刻まれる真名。命を削る「王」の対価
読んでいただきありがとうございます。
主人公が本格的に「主」としての道を歩み始めますが、その道は平坦ではありません。
【真名の刻印】の真の代償。
それは、与える側の命を直接削り取る、等価交換の儀式。
気安くは行えない「禁断の強化」を経て、村は最強の結束を手に入れます。
魔銀狼を配下に従えた俺の前で、コボルトたちが震えながら歓喜に沸いていた。
だが、俺の核は冷ややかに現実を見つめている。
(……このままじゃ、こいつらはただ守られるだけの『エサ』のままだ)
俺は、自分自身の魔力を内側から削り出す感覚を研ぎ澄ませた。
【真名の刻印】は、言葉を贈るような安い儀式じゃない。
俺の魂の欠片を、物理的に切り分けて相手の魂に癒着させる、身を削るような行為だ。
『警告:広域への刻印は個体存続に多大な負荷を与えます。魔素保有量が危険域に達します』
(……構わねぇ。ここでケチって、こいつらが全滅する方が寝覚めが悪い)
俺は銀装の体を激しく明滅させ、村の中央で天を仰いだ。
核から溢れ出したのは、これまでにないほど濃密で、どす黒いまでに深い青の「雫」。
「主様……!? それ以上は、あなたのお体が……!」
エルナが悲鳴に近い声を上げるが、俺は止まらない。
空中に浮かんだ数十の雫が、村人たちの胸元へと弾け飛んだ。
『固有権能【真名の刻印】――強制執行』
グッ、と核を直接掴まれたような激痛が俺を襲う。
視界が白濁し、自身の「銀装」が維持できずに剥がれ落ちていく。
その代わり。雫を受け取ったコボルトたちの魂には、俺の命と引き換えにした「真実の名前」が深く、深く刻み込まれていった。
「う、おおぉぉぉ……!!」
あちこちで、進化の咆哮が上がる。
貧相な犬人だった彼らの体躯が膨れ上がり、俺と同じ青い瞳を宿した戦士へと変貌していく。
だが、俺はそれを確認する前に、その場に膝をついた。
核が冷たくなっている。魔素が、空っぽだ。
「精霊様……! いえ、私たちの王よ……!」
進化した村人たちが、涙を流しながら俺の周りに集まり、一斉に頭を垂れた。
彼らの心の中には、俺が命を削って刻んだ名前が、消えない灯火となって燃えている。
(……はは。一気に貧血……いや、魔力切れかよ。……あとは、任せたぜ、お前ら)
俺は、エルナの腕の中に倒れ込みながら、意識を暗闇へと沈めた。
これでもう、この村は「守られる側」ではない。戦う意志を持った、俺の「軍団」だ。
読んでいただきありがとうございました。
転スラのように簡単に名前を与えず、「命を分け与える」という描写にしました。
主人公、まさかの戦線離脱!?
次回、第15話。
主を欠いた村に、ついに魔銀狼の別動隊が迫る。
進化したコボルトたちは、主を守り抜くことができるのか!?
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