大人のふりして大人じゃない,おとなはすぐ子供にあたる。
そしておとなは,自分の子供の時の気持ちをわすれてしまう。 忘れた大人は,
子供の気持ちを分かってくれないんだ…
そんなふうに彼は常に,「大人」という完全のような…、いや不完全な
生き物を軽蔑していた。
しかし、リドルは最近感じていた。自分も大人に近つ゛いてきている
ということを。
リドルは,毎日の楽しさ,ただ、楽しさ を求めていた。 昔は楽しかった。自分も周りも子供だったから。 何も気にしなくてもいい,現実なんてものは大人になってから分かれば
いいんだから… と思っていたのに。 いまじゃみんな周囲は大人である。
そしてなにより,周りが大人に近つ゛いているのがとても嫌い。 しかし,もっと嫌いなのは
「大人になりたくない」という考えを自分は持っているのに,自分は子供のようにするには,
「強制的」でなければできないのであった。