番外編(1):記号として生きた日々
読んでいただきありがとうございます。
本編第17話の「答え合わせ」となる番外編です。
なぜ主人公が二文字の名前を嫌うのか。その理由は、前世の澱んだ記憶の中にありました。
4月12日
今日も終電に滑り込んだ。窓に映る自分の顔は、ひどく泥のように濁っている。
「おい、白河! 明日の会議の資料、まだ終わってないのか!」
上司の罵声が耳の奥で反響する。
あの世界で、俺の名前はただの「白河」という、二文字の記号だった。
誰も俺という人間を見ていない。ミスをすれば叩き、都合が悪ければ呼びつけ、使い捨てにするためのラベル。
「白河」と二文字で吐き捨てられるたびに、俺の中の何かが死んでいく。俺という個性を、存在を、その短い響きに閉じ込められ、押し潰されているような感覚だった。
もっと深く、もっと長く、誰にも汚されない俺だけの名が欲しかった。
俺をただの部品として扱うこの世界から、いつか逃げ出したい。
今の俺は、もうあの「白河」ではない。
俺が本当に欲しかった名前は、次の記録――【番外編(2)】に記してある。
ありがとうございました。
前世で二文字の苗字という「記号」として扱われた苦痛。
続いての【番外編(2):泡生日記】では、今の「泡」としての日常と、そこから導き出される「本当の名前」がついに判明します。
約10分後、更新をお待ちください!




