第40話 祈りの彼方
雨上がりの空には、大きな虹が架かっていた。
木々の葉に残る雫は、瑞々しい光をまとい、静かに煌めいている。
清らかな空気を、風がそっと運んでくる。
深く呼吸をすれば、澄んだ空が胸いっぱいに満ちてくるような——そんな、心地よい朝だった。
「ボクね、気づいたんだ」
窓辺に座り、静かに虹に見惚れていたソラが、不意に口を開いた。
「空っぽは、何にもないってことじゃなかったの。『楽しい』を詰めれば詰めるほど広がっていくの。それでね、最後には世界いっぱいまで広がって——『そら』に届くんだ!」
空色の瞳をキラキラ輝かせて話すソラに、ラドリーはいつものように呆れた顔でため息をついた。
「お前の言う『そら』は、空か? 自分か?」
「どっちも!」
にっこり笑って無邪気に返すソラに、自然と肩の力が抜ける。
その笑顔を見て、ラドリーはふと初めて出会った日のことを思い出す。
あの時、白い毛並みに空色の瞳を持つその機体は、確かに「空っぽ」だった。
でも今——
そこには、数えきれない記憶と、想いと、温もりが詰まっている。
——そして、同じものが、自分にも。
いつしか、ラドリーの空虚も埋まっていた。
ラドリーは、それを真っ直ぐに認めて、受け入れていた。
◇
ソラの「空っぽ」は、哀しいものではなかった。
その名に込められていた祝福のとおり、それは、自由で、可能性に満ちた器。
そして——その器は、確かに今、誰かと共に生きている。
——今日もまた、新たな「楽しい」を詰め込みながら。
—— Fin ——
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