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猫、猫、猫!──機械の猫に心を与えるのは罪ですか?  作者: 綾白
第6章 ソラvsたい焼きモンスター

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第24話 夜間巡回記録報告書

 朝の光が、そっとカーテンの隙間から差し込んでいた。

 やわらかな金色の陽が部屋の床に斜めの線を描き、ゆっくりと空気を温めていく。

 まだ涼しさを残した朝の空気が、わずかに揺れたカーテンを通って優しく流れ込んでいた。


「……ん……」


 布団の中でごそごそと動いた影——ラドリーが、眠たげに目を開けた。

 乱れた髪の毛をかき上げながら上半身を起こすと、視界の先——ローテーブルの上に、何やらきっちりと整えられた紙が置かれているのに気がついた。


「……なんだ、これ……?」


 まるで役所から届いた申請用紙のように、角がピシリとそろっている。

 いつもの「チラシの裏」ではない。

 紙質も妙にちゃんとしている。


 眠気混じりに紙を手に取り目をこすりながら読んだラドリーは、すぐに眉をひくつかせた。


《夜間巡回記録報告書》

報告者:猫型自動人形ユニット・ソラ

記録対象:2025年6月8日 午前1時24分頃の不審影について

内容:たい焼きモンスターと類似した影を視認。鳴き声「ニャー」により猫と特定。

対応:巡回・監視(ラドリー氏と共に現場確認)。危険性なしと判断。

感想:たい焼きモンスターではなかったけど、ドキドキして楽しかった。

備考:ボク、警備ロボとしての適性があるかもしれません。


 ラドリーは手にした紙をじっと見つめてから、ゆっくりとソファの背にもたれた。


「……何やってんだ、アイツは……」


 脱力気味に息を吐いたその時だった。

 部屋の奥、風呂場の方から軽やかな歌声がふわふわと流れてきた。


「〜たい焼きモンスター♪ 夜に出る〜♪ ダンクで撃退♪ ラドリーと一緒〜♪」


 リズムは適当。

 メロディもどこか不安定。

 だけどやたら楽しそうだった。


 バスルームのドアが開き、ソラが現れた。

 ふわふわの尻尾を楽しげに振りながら、拭いたばかりの毛並みはつやつやと光っている。

 顔はにこにこ、上機嫌そのものだ。


「おはよー! ラドリー、報告書見た?」


「見た……いや、読んだ。なんでこんな、きっちり書いてんだよ……誰に出すつもりだったんだ?」


「えっ、もちろんマイロに! ボク、警備にスカウトされちゃうかも!」


 ソラは胸を張って答えた。

 しっぽは「どやっ」と言わんばかりに高く上がっている。


「……やめとけ。ソラが毎晩たい焼きの警備してるなんて報告書が来たら……マイロのやつ、きっと腹かかえて笑い死ぬぞ」


「えぇ〜でもボク、やる気まんまんなのに……。適性あると思う。『夜間対応型・特別巡回ユニット・ソラ改』とか、かっこよくない?」


「警備は、かっこよさでするもんじゃねぇよ」


 ラドリーが頭を抱えると、ソラはちょっとしょんぼりして耳をしゅんと伏せた。

 けれどそれも束の間。

 すぐにけろっと表情を明るくして、ふたたびしっぽを動かしながら声を上げた。


「じゃあ今日は、昼のたい焼きパトロールに出発しよう! 昼の警備も大事だよね! ベストもあるし完璧だよ!」


 そう言って、タタタッと小走りでクローゼットに向かう。

 中から丁寧に畳んで保管されていた空色のベストを、宝物でも扱うように取り出した。


「……ほんとにやる気だな……」


 ラドリーは思わず苦笑して、仕方ないと大きく伸びをした。

 肩から背中までを伸ばして、こきこきと音を鳴らすと、心なしか眠気も吹き飛んだ。


 今日も——きっと、にぎやかな一日になる。

 この猫型の警備員がいる限り、退屈する暇はなさそうだ。


「……じゃあ俺は、たい焼き係ってことでいいか」


「うんっ! 警備には補給が不可欠だからね!」


「食いしん坊なだけだろ……」


「えへへー♪」


 笑い声が朝の部屋に軽やかに広がった。

 窓の外では、鳥たちが朝の歌を歌い始めている。

 ソラの今日の「たい焼きパトロール」が、始まろうとしていた。

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