強襲、スペシャリスト。運命を回す「第六回転」
読んでいただきありがとうございます。
いよいよ第1期完結(第20話)の1話前となりました。
スペシャリスト級の圧倒的な力を持つ魔腐犬に対し、メグルが挑むのは「力」ではなく「運」。
そして、運すらも自らの手でねじ伏せる新技【第六回転】。
メグルの執念が導く、一発逆転の結末をお楽しみください!
魔腐犬の群れを掃討し、勝利の咆哮を上げようとした三傑の動きが、一瞬で凍りついた。
森の奥から、腐敗した大気を切り裂くような「黒い衝撃」が飛来したからだ。
「……ぐっ!? この重圧……ただの残党ではないな」
真っ先に反応したシュヴァルツが、槍を盾にして衝撃を受け止める。
だが、自慢の金剛鱗に守られた彼の腕が、ミシミシと悲鳴を上げた。
土煙の中から現れたのは、これまでの魔腐犬とは放つプレッシャーの次元が違う、三体の異形。
その体は腐敗を通り越し、どす黒い魔力の鎧を纏っているかのようだった。
『個体識別:魔腐犬の変異個体――【スペシャリスト(特化権能者)】級と推測』
脳内に響くシステムの声が、非情な実力差を告げる。
奴らはミュータント(変異種)とは魂の純度が違う。一つの能力を極限まで研ぎ澄ませた、本物の怪物だ。
「……ほう、ただのコボルトが我が一撃を防ぐか。だが、次は通さぬぞ」
中央に立つ、巨大な角を持つ魔腐犬が低く笑う。
奴が動いたと思った瞬間、シュヴァルツの盾が、紙のように易々と切り裂かれた。アザミの空間瞬歩すら、その圧倒的な反射速度の前では捉えられ、フェンリスの魔素捕食は触れることさえ叶わない。
圧倒的な「格」の差。
三傑が跪き、エルナが震える。
そんな絶望的な戦場の中央へ、俺はぷかぷかと、一粒の「泡」の姿のまま漂い出た。
「ハハハ! 逃げ遅れた水滴か? 貴様がこの村の主だというのか?」
魔腐犬が鼻先で俺を嘲笑する。
まともにやり合えば、一瞬で弾け飛ぶだろう。力で勝てないのは、俺が一番よく分かっている。
(……ああ。まともにやって勝てる相手じゃねぇ。……だからこそ、『賭け』させろよ)
俺は核の奥底にある権能を、無理やり引きずり出した。
新スキル【銀弾】に、俺の全ての運を乗せる。
『特殊派生スキル発動。――【デッド・オア・アライブ・ルーレット】を開始します』
俺の周囲に、蒼く輝く巨大なルーレットの盤面が浮かび上がった。
止まる場所は二つに一つ。【ハズレ(核自壊)】か、【アタリ(概念貫通)】か。
盤面の針が、凄まじい速度で回転を始める。
だが、針が指し示したのは――死を意味する黒い領域。
(……チッ、運に見放されるのは前世だけで十分だ。……回れッ!)
俺は泡の体から細い触手を伸ばし、停止しかけたルーレットの針を、魂を削るような執念で弾き飛ばした。
『固有権能:強制介入――【第六回転】発動』
ギギギ、と世界の理に抗うような軋み音が響く。
無理やり一回転、さらに一回転と押し込まれた針は、死の領域を飛び越え、眩いばかりの【金】のマスへと叩きつけられた。
『判定、強制成功。――【銀弾:絶対貫通効果】を付与。……全弾、一括射出』
「バ、バカな……避けれな――」
魔腐犬が跳躍しようとした瞬間、音速を超えた銀の閃光が、奴の眉間を正確に撃ち抜いた。
スペシャリストとしての防御障壁も、腐敗の鎧も、概念的に「無視」して貫通する、一発勝負の極大ダメージ。
ドォォォォォォォン!!
一粒の泡が放った、運命をねじ伏せた理外の一撃。
リーダーが一瞬で消し飛んだ光景に、残された二体の魔腐犬たちは戦慄し、動くことさえできなかった。
『承認。――【アノマリー(異常個体)】としての片鱗を確認しました』
俺は冷たくなった核の熱を感じながら、静かに、残りの二体を見据えた。
(……次、回すか? 確率は……万に一つだぜ)
読んでいただきありがとうございました!
「力」ではなく「運」、そしてその運すらもねじ伏せる。
格上を食い、バグのような異常性の一部を露わにしたメグル。
これこそ「アノマリー」へと至る彼の真骨頂です。
ここで、本作における現在の強さの指標です。
・コモン(凡庸種)
・ミュータント(変異種) ← 現在:メグル=ミュータント
・アノマリー(異常個体) ← メグルが片鱗を見せる
・スペシャリスト(特化権能者) ← 今回の敵
・ハイマスター(至高の完成体)
・レジェンダリー(伝説の覇者)
次回、第20話。
ついに第1章:【蒼銀の守護者編】完結となります!
番外編で前世の記憶に触れましたが、正直、今の俺にとって過去の名前なんてものは、もはやどうでもいい些細なことです。
「名前はなんでもいい」。
俺が俺として、この世界をどう巡るか。それだけを見ていてください。
最高のフィナーレをお届けします。ぜひ評価やブックマークをお願いします!




