第4スピン。乾燥した戦場を「水」で支配せよ
読んでいただきありがとうございます!
乾燥した陸上では、水滴である主人公の感覚はガタガタ。
ですが、彼には運命を捻じ曲げる「固有スキル」があります。
「水に触れていれば視える」というルールを、最悪の形で敵に押し付ける第8話。
第4スピン、開始です!
視界は最悪。音もろくに聞こえない。
村を焼く熱気が、俺の表面をじりじりと焦がし、感知をさらに狂わせていく。
目の前には、どす黒い魔素の塊――『ブラッド・ウルフ』の群れ。
そいつらが牙を剥き、俺という「不審な水滴」を噛み砕こうと跳躍する振動が伝わった。
(……来るか。だが、この乾燥した空気の中じゃ、マトモに狙いもつけられねぇ)
俺は、脳裏に浮かぶ黄金の円盤に、全ての魔素を叩きつけた。
『固有スキル(ユニークスキル)【運命輪】、第4スピンを開始します』
回れ。
この「乾いた世界」を、俺のフィールドに書き換えろ!
盤面が高速で回転する。
一瞬、針が『自爆』をかすめて冷や汗が出たが、無理やり念じて引き剥がす。
そして、針が吸い込まれたのは――。
『固有権能:濃霧展開を獲得。――即時発動します』
ドォォォォン……!
俺の核を中心に、爆発的な勢いで「真っ白な霧」が噴出した。
それは瞬く間に戦場を飲み込み、燃え盛る村の火を抑え、狼たちの視界を奪っていく。
(……視える。完璧に「視える」ぞ!)
辺り一面に満ちた濃い霧。それはすべて、俺の体から生み出された「水」だ。
「水に触れていれば視える」という俺の特性にとって、この霧の中は水中も同然。
360度すべての敵の動きが、骨格の動き一つまで、水中以上の解像度で脳裏に流れ込んできた。
右から一匹。
俺は霧の中に溶けるように移動し、ナマズの鱗を纏った鋭い「水の棘」を射出した。
ギャンッ!
悲鳴が上がる振動。
霧を媒介にした俺の感覚に、死角はない。喉元を正確に貫いた。
「次だ」
狼たちは、突然現れた霧と、姿なき死神にパニックを起こしている。
俺は霧と同化し、重力を無視して地上を滑るように加速した。
今の俺は、捉えられない死の雫だ。
群れの中で一番大きな魔素の反応――リーダー格の狼が、焦れて咆哮を上げた。
そいつが飛び上がった瞬間、俺は自分自身を「巨大な水の矢」へと変形させる。
「逃がさねぇよ。この霧の中は、全部俺の体だ」
霧を通じて捉えた敵の心臓目掛けて、俺は一直線に突き抜けた。
静寂。
霧の中に転がっているのは、十数匹の『ブラッド・ウルフ』の死骸だ。
(さて、陸上での初メシだ。……期待してるぜ?)
『エクストラスキル【変幻捕食】を発動します』
俺の透明な体が、ドロリと形を崩して狼の死骸へと覆いかぶさる。
ナマズの時とは違う、獣特有の荒々しい魔素が俺の核へと流れ込んできた。
ずるり、と。
霧が晴れる中、俺は死骸の山を「霧」ごと飲み込み、喰らい尽くしていった。
読んでいただきありがとうございました!
第4スピンの当たり目は『濃霧展開』。
視界を奪うだけでなく、霧そのものを「感覚器官」にするという人外チートです。
狼たちを瞬く間に片付け、そのままエクストラスキルで捕食!
次回、第9話。
狼を喰った主人公に、陸上用の「新しい形」が生まれます。
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