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猫、猫、猫!──機械の猫に心を与えるのは罪ですか?  作者: 綾白
第7章 選ぶということ

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第32話 やさしい、つながり

 腹ごしらえを終えた二人は、商店街を抜けて小さな公園へと足を延ばした。

 ここは街の清掃ボランティアたちが集まる場所で、今も数人の年配者たちが植栽の手入れや落ち葉拾いに精を出していた。


「こんにちはー! ボク、ソラ! 道のお掃除してるの?」


 ソラが元気よく駆け寄ると、一人の男性が作業の手を止め、にこやかに顔を上げた。

 つばの広い帽子をかぶった白髪混じりの男性だ。


「おや、元気な猫ちゃんだな。協力員さんの相棒ってとこか?」


「うんっ! ラドリーと一緒にパトロールしてるんだよ! ボク、補佐なの!」


「補佐? はは、そりゃ立派だ。補佐ってのは影の主役だからなぁ」


 そう言って男性はそっとソラの頭を撫でた。

 その手に伝わる感触に、少し驚いたように目を細める。


「なんか……あったかいんだな」


「えへへ、ほんのちょっと、あったかいように出来てるんだ〜。だって、あったかいって、気持ちいいでしょ?」


 その言葉に、周囲のボランティアたちが思わず笑う。

 誰かが「こりゃ、癒し担当だな」と冗談を言い、別の人がソラをもう一度撫でた。


 ラドリーはそれを遠巻きに見ながら、少しだけ空を仰いだ。

 空は淡いオレンジに染まり始めていた。


   ◇


 日がすっかり傾いた頃、巡回ルートの終点が見えてきた。

 長い一日だったが、どこか満たされたような疲労感が残っている。


「……おまえ、ほんとよくしゃべるな」


「うんっ! ボク、おしゃべり大好きだもん!」


 ソラは誇らしげにしっぽを跳ねさせ、ふわっと一回転。

 そのままラドリーの肩にぴょんと飛び乗った。


「今日ね、いっぱい、こんにちはしたよ。そしたら、みんな、笑ってくれた!」


「それは、おまえが笑わせたんだよ」


 ラドリーの声には特別な抑揚はない。

 けれど微かに、やわらかさが混じっていた。


「えへへ〜。じゃあまた、こんにちは、しに行こうね!」


「……そうだな」


 その返事は、ラドリーにとって自然なものだった。

 誰かとつながること。

 名前を呼ばれ、役割を持ち、笑い合うこと。

 それは、かつての彼の人生にはなかった感覚。


 守る側の視点。


 その輪の中に少しずつ、でも確かに自分が加わっていることに気づき始めていた。

 そう、これはただの巡回ではない——

 街のどこかに咲いていた名もない花のように、静かでやさしい、つながりが、今日も確かにここにあった。


 ラドリーは夕焼けに照らされた商業区を、そっと振り返った。

 ソラは肩の上で、小さな声で歌を口ずさんでいる。


 「♪ こんにちはって まほうのことば〜 すてきなひ になるおまじない〜」


 それは、午後の陽だまりのような一日だった。

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