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猫、猫、猫!──機械の猫に心を与えるのは罪ですか?  作者: 綾白
第6章 ソラvsたい焼きモンスター

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第25話 たい焼き防衛隊

 午前中の街路は、日差しがやさしく石畳を照らし、心地よい風が店先の旗を揺らしていた。

 通りのあちこちからは焼きたてパンやコーヒーの香ばしい匂いが漂い、商店街を歩く人々も、どこかのんびりとした様子で朝のひと時を楽しんでいる。


 そんな穏やかな風景の中、たい焼き屋の角を曲がってきたのは——いつものペースで歩くラドリーと、そのすぐ隣でちょこちょこと軽快な足取りを刻む小さな影。空色のベストに身を包んだソラだった。


「見て見てラドリー! ボク、今日も警備モード発動中だよ!」


 ソラは得意げに胸を張ると、ピンと立ったしっぽの先を左右に揺らし、ぴょこぴょこと跳ねるように歩く。


「しっぽのアンテナも、ピ——ンってしてるの! ほら、今ならネジ一本落ちたって気づけるよ!」


 ラドリーはちらりと横目で彼を見下ろす。


「……警備モードってのは、そんな外見的な話なのか?」


「かたちから入るのが基本でしょ! 目と耳としっぽと、そしてお腹をフル稼働させて、たい焼きの安全を守るんだ!」


「……最後に、どうでもよさそうな感覚器が混ざってるな」


 ラドリーが半ば呆れたように言うと、ソラはくすっと笑って力強く答えた。


「お腹の報知器は、未来を予知するセンサーなんだよ!」


「そりゃ、ただの腹減りだろう」


 そんな軽口を交わしながら、ふたりは街路を歩いていく。

 太陽は高く昇り始め、家々の屋根に影を落としながら、穏やかな光で街を包み込んでいた。


 ——しかし、その空気を裂くように、突然「ピピッ!」と甲高い電子音が空から響く。

 次の瞬間、ラドリーの頭部をかすめて「カラン」と何かが地面に転がる音がした。


「……っ!?」


 機敏に身をかわして直撃を免れたラドリーが、鋭く目を細める。

 ソラもびっくりして、思わず空を仰いだ。


「えっ!? 今の音って……何か落ちてきた!?」


 ふたりが視線を走らせると、地面には細長いネジのような金属片が落ちていた。

 くるくると回転しながら、ようやく止まる。


「ラドリー! 上だよっ!」


 ソラが警報のように声を上げた瞬間——空からヒュルルッと、小さな影が降下してきた。


 カッカッと鋭い金属音を立てながら四本の脚を開き、空中でホバリングするその姿は……まるで鳥のような機械だった。

 細身の機体。

 光沢のある黄色い金属の翼。

 赤いセンサーアイ。

 その嘴がパカッと開き——「ピン!」っと、またしてもネジのような物体を発射する。


「うわっ、またネジ飛ばしてきたっ!」


 ソラは思わずラドリーの後ろに飛び込むように隠れ、しっぽをぶわっと膨らませる。

 機械鳥は旋回しながらキィィという音を立て、まるで監視するようにふたりの周囲をぐるりと回った。


「……モンスターか? いや、あれは……旧式のメンテナンスバードかもしれねぇな。作業用ドローンを誰かが改造したか、制御が外れて野良化したか……」


 ラドリーが静かに言いながら、腰のナイフを抜いて構える。

 ソラはその背にぴたっと貼りついたまま、こくこくと頷いた。


「でも、なんでネジなんて投げてくるの!? しかも、けっこう痛そうな勢いだったよ!」


 赤いセンサーアイがまたぎょろりと動き、嘴が再び開こうとする。

 が、それを見たラドリーが片眉を上げ、鋭く睨みつけた。


「こいつ……狙いが甘い。攻撃パターンも単純だ。元のプログラムに異常が出てる可能性が高いな。だが……」


「たい焼き屋の方に行っちゃったら大変だよね!」


「……ああ。何より、被害が出る前に片付けた方がいい」


 ソラはきりっと顔を引き締め、くるりとラドリーの前に飛び出した。


「ボク、出動するよっ! たい焼き防衛隊・ソラ! 行きますっ!」


 そう言いながらソラは二足で立ち上がり、空色のベストを軽くはためかせる。

 さらに前足を胸の前で交差して、かっこよく決めポーズを取った。

 しかしその直後、機械鳥がひときわ高く旋回音を鳴らし、建物の影にすうっと身を隠すように飛び去った。


「くそ、逃げやがったか……」


 ラドリーが舌打ちをし、すぐに追跡の姿勢に入る。

 ソラもそれに続くように、ぱたぱたと足音を響かせた。


「今日も、平和とは程遠いな」


「でも、ちょっとワクワクするね!」


「はっ……まあ、お前と歩いてる時点で、今さらか」


 冗談のような、本気のようなラドリーの一言に、ソラはふふっと笑ってしっぽを揺らした。

 明るい朝の光の中、ふたつの影はドローンを追って細い路地の奥へと軽やかに消えていった——

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