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猫、猫、猫!──機械の猫に心を与えるのは罪ですか?  作者: 綾白
第6章 ソラvsたい焼きモンスター

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第22話 ソラのたい焼きモンスター

「——できたぁっ!!」


 ソラは得意げな顔で、チラシの裏紙をラドリーに向けて突き出した。


「ラドリー、見て見て! すごいの描けたんだよっ!」


 そこに描かれていたのは——羽根をバッサバサに広げた、謎にメカメカしい巨大たい焼きのイラスト。

 目はつぶらで丸く、体表にはウロコのような模様。

 そして、機械仕掛けのようなパーツがちらほらと見える。


「これがボクの考えた、たい焼きモンスター! 飛べるんだよ、ほら羽根があるから! あんこをバーナーでじゅーって温めながら接近してくるの! めちゃくちゃ熱いし甘いの! しかもここ、甘味反応センサーがついてるのっ!」


「……ほう……」


 ラドリーはソファに腰掛けたままチラッと絵を一瞥したあと、湯気の立つマグを傾けた。

 微妙に反応が薄い。


「ねぇねぇ、どう? 迫力ある? ここのメカ部分とか、背びれからは湯気がしゅーって出るの! あんこスチームなの! あとここ! “うまみフィルター”って書いてあるでしょ?」


「うまみフィルター……?」


 ラドリーはようやく真面目に絵に目を落とし、眉をひそめた。


「……腹にあるこれか。“うまみ成分が足りません”って吹き出しついてるけど……」


「そこはねっ、味を分析する最重要ポイントなの! “うまみ成分が足りません”って言われたら、こっちがやばいから全力で逃げるしかないの!」


「こっちが逃げんのかよ……」


「即逃げだよ! だって、熱いし怖いし……あと、羽根あるから速いし」


 ソラはそう言いつつ、へにゃりと耳を寝かせた。


「でもさ、ボクは信じてるよ。ラドリーがいれば、きっと平気!」


「……お前、すぐそういうこと言うな」


「だってほら、ボクがたい焼きダンクでおもてなしするでしょ? そのあと、ラドリーがビシッと『帰れ』って睨むの!」


 ソラは言いながら、耳をぴっと尖らせた。


「そしたらモンスターは震えあがって、目からあんこをこぼしながら飛んで帰るんだよ!」


「……見た目のわりに、豆腐メンタルだな」


「ふふ、見かけ倒しってやつ?」


 ラドリーはくすっと笑って、マグを口元に運びながらふとソラに視線を向けた。

 すると——


「……お前、あんこ一粒ついてるぞ」


「え!? どこ? ほっぺ?」


 ラドリーは、指でそっとソラの頬を拭った。


「ほら、取れた」


「……えへへ、ありがと。なんか拭ってもらうの……ちょっと、ふわってするね」


「……別に、気にすんな」


 ラドリーはそっぽを向いてマグを啜る。


「……お前、誰にでもそうやって懐くなよ」


「え? なんで?」


「お前が変なやつに気に入られて、どっかに連れてかれたら面倒だ」


「でも、ラドリーがいれば、連れ去られても帰ってこられるよ」


「連れ去られないようにしろ」


「大丈夫だよ! だってラドリー、ボクのたい焼き係でしょ?」


「……係、なのか?」


「係だよ! たい焼き調達と、おやつ管理と、あと非常時の睨み担当!」


 ソラはにこっと笑った。

 どこか幼さの残る笑顔。

 けれど、安心感を抱かせるような強さもある。


「だからボク、ここにいるんだよ」


 ラドリーは何も言わずに視線を落とし、ゆっくりとマグをひと口。

 その向こうでは、ソラが再びチラシの裏にペンを走らせはじめていた。


「よーし、次はたこ焼きモンスター描く! 絶対つまようじ持ってると思うんだよね、武器として!」


「いや、モンスターなのに武装が弱すぎるだろ……」


 外は静かな夜。

 たい焼きモンスターが現れそうで現れない、ちょっとだけ不思議な時間。


 ふたりは、甘いあんこの味とテーブルの上のイラストを囲んで——

 なんでもない、けれど温かいひとときを過ごしていた。

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