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猫、猫、猫!──機械の猫に心を与えるのは罪ですか?  作者: 綾白
第6章 ソラvsたい焼きモンスター

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第26話 たい焼きを守れ!

 たい焼き屋の裏手に広がる、古びた石畳の路地裏。

 建物の隙間を通り抜けた一陣の風が、ひらりとソラのベストの裾を揺らした。


 ラドリーは背後の壁にもたれて、眉間を揉みながら静かに空を見上げる。

 一方その足元では、ソラが拾ったネジをじっと見つめていた。

 金属片に反射する微かな光が、彼の瞳に映り込む。


「……あの子、くちばしの先が工具みたいになってたから……やっぱり旧世界の修理鳥型だと思う。でも、なんでネジを投げてきたのかな……?」


 くるりと指先でネジを回しながら、ソラは小さく首をかしげる。


「もしかして、攻撃じゃなくて警告だったのかも……。『近づくな』って。そう言ってた……のかも……」


 ラドリーはその言葉に短く息をつき、目を細めた。


「いや、明らかに攻撃だったぞ。狙いが甘いとはいえ、あれ、頭に向かって飛ばしてたしな。……角度が違えば、額に刺さってたかもしれん」


「うぅ……それはこわい……」


 ソラは身震いするように蹲り、しっぽを前にぎゅっと抱え込んだ。

 そのとき——


「よっ、おふたりさーん。こんな真っ昼間っから恋人ごっこかぁ?」


 後ろから陽気でちょっと軽い、しかし聞き慣れた声が響いた。

 振り返れば、たい焼き屋の角からマイロが手をひらひら振りながら姿を現した。


「……誰がだ」


 ラドリーが即座にツッコミを入れるより早く、ソラの顔がぱっと明るくなった。


「マイロっ!」


 ぴょんっと跳ねるように立ち上がると、ソラはぱたぱたと走り寄り、しっぽをふわふわと振りながら、空色のベストを見せつけるようにぴょこんと立ち上がった。


「見て見て! これ、ラドリーが買ってくれたのっ! たい焼き防衛隊の警備ベストなんだよ! 今日からボク、本格的に警備活動開始なのっ!」


「おぉ〜!? めっちゃ似合ってんじゃんか! なんかこう……隊長っぽいぞ、隊長!」


「たいちょー!? わーっ、それ、かっこいいっ!」


 ソラはくるくるとその場で回りながら、しっぽを立てて得意げな笑顔を見せた。

 ベストの銀色のボタンが、日差しにきらりと光る。


「……隊長って、誰の?」


 ラドリーがぼそりと聞くと、マイロはニカッと笑って答えた。


「そりゃ決まってんだろ。ソラがたい焼き防衛隊の隊長で、ラドは副隊長だな!」


「断る。……てか、たい焼き屋にそんな役職必要ねぇだろ」


「夢がないねぇ、ラドリーはよ〜。子ども心ってもんがない」


 そう冗談めかして笑ったマイロが、ふと辺りを見回す。


「で、何してんの? 昼間っからこんな裏路地で。たい焼き屋なら、もう開店してるだろ?」


 ラドリーが何か言いかけたその瞬間——また、あの甲高い電子音が空を切り裂くように響いた。


「出たっ! あの子だっ!」


 ソラが空を指さして叫ぶ。

 視線の先に、陽の光を反射して青く光る金属の鳥型ドローンが現れた。

 ばさばさと羽ばたくようにホバリングしながら、嘴には小さなネジをつまんでいる。


「おぉ、なんだアレ? 新手のモンスターか……って、うおっ、こっち来たぞ!?」


 次の瞬間「ピン!」と金属音を立てて放たれたネジが——見事にマイロの額に命中した。


「いってぇえぇ!? マジで当ててきやがった!? くっそ、何が楽しいんだよコイツー!!」


 マイロは目をしばたたかせながら、ふらふらとよろめき、額を押さえてうずくまった。


「マイロ!? ダメージ確認しますっ!」


 すかさずソラが駆け寄り、真剣な顔で彼の顔を覗き込む。


「目が回ってませんかっ? 手が震えてませんかっ? あと、たい焼きの匂いは感じますかっ?」


「最後の何!?」


 マイロはむせるように笑いながら叫んだが、ソラは真剣なままうんうんと頷いた。


「よし、反応オッケー! たい焼き防衛隊、出動だねっ!」


「おい勝手に出動するな……!」


 ラドリーが頭を抱える横で、マイロはにやりと笑い、ポケットからスマホを取り出した。


「よっしゃ。じゃあ俺は、たい焼き防衛隊・特別機動班に配属ってことで! 任務は……モンスターの動きを撮影して、SNSでバズらせること!」


「マイロ! それは作戦機密の漏洩になるからダメっ!」


「だよなー! ははっ!」


 爆笑しながら動画を撮影しようと構えるマイロ。

 一方、ラドリーはこめかみを押さえ、少し諦めた目で空を睨んだ。


「……この状況、誰が収拾つけるんだよ……」


 頭上では、再び旋回するドローンが、嘴を開いて新たなネジを咥えようとしていた。

 今日もまた、たい焼きをめぐる静かなる攻防が始まろうとしていた——

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