第18話:K.M.コーブシは俺TUEEEのか?
トヨーダ・マユカと名乗ったその女性は、扇子をパチンと畳むと、まるで圧迫面接でも始めるかのような冷徹な笑みを浮かべた。
「初めまして、三浦さん。私、トヨーダ・マユカと申します。今回、貴方のパフォーマンスについて、少しばかり適正評価をさせていただきに参りましたの」
丁寧な口調。だが、その目は相手を人間として見ていない。前の世界で、無理難題を笑顔で押し付けてきた人事担当の顔が脳裏をよぎる。
「貴方、自分が特別な存在だと勘違いしていませんこと? 異世界に来て、ちょっと珍しい力を手に入れたからって、それが一生続く保証なんてどこにもありませんのに。計画を乱すイレギュラーは、早急にリストラ……いえ、排除するのが組織の鉄則ですわ」
彼女の背後で、強化された魔物たちが一斉に咆哮を上げる。
俺は拳を握りしめた。だが、あの地形を破壊するような力は使いたくない。あれは自分でも制御ができない化け物の力だ。
(……普通のパンチで、なんとかならないか)
俺は一歩踏み出し、正面のオークに向けて全力で拳を振るった。
ドッ、という鈍い音。
だが、オークは微動だにしない。それどころか、俺の拳を鼻先で笑うかのように、巨大な腕を振り下ろしてきた。
「ぐあぁっ!!」
弾き飛ばされ、泥の中に転がる。肩の傷が再び開き、熱い液体が滴る。
立ち上がろうとするが、足に力が入らない。昨日までの無敵感が、ガラス細工のように脆く崩れ去っていく。
それを見たトヨーダの顔から、上品な仮面が剥がれ落ちた。
「ほらぁ!! 俺TUEEEとか思ってたんでしょ!? バッッッッッカだねぇぇ!!」
耳を劈くような絶叫。
彼女は杖を振り回し、狂ったように笑いながら俺を見下ろした。
「何が測定不能よ! 何が抵抗よ! 結局、お前もただの無能な社畜じゃない! ちょっとチヤホヤされただけで、自分が世界の主人公にでもなったつもりだったのかしら!? 恥ずかしくないの!? そのみっともない姿!!」
彼女の暴言は、俺が心の奥底に蓋をしていたコンプレックスを正確に、執拗に抉ってきた。
前の世界での敗北感。何者にもなれなかった自分。
トヨーダの叫びは、まるで呪いのように俺の自由を奪っていく。
「これ以上、私の評判を下げるな! おれの心を傷付けるな!! さっさと消えなさい、このゴミ虫がっ!!」




