朝起きたら恋人に殺されそうになっていた
「やめろ」
目を開け、俺はナツキの手首を掴んでそう言った。その手にはナイフが握られていた。
俺の上に馬乗りにのしかかるナツキの重みで、ベッドが軋む。
「ハルさん……」
ナツキが笑顔を歪めて、言う。
「おれ……、あんたを殺したい」
「すまないとは思っている」
俺はまず、謝った。
「だが……わかってくれ。俺が女を抱くのは仕事のためだ」
「女なんか抱くなよ」
嫉妬でナツキのかわいい顔がさらに歪む。
「おれがいればいいじゃん」
ナイフを俺の胸に突き立てようとするナツキの力が強まる。
逞しくなった。出会った時はただの弱っちぃ19歳の坊やだったのに……確実に、殺し屋として成長している。
しかし俺に向けられているのは、散漫な殺意だった。
「殺したいのなら冷静にやれ」
今まで教えてきたように、俺は言った。
「俺を殺したら、自分のことも殺す気だろう?」
ナツキの目から涙が滴る。
それを頬に受けながら、誠意を込めた目で、俺はまっすぐに、彼のことを見つめた。
「おまえが一人前の殺し屋になって、純粋な殺意を使えるのなら、俺はおまえに殺されてもいい。だが……」
ナツキの手を優しく導き、ナイフをシーツに突き立てさせると、俺はその華奢な身体を強く抱きしめた。
「……あっ」と、ナツキが女の子のような声を出す。
「俺を殺して自分も死ぬつもりなのなら、殺されてやるわけにはいかん」
サラサラの白いその髪を撫でてやりながら、俺は言い聞かせた。
「おまえを死なせたくはないからな」
「ハルさん……っ!」
泣きじゃくるナツキを、俺は強くまた抱きしめた。
体勢を入れ替え、自分が上になると、熱くその目を覗き込み、口にする。
「俺の恋人はおまえだけだ」
安心させるように、しかし激しいキスをしてやった。
愛されていると、思い知らせてやった。
黒い俺の肉体と、白いナツキの裸体が、ベッドの上で一つに絡み合った。
タイトルはシロクマシロウ子さまよりいただきました




