ハロウィン・レクリエーション
最近は日本でもハロウィン行事が行われ、その日が近づくにつれて関連商品が並ぶようになっている。
しかしながら、クリスマスですらほぼ平常運転な一般的な会社では、ハロウィンの日などはただの平日と同様、従業員は会社で仕事をするだけである。
ここ、波呂院商会でも、季節の行事に関してはほとんど関心がなく、行事があっても平日通りの仕事内容を行っていた。
それどころか、仕事に関係ない行事ごとは、基本的には禁止とされていた。
例えば、誕生日やバレンタインデー、ホワイトデーの際のプレゼントは、就業中に渡してはいけない、と言った具合だ。
ハロウィンの日の前日、波呂院商会の社員は、あまりにも行事がなく、暗くなりがちな職場状況を打破すべく、ハロウィンでイベントを起こそうと考えていた。
この会社では、レクリエーションやイベントごとをする場合、会社の業績や仕事効率に関連させなければならない。例えば、社員の歓迎や、感謝を込めての歓送迎会は認められている。また、会社の有志が集まったスポーツクラブは、他社との交流や社員の精神衛生向上を目的として許可されている。
しかし、このような定型的な物以外で許可を取るのは、なかなか難しい。業績アップや仕事効率の向上につながるような、客観的な資料が必要になるのだ。
そこで社員たちは、他の会社の知り合いにどんなイベントをやっているかを聞いて回った。また、それでそこの社員は楽しめているのか、仕事の効率はどうなのか、といったことを調べた。
十月も終わるある日、社員の一人ナナコは、部長にハロウィンレクリエーションの提案を持ちかけた。
「部長、ハロウィンは何か、社員が楽しめるようなことをやりたいと考えているのですが」
「ハロウィン、ねぇ。それは、社員にとって仕事を進めるうえで、役に立つことなのかね?」
「はい。夏のお盆休みが終わると、そこから長い連休が取りづらくなります。もちろん三連休はありますが、九月末から十月初めまでは忙しいので、社員の気が休まりません。そこで、ハロウィンを期に、社員をリフレッシュさせ、作業効率を上げる目的で、ちょっとしたイベントを行おうというのです」
「それで、作業効率はどう変わるのかね?」
部長がそういうと、ナナコは資料を一部、手渡した。
「他の会社でも、なんらかのイベントを定期的に行うことで、社員の作業効率が上がるというデータが出ています。S社に至っては、ハロウィンイベントを行う前と後で、毎年契約件数が三十パーセントほど違うという結果も出ています」
「なるほどねぇ」
部長は、資料に目を通しながら、ふむふむ、と頷いた。たしかに、毎年何かしらのイベントの後は、イベントの前に比べて契約件数が増えたり、残業時間が減ったりと、作業効率が上がったりしているというデータが並んでいる。
「わかった。とりあえず今年はそのイベントをやってみようか」
「ありがとうございます」
部長の承認を得ると、ナナコは早速社員たちに伝えた。
十月三十一日、ハロウィンイベント当日。部長は何があるのかと楽しみに社内を見ていたが、一向に何か起こる気配がない。たしかに、許可したのは今日だ。
昼休みが終わっても何も起こらないので、仕方なく部長は自室で仕事をすることにした。
すると、就業時間間近になって、社員たちが部長の部屋に押しかけて来た。
「部長、Vacation and Salary, or Strike!(休暇と給料くれないと仕事さぼるぞ!)」
新レーベル「 」文庫さんでは、現在いろんなイベントを通じて知名度を上げようとしており、ハロウィンイベントもその一環として行われました。
私も参加しましたが、さすがにレベルが高い作品が多く、投票では1票だけという結果に(汁) さすがに1位を取る作品ではありませんでした。
次回はクリスマス・新年イベント。今回も同様に、ショートショート形式で行きたいと考えています。