第1事故 白雪姫
おやまの台詞は『』、他メンバーは「」です。
おやま視点で物語は進みます。
『じゃあ今日は、白雪姫やりますよ〜』
「それなら憩ちゃんが主役の白雪姫よね!」
「和、勝手に決めるものではないよ。他にやりたい人がいるかもしれないだろう?」
兄・旭の言葉に、和は不満げに頬を膨らませる。
「そんなこと言って。本当はお兄様だって、憩ちゃんの白雪姫が見たいでしょう?」
『いや本人の希望も聞けや』
「夕梨、白雪姫やりたいか?」
「ううん! 私は小人の役がいいな!」
恋人である漣の問いに、夕梨は笑顔で答える。
実は白雪姫やりたいけど……なんて、遠慮は微塵も感じられない。
本当に小人役がやりたいのだろう。
「夕梨が小人なら俺も小人だな!」
「漣さんも小人! 一緒に頑張ろうね!」
「おう! 俺に任せとけ!」
ただ単に一緒の役がいいだけだろう。この筋肉だるま。
「ぼたんは白雪姫をやりたいかい?」
「いえ、私はあまり目立たない役がよいのですが……」
「それならお兄様とぼたんちゃんも小人でいいじゃない!」
兄とぼたんの配役を勝手に決めようとする和。
そんな彼女を見て、朔夜が口を開いた。
「おい、勝手に決めんなよ」
「あら! 朔夜くんはどうする?」
「別に何でもいいよ。やりたくねぇし」
「もう! せっかく盛り上がってるのにどうしてそういうことを言うのかしら」
盛り上がってるのは一部だけだ。
なんなら主役が未だ登場すらしていない。
『いこちゃんは白雪姫でいいの?』
「はい! 私でよければ頑張ります!」
「……頑張らなくても、憩なら大丈夫だよ」
「ありがとう、千歳さん! 千歳さんはなんの役?」
「……なんだろうね」
やっと登場したんだから、2人とももう少し主張してくれないか?
主役が和になってるんだが……。
「あら、千歳くんは王子様でしょう?」
「……え? 僕がですか?」
「他に適任いねぇしな」
「そうだね。王子は千歳でいいかな」
和・朔夜・旭の同意により、千歳が王子役に決まった。
『じゃあ残りは、継母と鏡と狩人ね。どうする?』
「継母は和でいいだろ」
「ちょっと朔夜くん!! どうして私なの!?」
「他に適任いねぇだろが」
「どういう意味よ!!」
「はいはい、喧嘩しないよ」
揉め始めた2人を、旭が止める。
「では、私が継母役をやりましょうか」
「いや、ぼたんはそういうタイプではないだろう? せめて鏡にしないかい?」
「ちょっとお兄様? 私はいいの!?」
「和には合っていると思うよ」
「どういう意味よ!!」
『あの、これ大体1500文字くらいで収めたいんだ。このままだと話進まないからさ』
配役を決めるだけで、もう1000文字以上使っている。
これではまともな物語にはならないだろうな……。
「進まねぇから和でいいだろ」
「嫌よ!!」
「じゃあ誰がやんだよ……」
「それなら私がやりますよ!」
憩がとびきりの笑顔で手を上げる。
配役なんてなんでもいいから、さっさと決めて進めたいのだろう。
「いこ、お前は白雪姫にしろ」
「どうして? だって誰もやりたくないんでしょ?」
「ダメよ憩ちゃん! あなたは白雪姫をやるの、いいわね?」
「では、誰が継母役をやるのですか?」
全員が和と思っているだろうが、誰も口には出さない。
漣と夕梨に至っては、もはやこちらの話を聞いてすらいない。聞けや。
「……それなら、継母役は無しでいいのでは?」
「なるほど、それなら平和的に解決するね」
『はい? それだと話進まんのだが?』
何を言ってんだ、千歳と旭は。
「いいわねぇ! そうしましょう!」
「じゃあもういいな」
継母役をやらずに済んだ和も、やっと話がまとまった朔夜も安堵の表情を浮かべる。
「じゃあ、始めようか」
『いや、何をだよ。始まんないんだよこれじゃ……』
こうして、継母に命を狙われることもなく、自然に惹かれあった2人。
白雪姫のいこちゃんと王子様の千歳は、仲良く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
——いや、どんな話だよ。
こんな短編集です(・8・)




