魔王城を砂で封鎖しました
第3話を読んでくださった方、ありがとうございます!
ダンジョンを砂で埋めてしまった聡美。
砂魔法はさらに100倍になり、もはや制御不能レベル。
森で冒険を続けたら、森が砂漠になってしまう……
そこで聡美が下した決断とは?
「もうこれは……魔王城に行くしかないキュ」
それでは、お楽しみください!
■第十章:ゴブリン再び、そして飽和
ダンジョンを埋めてから1週間、聡美は宿の部屋で大人しくしていた。
しかし、休むと体がなまる。
そして何より、お金が必要だ。
「やっぱり冒険しないとダメキュ!」
聡美は森へ向かった。
* * *
聡美の恐ろしさを知らない若いゴブリンが、無邪気に襲いかかってくる。
「ギギ!」
「キュ! サンドブラインド!」
条件反射で最大量。
一瞬で巨大な砂山がそびえ立った。
高さ10メートル。直径20メートル。
ゴブリンどころか、周囲の木々まで埋まっている。
「……キュ」
それでも勇敢な別のゴブリンが聡美を襲う。
「ギギギ!」
「サンドブラインド!」
即座に砂山に埋まるゴブリン。
* * *
周囲を見渡す。
森が砂山だらけになっている。
鳥も飛ばない。
風も止まる。
小動物たちが困惑して逃げていく。
もう、聡美の砂魔法は森林破壊になっている。
「これじゃ冒険にならないキュ……森が砂漠になっちゃうキュ……」
聡美はふと、学校の社会の授業を思い出した。
「社会の時間に習った砂漠化って、こうやって起きてるキュ?」
違う。絶対違う。
でも、今の聡美の周囲は確実に砂漠化が進行している。
聡美は肩を落として宿に帰った。
* * *
そして、呟く。
「もうこれは……魔王城に行くしかないキュ」
森で冒険を続けたら、生態系が破壊される。
ダンジョンに行けば、また埋めてしまう。
ならば、いっそ――
魔王城を封鎖してしまえば、魔物は出てこられない。
世界は平和になる。
「完璧な作戦キュ!」
聡美は自分に言い聞かせた。
本当は、ただ砂魔法の使い道に困っているだけなのだが。
* * *
■第十一章:魔王城包囲作戦
数日かけて、聡美は魔王城へ向かった。
道中、いくつもの砂山を作りながら。
敵が出れば埋め、谷があれば埋め、橋がなくても埋めた。
砂の道ができた。
後続の冒険者たちが「なんだこの道……」と困惑していたが、聡美は気にしない。
ある冒険者が呟いた。
「これ、シルクロードみたいだな……砂の道だ」
別の冒険者が首を傾げる。
「でも、誰が作ったんだ? こんな大量の砂、どこから持ってきた?」
聡美は黙々と歩き続けた。
* * *
魔王城が見えた。
黒い城壁。
禍々しい塔。
空には暗い雲。
魔物たちの咆哮が聞こえる。
聡美は一度だけ深呼吸した。
もう胃酸も込み上げない。
何度も砂で敵を埋めてきた経験が、聡美を強くしていた。
「作戦開始キュ!」
聡美の作戦はシンプルだ。
――倒すのではない。
――出られなくする。
* * *
「サンドブラインド! サンドウォール! サンドスリップ! サンドマウンテン! サンドトルネード!」
ひたすら砂をまき続ける。
まんじゅう休憩を挟んで一時間。
水分補給も忘れずに。
魔王城の周囲は巨大な砂山で完全に囲まれた。
出入り口も、窓も、地下通路の換気口も、全部砂で塞がれた。
魔王軍の兵士たちが城壁から顔を出して叫ぶ。
「何だこれは!」
「城が……埋まっていく!」
「魔王様! 出られません!」
「空気が……!」
聡美は満足げに頷いた。
「砂で封鎖したら、魔物も魔王も出てこれないキュ!」
システムメッセージは表示されない。
倒したわけではないからだ。
でも、それでいい。
魔物が出てこられなければ、世界は平和になる。
* * *
聡美は何事もなかったように帰路についた。
途中、他の冒険者たちとすれ違う。
満足そうな顔をしている聡美を不思議そうに見る人もいた。
「魔王城に行ったのか?」
と聞く冒険者もいた。
聡美は何も言わなかった。
ただ微笑んで、手を振って去っていった。
