第15話:俺TUEEEの主人公などと!その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ…!
ギルドの中は、朝から異様な熱気に包まれていた。
掲示板の前に人だかりができ、あちこちで怒号や不安げな声が飛び交っている。
「また出たのかよ。今度は北の街道だってさ」
「牙狼だけじゃねえ。本来はもっと深い森にいるはずのオークまで、強化された状態で現れてるらしい」
どうやら事態は俺が思っていたよりも深刻だった。
街道沿いで魔物被害が連続して発生している。しかも出現場所がデタラメだ。本来なら生息していないはずの場所に、不自然に強化された個体がピンポイントで現れているという。
ギルドはこの事態を重く見て、Cランク以上の熟練者に対して六芒星の一つ星依頼を発行した。
内容は、街道周辺の魔物一掃と、発生源の特定。
俺はEランクになったばかりの新人だ。
当然、そんな危険な依頼には同行すら許されない。
(……まあ、俺には関係ない話だな)
そう自分に言い聞かせ、隅のベンチで安物のパンを齧っていた。
正直、あの拳を振るう機会が減るのなら、それに越したことはない。
「三浦さん、ちょっといい?」
不意に声をかけられた。
顔を上げると、いつものダウナー受付嬢が、眠そうな目をこすりながら立っていた。手には分厚い魔導書と、何かの集計表。
「……あ、昨日の件なんだけど。概念干渉とか言ったやつ、なしで」
「あぁ、あれ。やっぱり俺、そんな大層なことしてなかったんですよね」
俺は苦笑いして答えた。
内心、少しだけ安心していた。
自分の力が世界の理を書き換えるなんて、そんな特別すぎる設定、俺には荷が重すぎる。きっと自分で自分を「買いかぶっていた」だけなのだろう。
そう思うと、少しだけ顔が熱くなった。
「うん。あれ、私の間違い。ちょっと寝ぼけてたみたい」
彼女は淡々と言葉を続けた。
だが、その後に続いた言葉は、俺の安堵を根底から覆すものだった。
「趣味でさ、改めて調べ直したんだけどね。あの牙狼、ただの異常個体じゃない。……人為的な強化個体だよ。何者かが外部から『何らかの力』を無理やり流し込んで、出力を固定させてる」
彼女は集計表の一点を指差した。
「それも、ただの強化じゃない。特定の『何か』を排除するために、わざわざその場所に配置されてる形跡がある」
「配置……?」
「そう。まるで、通りかかる獲物を待ち伏せるみたいに。……でね、ここからが本題なんだけど」
彼女は俺の目をじっと見つめ、声を落とした。
「あの牙狼たちを、あなたは拳一つで、あんな無茶苦茶な方法で倒したでしょ? 本来、大抵の冒険者が倒せるはずのない『もの』を、壊しちゃったんだよね」
俺の背筋に、冷たい汗が伝う。
「三浦さん、これ、私の勘だけどさ。……あなた、狙われてる可能性があるよ」
狙われている。
誰が。何のために。




