表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/5

魔王城を砂で封鎖しました

第3話を読んでくださった方、ありがとうございます!


ダンジョンを砂で埋めてしまった聡美。

砂魔法はさらに100倍になり、もはや制御不能レベル。


森で冒険を続けたら、森が砂漠になってしまう……


そこで聡美が下した決断とは?


「もうこれは……魔王城に行くしかないキュ」


それでは、お楽しみください!


■第十章:ゴブリン再び、そして飽和


ダンジョンを埋めてから1週間、聡美は宿の部屋で大人しくしていた。


しかし、休むと体がなまる。


そして何より、お金が必要だ。


「やっぱり冒険しないとダメキュ!」


聡美は森へ向かった。


* * *


聡美の恐ろしさを知らない若いゴブリンが、無邪気に襲いかかってくる。


「ギギ!」


「キュ! サンドブラインド!」


条件反射で最大量。


一瞬で巨大な砂山がそびえ立った。


高さ10メートル。直径20メートル。


ゴブリンどころか、周囲の木々まで埋まっている。


「……キュ」


それでも勇敢な別のゴブリンが聡美を襲う。


「ギギギ!」


「サンドブラインド!」


即座に砂山に埋まるゴブリン。


* * *


周囲を見渡す。


森が砂山だらけになっている。


鳥も飛ばない。


風も止まる。


小動物たちが困惑して逃げていく。


もう、聡美の砂魔法は森林破壊になっている。


「これじゃ冒険にならないキュ……森が砂漠になっちゃうキュ……」


聡美はふと、学校の社会の授業を思い出した。


「社会の時間に習った砂漠化って、こうやって起きてるキュ?」


違う。絶対違う。


でも、今の聡美の周囲は確実に砂漠化が進行している。


聡美は肩を落として宿に帰った。


* * *


そして、呟く。


「もうこれは……魔王城に行くしかないキュ」


森で冒険を続けたら、生態系が破壊される。


ダンジョンに行けば、また埋めてしまう。


ならば、いっそ――


魔王城を封鎖してしまえば、魔物は出てこられない。


世界は平和になる。


「完璧な作戦キュ!」


聡美は自分に言い聞かせた。


本当は、ただ砂魔法の使い道に困っているだけなのだが。


* * *


■第十一章:魔王城包囲作戦


数日かけて、聡美は魔王城へ向かった。


道中、いくつもの砂山を作りながら。


敵が出れば埋め、谷があれば埋め、橋がなくても埋めた。


砂の道ができた。


後続の冒険者たちが「なんだこの道……」と困惑していたが、聡美は気にしない。


ある冒険者が呟いた。


「これ、シルクロードみたいだな……砂の道だ」


別の冒険者が首を傾げる。


「でも、誰が作ったんだ? こんな大量の砂、どこから持ってきた?」


聡美は黙々と歩き続けた。


* * *


魔王城が見えた。


黒い城壁。


禍々しい塔。


空には暗い雲。


魔物たちの咆哮が聞こえる。


聡美は一度だけ深呼吸した。


もう胃酸も込み上げない。


何度も砂で敵を埋めてきた経験が、聡美を強くしていた。


「作戦開始キュ!」


聡美の作戦はシンプルだ。


――倒すのではない。


――出られなくする。


* * *


「サンドブラインド! サンドウォール! サンドスリップ! サンドマウンテン! サンドトルネード!」


ひたすら砂をまき続ける。


まんじゅう休憩を挟んで一時間。


水分補給も忘れずに。


魔王城の周囲は巨大な砂山で完全に囲まれた。


出入り口も、窓も、地下通路の換気口も、全部砂で塞がれた。


魔王軍の兵士たちが城壁から顔を出して叫ぶ。


「何だこれは!」


「城が……埋まっていく!」


「魔王様! 出られません!」


「空気が……!」


聡美は満足げに頷いた。


「砂で封鎖したら、魔物も魔王も出てこれないキュ!」


システムメッセージは表示されない。


倒したわけではないからだ。


でも、それでいい。


魔物が出てこられなければ、世界は平和になる。


* * *


聡美は何事もなかったように帰路についた。


途中、他の冒険者たちとすれ違う。


満足そうな顔をしている聡美を不思議そうに見る人もいた。


「魔王城に行ったのか?」


と聞く冒険者もいた。


聡美は何も言わなかった。


ただ微笑んで、手を振って去っていった。


冒険者たちは首を傾げる。


「あの子、大丈夫だったのかな……」


「魔王城に一人で行くなんて、無謀すぎる」


「まあ、生きて帰ってきたみたいだし、いいんじゃないか」


誰も気づかない。


魔王城がもう、砂の山になっていることに。


* * *


■第十二章:勇者の困惑


翌日。


勇者パーティーは意気揚々と出発した。


勇者レオン、戦士ガルド、僧侶エルナ、魔法使いリゼ、盗賊ヴィン。


完璧な布陣だ。


「ついに魔王城に向かうぞ! あとは攻略して魔王を倒すだけだ! みんな、いいか!」


「おおっ!」


彼らは数ヶ月かけて準備を整えてきた。


最強の武器、最高の防具、貴重な回復薬。


レオンは剣を天に掲げる。


「この聖剣で、必ず魔王を討つ!」


エルナが祈りを捧げる。


「女神様、どうか私たちに力を……」


リゼが杖を構える。


「最大級の魔法を叩き込んでやるわ」


* * *


しかし、魔王城があるはずの場所に着くと――


「……え?」


勇者は呆然とした。


目の前にあるのは巨大な砂山だけ。


尖塔も城壁も何も見えない。


ただ砂の山が、空を覆うようにそびえ立っている。


「魔王城が……ない?」


ガルドが地図を確認する。


「地図ではここだが……」


ヴィンが周囲を見回す。


「砂漠じゃなかったよな……?」


エルナが記憶を辿る。


「いや、確かにここは平原だったはずだ……」


* * *


勇者たちは沈黙した。


誰も言えない。


――俺たち、出番ないのでは。


リゼが魔法で砂を調べる。


「この砂……魔力を帯びてる。誰かが魔法で作り出した砂だわ」


「誰が……?」


「わからない。でも、とてつもない魔力量……」


レオンが砂山に手を触れる。


「これ、全部魔法で作られた砂なのか? 一体どれだけの魔力を……」


* * *


エルナが祈りを捧げて神託を求める。


「女神様……魔王は?」


光が降りてくる。


女神の声が聞こえる。


『魔王は城内に封じられている。砂の山の下で、息もできず、動くこともできず……』


「つまり……」


ガルドが呟く。


「魔王、倒されてる……?」


リゼが首を振る。


「いや、封印されてる……?」


ヴィンが砂山を見上げる。


「これ、掘り出すのに何年かかるんだ……」


* * *


勇者パーティーは顔を見合わせた。


数ヶ月の準備が、一瞬で無駄になった。


レオンがゆっくりと聖剣を鞘に収める。


「……帰ろうか」


「……うん」


「……そうだな」


誰も反対しなかった。


* * *


帰り道、エルナが呟いた。


「でも、これで世界は平和になったのよね……」


リゼが頷く。


「そうね。魔王が封印されたなら、魔物も大人しくなるはず」


ガルドが肩をすくめる。


「まあ、結果オーライってことで……」


ヴィンが苦笑する。


「でも、誰がやったんだ? こんなこと……」


レオンは答えなかった。


ただ、砂の道を振り返る。


そこには、誰かの足跡が残っていた。


小さな、女性のものと思われる足跡が。


「……ありがとう」


レオンは小さく呟いて、仲間たちと共に街へ帰っていった。


* * *


その頃、聡美は宿で夕食を食べていた。


「今日のスープ、おいしいキュ」


窓の外では、街の人々が喜びに沸いていた。


「魔王城が消えたらしい!」


「砂の山になったって!」


「これで平和が訪れる!」


聡美はスープをすすりながら、小さく微笑んだ。


「みんな喜んでるキュ……良かったキュ」


でも、自分がやったとは言わない。


言えない。


ただ静かに、砂魔法で世界を救った事実を胸に秘めて。


聡美は今日も、地味に地道に生きていく。


【第4話・了】

第4話、お読みいただきありがとうございました!


魔王城を砂で封鎖した聡美。

勇者パーティーは出番を失いました。


でも、世界は平和になりました。

誰も知らないけど、砂魔道士聡美が救ったのです。


次回、最終話です。

聡美は異世界に残るのか、それとも――


面白いと思ってくださったら、★評価やブックマークをいただけると、

聡美の胃痛が完全に治ります!キュ!


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