冒険者たちは首を傾げる。
「あの子、大丈夫だったのかな……」
「魔王城に一人で行くなんて、無謀すぎる」
「まあ、生きて帰ってきたみたいだし、いいんじゃないか」
誰も気づかない。
魔王城がもう、砂の山になっていることに。
* * *
■第十二章:勇者の困惑
翌日。
勇者パーティーは意気揚々と出発した。
勇者レオン、戦士ガルド、僧侶エルナ、魔法使いリゼ、盗賊ヴィン。
完璧な布陣だ。
「ついに魔王城に向かうぞ! あとは攻略して魔王を倒すだけだ! みんな、いいか!」
「おおっ!」
彼らは数ヶ月かけて準備を整えてきた。
最強の武器、最高の防具、貴重な回復薬。
レオンは剣を天に掲げる。
「この聖剣で、必ず魔王を討つ!」
エルナが祈りを捧げる。
「女神様、どうか私たちに力を……」
リゼが杖を構える。
「最大級の魔法を叩き込んでやるわ」
* * *
しかし、魔王城があるはずの場所に着くと――
「……え?」
勇者は呆然とした。
目の前にあるのは巨大な砂山だけ。
尖塔も城壁も何も見えない。
ただ砂の山が、空を覆うようにそびえ立っている。
「魔王城が……ない?」
ガルドが地図を確認する。
「地図ではここだが……」
ヴィンが周囲を見回す。
「砂漠じゃなかったよな……?」
エルナが記憶を辿る。
「いや、確かにここは平原だったはずだ……」
* * *
勇者たちは沈黙した。
誰も言えない。
――俺たち、出番ないのでは。
リゼが魔法で砂を調べる。
「この砂……魔力を帯びてる。誰かが魔法で作り出した砂だわ」
「誰が……?」
「わからない。でも、とてつもない魔力量……」
レオンが砂山に手を触れる。
「これ、全部魔法で作られた砂なのか? 一体どれだけの魔力を……」
* * *
エルナが祈りを捧げて神託を求める。
「女神様……魔王は?」
光が降りてくる。
女神の声が聞こえる。
『魔王は城内に封じられている。砂の山の下で、息もできず、動くこともできず……』
「つまり……」
ガルドが呟く。
「魔王、倒されてる……?」
リゼが首を振る。
「いや、封印されてる……?」
ヴィンが砂山を見上げる。
「これ、掘り出すのに何年かかるんだ……」
* * *
勇者パーティーは顔を見合わせた。
数ヶ月の準備が、一瞬で無駄になった。
レオンがゆっくりと聖剣を鞘に収める。
「……帰ろうか」
「……うん」
「……そうだな」
誰も反対しなかった。
* * *
帰り道、エルナが呟いた。
「でも、これで世界は平和になったのよね……」
リゼが頷く。
「そうね。魔王が封印されたなら、魔物も大人しくなるはず」
ガルドが肩をすくめる。
「まあ、結果オーライってことで……」
ヴィンが苦笑する。
「でも、誰がやったんだ? こんなこと……」
レオンは答えなかった。
ただ、砂の道を振り返る。
そこには、誰かの足跡が残っていた。
小さな、女性のものと思われる足跡が。
「……ありがとう」
レオンは小さく呟いて、仲間たちと共に街へ帰っていった。
* * *
その頃、聡美は宿で夕食を食べていた。
「今日のスープ、おいしいキュ」
窓の外では、街の人々が喜びに沸いていた。
「魔王城が消えたらしい!」
「砂の山になったって!」
「これで平和が訪れる!」
聡美はスープをすすりながら、小さく微笑んだ。
「みんな喜んでるキュ……良かったキュ」
でも、自分がやったとは言わない。
言えない。
ただ静かに、砂魔法で世界を救った事実を胸に秘めて。
聡美は今日も、地味に地道に生きていく。
【第4話・了】
第4話、お読みいただきありがとうございました!
魔王城を砂で封鎖した聡美。
勇者パーティーは出番を失いました。
でも、世界は平和になりました。
誰も知らないけど、砂魔道士聡美が救ったのです。
次回、最終話です。
聡美は異世界に残るのか、それとも――
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聡美の胃痛が完全に治ります!キュ!
次回もお楽しみに!




