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猫、猫、猫!──機械の猫に心を与えるのは罪ですか?  作者: 綾白
第2章 満たすもの

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第11話 鋼の残響

 ソラが垂れ下がった配線とダクトの隙間を擦り抜け、狙い通りに移動する。

 敵の一体がそれに気づき、動きを変えた——その瞬間、ラドリーはあらかじめ設置していた反射板に光を当てた。


 閃光がサメシャークの視界をかすめ、動きが一瞬止まる。


 その隙にソラが上から飛び出して囮となる。

 ラドリーの三発目が放たれ、三体目も崩れ落ちた。


 残る一体は仲間の死を見て即座に態勢を立て直す。

 だが、その動きすらもすでに読まれていた。


 最後の一撃が鋼鉄の動力中枢を正確に貫く。


 残響だけが、工場にこだましていた——


 静寂が戻る。


 工場の奥には、倒れたモンスターたちの残骸。

 油がにじむ金属の塊。

 ラドリーは最後の死骸に近づき、足先で軽く蹴って反応を確かめた。


 ……動かない。


「……終わったな」


 通信端末を起動し、討伐完了と座標データを送信する。

 報酬は後日、街の警備局経由で支払われるはずだ。


 その間、ソラはモンスターの残骸の周囲を回り、あちこちの部品を興味深そうに覗き込んでいた。


 緊張が解けると、じわりと体の奥から疲れが広がる。

 だが、それは悪くなかった。


 久しぶりの実戦——しかし今回は、いつもとは違っていた。

 隣に誰かがいるだけで、背中の重さがまるで違う。


 ラドリーが立ち上がると、ソラも自然と隣に並んだ。

 工場の出口へ向かう途中、ソラがぽつりと呟く。


「さっきのシャーク……ボクと違って、空っぽじゃなかったね」


「ん?」


「怒ってた。ちゃんと何かが詰まってる顔だった。ボクの中はまだ、空のまんま」


 その言葉は、錆びついた工場の空気に溶けるように響いた。

 ラドリーは歩きながら、一瞬だけ空を見上げた。


「空だから、違うんだろうな」


「え?」


「怒りとか、破壊したい気持ちとか、そういうのが詰まってると、あいつらみたいになる。お前が空っぽで良かったよ」


 ソラはしばらく黙っていたが、やがてふっと笑い、うんと頷いた。


「じゃあラドリーと、冒険と、甘いお菓子と、あったかい気持ちだけでいっぱいにするね」


「……それでいい」


 廃工場を出る頃には、空はゆっくりと金色に染まり始めていた。

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