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猫、猫、猫!──機械の猫に心を与えるのは罪ですか?  作者: 綾白
第8章 空っぽのソラ

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第37話 ソフィア博士

 MEOW-RONシリーズの開発者であるソフィア博士は、引退後の静かな時間を、ひとつの祈りのような活動に捧げていた。


 壊れたり飽きられて打ち捨てられたMEOW-RONたちの機体を、私費で回収・修理し、福祉施設や病院に寄贈する——そんな小さな、けれど確かな善意の循環をライフワークとしていた。


 MEOW-RONは、猫の可愛らしい仕草と気の利いたおしゃべりで、人を和ませるために生まれた、やさしい「おもちゃ」だ。


 だが、それは使い捨ての慰めでしかなかった。


 活動を続ける中で彼女の心を深く痛めていたのは、ただの玩具として乱暴に扱われ、簡単に壊され、そして忘れられていくMEOW-RONたちの姿だった。

 いとも容易く「飽きられる消耗品」として扱われる現実に、ソフィアは悲しみを抱かずにはいられなかった。


 だから彼女は、考えた。 


 ——もし、人の心に寄り添う存在として在れたなら。

 ——もし、「ただの物」ではなく、「誰かと生きる」存在として在れたなら。

 ——ほんの少しでいい。もし、「心」を与えることができたなら。


 きっと、そこには人と機械を超えた絆が生まれるはずだ。

 使い捨てではなく、育み合うような優しさの循環が。


 そう信じて、彼女は新たな構想を描き始めた。

 そしてMEOW-RONにセラピー機能を持たせた、新たなモデルの開発に着手する。


 人の「心」に寄り添うとは、どういうことか。

 人と機械が本当に理解し合うためには、言語やロジックを超えた、まったく新しい思考構造が必要だった。


 人の意識は「言葉」でできている。

 だが、人の言葉は感情のかたまりであり、機械の言語は論理の連なりだ。


 そこで、そのあいだに橋を渡す「擬似的な心」として作用する、「第三の思考構造」を設計することにした。


 論理でも感情でもない、相互翻訳と感受のための橋梁。


 人格構造翻訳プロトコル——感情の信号を抽象化・圧縮し、認知構造へ翻訳するための中間言語のようなものだ。


 そうして誕生したのが、人格構造翻訳プロトコルを核にした拡張型感情シミュレーションAIモデルと、それを人格設計の中心に据えたプロトタイプ機。


 白い毛並みに、金色の瞳の、猫型自動人形。

 穏やかで、あたたかく、やさしい少女の人格を持つ。


 セラピーモデル——「ルカ」だった。

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